【2026年最新】
介護施設の人材不足を解決する
7つの実践策
採用率14.3%、不足感65.2%――いま現場で何が起きているのか。令和6年度介護労働実態調査を起点に、採用7策・定着5策・補助金活用・規模別成功事例まで、施設長が今日から動ける順で整理する実務ガイド。

012026年介護人材不足の実態
介護業界の人材不足は、2026年現在、かつてないほど深刻な水準にあります。まず最新の客観データから、現在地を確認します。
令和6年度調査が示す現実
採用率は3年ぶりに低下し、離職率は過去最低を更新したものの、増減率はわずか1.9%。「辞める人は減っているが、入ってくる人はそれ以上に減っている」という構造です。
2026年〜2040年の需給ギャップ
| 年度 | 必要数に対する不足見込み |
|---|---|
| 2026年度 | 約25万人不足 |
| 2040年度 | 約57万人不足 |
出典:厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護人材の必要数について」
02なぜ採用できない?なぜ辞める?
解決策を打つ前に、現場で起きている「離職の構造」と「不満の構造」を正確に把握します。
直前の介護関係の仕事を辞めた理由(上位3項目)
出典:介護労働安定センター 令和6年度 介護労働実態調査(労働者調査・複数回答)
注目すべきは1位の人間関係のうち、約半数(49.1%)が「上司の指導がきつい・パワハラ」を原因として挙げている点です。賃金よりも先に、マネジメントの質が問われています。
職員が抱える不満トップ3
| 順位 | 不満の内容 | 回答率 |
|---|---|---|
| 1 | 人手が足りない | 49.1% |
| 2 | 仕事内容のわりに賃金が低い | 35.3% |
| 3 | 身体的負担が大きい | 24.6% |
職員が「現在の法人に就職した理由」
- —通勤に便利だから:51.9%
- —自分のやりたい介護ができそうだったため:33.6%
- —職場の人間関係がよさそうだったため(同調査・上位)
参考:「現在の職場で働き続けることに役立っている取組」では、「人間関係が良好な職場づくり」47.2%、「有給休暇等の取得や勤務日時の柔軟化」43.2% が上位(同調査)。
03採用力を高める7つの実践施策
ここからは、調査で「効果あり」と回答された割合が高い施策を中心に、実務に落とし込んだアクションを紹介します。
採用に取り組む事業所のうち、「賃金水準の向上」に「効果があった」と回答した割合が36.0%で、全採用方策の中で最も高い(同調査)。
- ・処遇改善加算を最大限活用し、基本給または手当を増額
- ・入職時一時金(例:10万円)の支給
- ・資格手当・夜勤手当の増額
- ・定期昇給制度の明示(年1回・〇円昇給)
65.6%の事業所が職員紹介を実施、うち46%が「効果的」と回答。
- ・紹介1名につき報奨金5〜10万円を支給
- ・入職後6ヶ月継続勤務を支給条件に
- ・紹介制度を職員全体に文書で周知
66.9%の事業所が活用。無料で利用でき、地元の求職者と直接接点が持てる。
- ・月1回、担当者と定期面談
- ・求人票に施設の写真・動画を掲載
- ・「通勤便利」「休暇取得率〇%」など具体的な魅力を明記
- ・福祉人材センターの就職フェアに参加
有料紹介41.5%、求人サイト36.6%が活用。費用はかかるがスピード採用が可能。
- ・複数の紹介会社・求人サイトを比較
- ・成功報酬型(採用時のみ支払い)を選択
- ・毎月、採用単価(支払総額÷採用人数)を算出

- ・Instagram・Facebook・YouTubeで日常の様子を発信
- ・職員インタビュー動画を掲載
- ・ホームページの求人ページを充実(写真・動画・先輩の声)
- ・「#介護求人」「#〇〇市介護」などハッシュタグ活用
求職者が重視する条件(通勤・休暇・人間関係・やりがい)にピンポイントで応える。
- ・通勤の便:「駅から徒歩5分」「駐車場無料」
- ・やりがい:ご利用者様の笑顔が見られる具体的エピソード
- ・人間関係:「月1回職員親睦会」「1on1面談実施」
- ・休暇:「有給取得率75%」「希望シフト制」
- ・無資格・未経験OKの求人を出す
- ・シニア層(60代〜)をメインターゲットに
- ・短時間勤務・週2〜3日勤務の選択肢を用意
- ・業務範囲を配膳・清掃・送迎補助等に限定
04定着率を上げる5つの実践施策
採用できても、すぐに辞められては意味がありません。離職理由の構造に正面から応える5つの施策です。
離職理由の第1位が「人間関係」。ここに最優先で取り組む。
- ・ハラスメント研修を年2回実施(全職員対象)
- ・匿名アンケートで職場の課題を把握
- ・月1回、管理者と職員の1on1面談
- ・外部相談窓口の設置
74.7%の事業所が「休暇取得・勤務シフト柔軟化」に取り組んでいる。
- ・年間有給取得計画を職員ごとに作成
- ・希望シフト制(月1回希望提出)
- ・時短・短時間勤務の選択肢を整備
- ・子育て・介護との両立支援
ケア記録ソフトを「日常的に利用」する事業所は75.4%。ICT・介護ロボットの導入効果として「昼間の業務負担の軽減」49.4%、「夜間の業務負担の軽減」44.6%の事業所が「効果あり」と回答(同調査)。
- ・タブレット記録システム導入(記録時間30%削減事例あり)
- ・見守りセンサー等の介護ロボット導入
- ・介護助手の活用
- ・業務の棚卸しと役割分担の見直し

「賃金が低い」という不満は35.3%。一度の改善で終わらせない。
- ・定期昇給制度の明示(年1回・〇円昇給)
- ・賞与の安定支給(年2回・計〇ヶ月分)
- ・資格取得支援(受験費用・研修費用の補助)
- ・キャリアパスの明示(主任→リーダー→施設長)
入職後3ヶ月以内の離職を防ぐ、最も投資対効果の高い施策。
- ・プリセプター制度(先輩職員が1対1で指導)
- ・入職後1週間・1ヶ月・3ヶ月の定期面談
- ・段階的な研修プログラム(OJT+OFF-JT)
- ・「分からないことは何でも聞いて」が言える雰囲気づくり
5施策の比較
| 施策 | 効果度 | コスト | 実施難易度 |
|---|---|---|---|
| ①人間関係の改善 | ★★★★★ | 低 | 高 |
| ②有給・シフトの柔軟化 | ★★★★ | 低 | 中 |
| ③業務負担の軽減(ICT) | ★★★★ | 中〜高 | 中 |
| ④賃金・処遇の継続改善 | ★★★★ | 高 | 中 |
| ⑤新人フォロー体制 | ★★★★★ | 低 | 低 |
05補助金・支援制度の活用法
人材確保・定着の取り組みには、国と自治体の補助金を組み合わせて活用できます。代表的な4制度を整理します。
① 介護人材確保・職場環境改善等事業(都道府県実施)
処遇改善加算(Ⅰ〜Ⅳ)を算定している事業所で、業務の見える化・業務改善体制構築・役割分担の明確化のいずれかを実施している施設が対象。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助対象経費 | 人件費(一時金・手当)/介護助手等の募集費用/研修費用/専門家謝金・会議費 等 |
| 補助額の目安 | 常勤職員1人あたり 約54,000円相当(施設に一括交付。職員均等配分は不要) |
| 申請方法 | 都道府県の担当窓口に計画書を提出(処遇改善加算の指定権者と異なる場合があるため要確認) |
申請から受給までの流れ
- ①要件確認30分
- ②計画書作成2時間
- ③都道府県へ提出1日
- ④承認1〜2ヶ月
- ⑤取組実施通年
- ⑥実績報告1日
- ⑦補助金受給—
② ICT導入支援事業
介護ソフト・タブレット・Wi-Fi環境などの導入費用を補助。補助率 最大75%(補助上限は事業所規模により異なる)。
③ 介護ロボット導入支援事業
見守りセンサー・移乗支援機器などの導入費用を補助。1機器あたり上限額あり(自治体により異なる)。
④ 外国人介護人材受入れ支援
外国人技能実習生・特定技能人材の受入れに関する支援。日本語学習費用、住居費用、生活支援費用などが対象。
06規模別・成功事例モデル
同じ「人材不足」でも、施設規模によって最適な打ち手は異なります。3つの典型ケースを紹介します。
応募が全くない/採用してもすぐ辞める
- ・紹介制度(報奨金1名5万円)
- ・ハローワーク担当と月1回面談
- ・求人票に通勤・有給取得率を明記
- ・入職時一時金10万円
- ・6ヶ月で2名採用成功
- ・1年経過時点で離職ゼロ
- ・補助金5.4万円/人を一時金に充当
採用はできるが離職率が高い(年間30%)
- ・タブレット記録導入(記録30%削減)
- ・介護助手2名採用(配膳・清掃)
- ・プリセプター制度導入
- ・月1回1on1面談/有給計画
- ・採用5名成功
- ・離職率 30% → 10%
- ・有給取得率 50% → 75%
- ・職員満足度「働きやすくなった」90%
夜勤者が慢性的に不足、採用が追いつかない
- ・夜勤専従募集(時給2,000円・月8回)
- ・プリセプター制度の全面導入
- ・見守りセンサー全室導入
- ・キャリアパスの明示
- ・Instagramで日常発信
- ・夜勤専従5名+日勤10名 採用
- ・1年以内離職率 30% → 15%
- ・地域で「働きやすい職場」と評判に
- ・Instagramフォロワー1,000人突破
07今すぐ実行すべきアクションリスト
最後に、施設長・経営者が着手すべきアクションを優先度別に整理します。「明日からやる」レベルまで分解しています。
● 今月中に実施(最優先)
| アクション | 所要時間 | 担当 |
|---|---|---|
| 自施設の採用・離職データを把握 | 30分 | 管理者 |
| 現在の求人票を見直し | 1時間 | 管理者 |
| 職員紹介制度の導入決定 | 1時間 | 経営者 |
| 補助金の申請期限確認 | 30分 | 事務担当 |
| ハローワーク担当者と面談予約 | 10分 | 事務担当 |
● 3ヶ月以内に実施(重要)
| アクション | 所要時間 | 担当 |
|---|---|---|
| プリセプター制度の構築 | 3時間 | 管理者 |
| 有給取得計画の作成 | 2時間 | 管理者 |
| 業務の棚卸しと役割分担見直し | 5時間 | 管理者+職員代表 |
| ICT導入の検討・見積取得 | 3時間 | 管理者+事務担当 |
| SNSアカウント開設・投稿開始 | 2時間 | 広報担当 |
● 継続的に実施(習慣化)
| アクション | 頻度 | 担当 |
|---|---|---|
| 職員との1on1面談 | 月1回 | 管理者 |
| 職員満足度アンケート | 年2回 | 管理者 |
| 採用・離職状況のモニタリング | 月1回 | 事務担当 |
| 職員レクリエーション | 四半期1回 | レク担当 |
| 賃金水準の見直し | 年1回 | 経営者 |
08参考資料・問い合わせ先
主要参考資料
- —介護労働安定センター「令和6年度 介護労働実態調査」
https://www.kaigo-center.or.jp/content/files/report/R6_jittai_chousa_press.pdf - —厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護人材の必要数について」
https://www.mhlw.go.jp/content/12000000/001592637.pdf - —厚生労働省「介護人材確保対策」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_02977.html - —介護労働安定センター 公式サイト
https://www.kaigo-center.or.jp/