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    経営・採用 2026.05.15 約16分で読了

    【2026年最新】
    介護施設の人材不足を解決する
    7つの実践策

    採用率14.3%、不足感65.2%――いま現場で何が起きているのか。令和6年度介護労働実態調査を起点に、採用7策・定着5策・補助金活用・規模別成功事例まで、施設長が今日から動ける順で整理する実務ガイド。

    採用掲示板を見つめる施設長
    深瀬久博
    執筆・監修
    深瀬 久博 / 情熱介護 編集長
    介護福祉士・社会福祉士・認知症ケア専門士・産業ケアマネ(3級)・ストレスチェック実施者

    012026年介護人材不足の実態

    介護業界の人材不足は、2026年現在、かつてないほど深刻な水準にあります。まず最新の客観データから、現在地を確認します。

    令和6年度調査が示す現実

    65.2%
    全体の不足感
    前年度 64.7%
    83.4%
    訪問介護員の不足感
    うち大いに不足 58.1%
    14.3%
    採用率
    前年度比 −2.6pt
    12.4%
    離職率
    過去最低水準

    採用率は3年ぶりに低下し、離職率は過去最低を更新したものの、増減率はわずか1.9%。「辞める人は減っているが、入ってくる人はそれ以上に減っている」という構造です。

    2026年〜2040年の需給ギャップ

    年度必要数に対する不足見込み
    2026年度約25万人不足
    2040年度約57万人不足

    出典:厚生労働省「第9期介護保険事業計画に基づく介護人材の必要数について」

    02なぜ採用できない?なぜ辞める?

    解決策を打つ前に、現場で起きている「離職の構造」と「不満の構造」を正確に把握します。

    直前の介護関係の仕事を辞めた理由(上位3項目)

    職場の人間関係に問題があったため24.7%
    他に良い仕事・職場があったため18.5%
    勤務先の事業理念や運営のあり方に不満があったため17.6%

    出典:介護労働安定センター 令和6年度 介護労働実態調査(労働者調査・複数回答)

    注目すべきは1位の人間関係のうち、約半数(49.1%)が「上司の指導がきつい・パワハラ」を原因として挙げている点です。賃金よりも先に、マネジメントの質が問われています。

    職員が抱える不満トップ3

    順位不満の内容回答率
    1人手が足りない49.1%
    2仕事内容のわりに賃金が低い35.3%
    3身体的負担が大きい24.6%

    職員が「現在の法人に就職した理由」

    • 通勤に便利だから:51.9%
    • 自分のやりたい介護ができそうだったため:33.6%
    • 職場の人間関係がよさそうだったため(同調査・上位)

    参考:「現在の職場で働き続けることに役立っている取組」では、「人間関係が良好な職場づくり」47.2%、「有給休暇等の取得や勤務日時の柔軟化」43.2% が上位(同調査)。

    03採用力を高める7つの実践施策

    ここからは、調査で「効果あり」と回答された割合が高い施策を中心に、実務に落とし込んだアクションを紹介します。

    施策 01賃金向上(最も効果的)

    採用に取り組む事業所のうち、「賃金水準の向上」に「効果があった」と回答した割合が36.0%で、全採用方策の中で最も高い(同調査)。

    具体的アクション
    • 処遇改善加算を最大限活用し、基本給または手当を増額
    • 入職時一時金(例:10万円)の支給
    • 資格手当・夜勤手当の増額
    • 定期昇給制度の明示(年1回・〇円昇給)
    事例:ある中規模デイサービスでは、処遇改善加算を活用して月額3万円相当の賃上げを実施。求人応募数が前年比3倍に増加。
    施策 02職員紹介制度(リファラル採用)の導入

    65.6%の事業所が職員紹介を実施、うち46%が「効果的」と回答。

    具体的アクション
    • 紹介1名につき報奨金5〜10万円を支給
    • 入職後6ヶ月継続勤務を支給条件に
    • 紹介制度を職員全体に文書で周知
    事例:前提として、職員自身が「この職場を友人に勧めたい」と思える環境であること。定着策と一体で運用するのが鉄則。
    施策 03ハローワーク・福祉人材センターの活用

    66.9%の事業所が活用。無料で利用でき、地元の求職者と直接接点が持てる。

    具体的アクション
    • 月1回、担当者と定期面談
    • 求人票に施設の写真・動画を掲載
    • 「通勤便利」「休暇取得率〇%」など具体的な魅力を明記
    • 福祉人材センターの就職フェアに参加
    施策 04有料職業紹介・求人サイトの活用

    有料紹介41.5%、求人サイト36.6%が活用。費用はかかるがスピード採用が可能。

    具体的アクション
    • 複数の紹介会社・求人サイトを比較
    • 成功報酬型(採用時のみ支払い)を選択
    • 毎月、採用単価(支払総額÷採用人数)を算出
    施設長と若手職員の1on1面談
    採用も定着も、最終的には人と人の対話の質に収束する。
    施策 05SNS・ホームページでの情報発信
    具体的アクション
    • Instagram・Facebook・YouTubeで日常の様子を発信
    • 職員インタビュー動画を掲載
    • ホームページの求人ページを充実(写真・動画・先輩の声)
    • 「#介護求人」「#〇〇市介護」などハッシュタグ活用
    事例:ある小規模特養では、Instagramで日常を発信し続けた結果、20代の応募が前年比2倍に。
    施策 06面接での訴求ポイントを明確化

    求職者が重視する条件(通勤・休暇・人間関係・やりがい)にピンポイントで応える。

    具体的アクション
    • 通勤の便:「駅から徒歩5分」「駐車場無料」
    • やりがい:ご利用者様の笑顔が見られる具体的エピソード
    • 人間関係:「月1回職員親睦会」「1on1面談実施」
    • 休暇:「有給取得率75%」「希望シフト制」
    施策 07介護助手・無資格者の採用
    具体的アクション
    • 無資格・未経験OKの求人を出す
    • シニア層(60代〜)をメインターゲットに
    • 短時間勤務・週2〜3日勤務の選択肢を用意
    • 業務範囲を配膳・清掃・送迎補助等に限定
    事例:介護職が専門業務に集中でき、結果として既存職員の負担軽減と定着率向上にも寄与する。

    04定着率を上げる5つの実践施策

    採用できても、すぐに辞められては意味がありません。離職理由の構造に正面から応える5つの施策です。

    施策 01人間関係の改善(最重要)

    離職理由の第1位が「人間関係」。ここに最優先で取り組む。

    具体的アクション
    • ハラスメント研修を年2回実施(全職員対象)
    • 匿名アンケートで職場の課題を把握
    • 月1回、管理者と職員の1on1面談
    • 外部相談窓口の設置
    施策 02有給休暇・シフトの柔軟化

    74.7%の事業所が「休暇取得・勤務シフト柔軟化」に取り組んでいる。

    具体的アクション
    • 年間有給取得計画を職員ごとに作成
    • 希望シフト制(月1回希望提出)
    • 時短・短時間勤務の選択肢を整備
    • 子育て・介護との両立支援
    施策 03業務負担の軽減

    ケア記録ソフトを「日常的に利用」する事業所は75.4%。ICT・介護ロボットの導入効果として「昼間の業務負担の軽減」49.4%、「夜間の業務負担の軽減」44.6%の事業所が「効果あり」と回答(同調査)。

    具体的アクション
    • タブレット記録システム導入(記録時間30%削減事例あり)
    • 見守りセンサー等の介護ロボット導入
    • 介護助手の活用
    • 業務の棚卸しと役割分担の見直し
    タブレットで記録する介護職員と見守りセンサー
    ICT・介護ロボットの導入は、夜勤負担と記録業務という二大ボトルネックに直接効く。
    施策 04賃金・処遇の継続的改善

    「賃金が低い」という不満は35.3%。一度の改善で終わらせない。

    具体的アクション
    • 定期昇給制度の明示(年1回・〇円昇給)
    • 賞与の安定支給(年2回・計〇ヶ月分)
    • 資格取得支援(受験費用・研修費用の補助)
    • キャリアパスの明示(主任→リーダー→施設長)
    施策 05新人職員のフォロー体制

    入職後3ヶ月以内の離職を防ぐ、最も投資対効果の高い施策。

    具体的アクション
    • プリセプター制度(先輩職員が1対1で指導)
    • 入職後1週間・1ヶ月・3ヶ月の定期面談
    • 段階的な研修プログラム(OJT+OFF-JT)
    • 「分からないことは何でも聞いて」が言える雰囲気づくり

    5施策の比較

    施策効果度コスト実施難易度
    ①人間関係の改善★★★★★
    ②有給・シフトの柔軟化★★★★
    ③業務負担の軽減(ICT)★★★★中〜高
    ④賃金・処遇の継続改善★★★★
    ⑤新人フォロー体制★★★★★

    05補助金・支援制度の活用法

    人材確保・定着の取り組みには、国と自治体の補助金を組み合わせて活用できます。代表的な4制度を整理します。

    ① 介護人材確保・職場環境改善等事業(都道府県実施)

    処遇改善加算(Ⅰ〜Ⅳ)を算定している事業所で、業務の見える化・業務改善体制構築・役割分担の明確化のいずれかを実施している施設が対象。

    項目内容
    補助対象経費人件費(一時金・手当)/介護助手等の募集費用/研修費用/専門家謝金・会議費 等
    補助額の目安常勤職員1人あたり 約54,000円相当(施設に一括交付。職員均等配分は不要)
    申請方法都道府県の担当窓口に計画書を提出(処遇改善加算の指定権者と異なる場合があるため要確認)

    申請から受給までの流れ

    1. 要件確認
      30分
    2. 計画書作成
      2時間
    3. 都道府県へ提出
      1日
    4. 承認
      1〜2ヶ月
    5. 取組実施
      通年
    6. 実績報告
      1日
    7. 補助金受給

    ② ICT導入支援事業

    介護ソフト・タブレット・Wi-Fi環境などの導入費用を補助。補助率 最大75%(補助上限は事業所規模により異なる)。

    ③ 介護ロボット導入支援事業

    見守りセンサー・移乗支援機器などの導入費用を補助。1機器あたり上限額あり(自治体により異なる)。

    ④ 外国人介護人材受入れ支援

    外国人技能実習生・特定技能人材の受入れに関する支援。日本語学習費用、住居費用、生活支援費用などが対象。

    06規模別・成功事例モデル

    同じ「人材不足」でも、施設規模によって最適な打ち手は異なります。3つの典型ケースを紹介します。

    CASE 01 / 小規模
    訪問介護事業所(常勤換算10名)
    課題

    応募が全くない/採用してもすぐ辞める

    実施施策
    • ・紹介制度(報奨金1名5万円)
    • ・ハローワーク担当と月1回面談
    • ・求人票に通勤・有給取得率を明記
    • ・入職時一時金10万円
    結果
    • ・6ヶ月で2名採用成功
    • ・1年経過時点で離職ゼロ
    • ・補助金5.4万円/人を一時金に充当
    CASE 02 / 中規模
    通所介護(デイサービス、常勤換算30名)
    課題

    採用はできるが離職率が高い(年間30%)

    実施施策
    • ・タブレット記録導入(記録30%削減)
    • ・介護助手2名採用(配膳・清掃)
    • ・プリセプター制度導入
    • ・月1回1on1面談/有給計画
    結果
    • ・採用5名成功
    • ・離職率 30% → 10%
    • ・有給取得率 50% → 75%
    • ・職員満足度「働きやすくなった」90%
    CASE 03 / 大規模
    特別養護老人ホーム(常勤換算100名)
    課題

    夜勤者が慢性的に不足、採用が追いつかない

    実施施策
    • ・夜勤専従募集(時給2,000円・月8回)
    • ・プリセプター制度の全面導入
    • ・見守りセンサー全室導入
    • ・キャリアパスの明示
    • ・Instagramで日常発信
    結果
    • ・夜勤専従5名+日勤10名 採用
    • ・1年以内離職率 30% → 15%
    • ・地域で「働きやすい職場」と評判に
    • ・Instagramフォロワー1,000人突破

    07今すぐ実行すべきアクションリスト

    最後に、施設長・経営者が着手すべきアクションを優先度別に整理します。「明日からやる」レベルまで分解しています。

    ● 今月中に実施(最優先)

    アクション所要時間担当
    自施設の採用・離職データを把握30分管理者
    現在の求人票を見直し1時間管理者
    職員紹介制度の導入決定1時間経営者
    補助金の申請期限確認30分事務担当
    ハローワーク担当者と面談予約10分事務担当

    ● 3ヶ月以内に実施(重要)

    アクション所要時間担当
    プリセプター制度の構築3時間管理者
    有給取得計画の作成2時間管理者
    業務の棚卸しと役割分担見直し5時間管理者+職員代表
    ICT導入の検討・見積取得3時間管理者+事務担当
    SNSアカウント開設・投稿開始2時間広報担当

    ● 継続的に実施(習慣化)

    アクション頻度担当
    職員との1on1面談月1回管理者
    職員満足度アンケート年2回管理者
    採用・離職状況のモニタリング月1回事務担当
    職員レクリエーション四半期1回レク担当
    賃金水準の見直し年1回経営者

    08参考資料・問い合わせ先

    主要参考資料

    最終更新:2026年5月15日 / 情熱介護編集部