【令和7年度版】
介護職員等処遇改善加算
完全活用ガイド
旧3加算が一本化された「介護職員等処遇改善加算」。令和7年度末の経過措置終了を控え、新加算Ⅰ〜Ⅳの算定要件・補助金・職場環境等要件まで、一次資料に準拠して経営者目線で整理する実務ガイド。

00序章:なぜ「令和7年度」が分岐点なのか
令和6年度介護報酬改定で、それまで併存していた3つの加算 ―「介護職員処遇改善加算」「介護職員等特定処遇改善加算」「介護職員等ベースアップ等支援加算」― が一本化され、新たに「介護職員等処遇改善加算」(以下、新加算)が創設されました。
この一本化に際しては、令和6年度中(〜令和7年3月)に旧3加算の算定状況に応じた経過措置区分(新加算Ⅴ)が用意され、令和7年度に入った現在は、各事業所が新加算Ⅰ〜Ⅳの算定要件をどこまで満たせるかを検証し、上位区分への移行準備を進める段階にあります。
さらに、令和7年度には別建てで「介護人材確保・職場環境改善等事業」(補助金)が措置され、加算と組み合わせて活用できるよう設計されています。本記事では、新加算と補助金、職場環境等要件、介護テクノロジー導入支援事業を一気通貫で整理し、令和8年度以降の本格運用に向けた実務対応を解説します。
出典:厚生労働省老健局長通知「介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和7年度分)」(令和7年2月7日 老発0207第5号)
01新加算Ⅰ〜Ⅳの算定要件を正しく理解する
新加算は上位から順にⅠ・Ⅱ・Ⅲ・Ⅳの4区分(および経過措置のⅤ)で構成され、上位区分ほど加算率が高く、要件も多くなります。区分ごとに必要となる要件を整理します。
4つの要件カテゴリ
| 要件カテゴリ | 概要 |
|---|---|
| 月額賃金改善要件 | 新加算Ⅳ相当の2/3以上を月額賃金(基本給または毎月支払う手当)の改善に充てる。Ⅰ・Ⅱは旧ベースアップ加算相当の2/3以上の新規月額賃金改善も必要。 |
| キャリアパス要件 | Ⅰ:任用要件・賃金体系の整備/Ⅱ:研修の実施/Ⅲ:昇給の仕組み/Ⅳ:改善後の賃金要件/Ⅴ:介護福祉士等の配置 ― 区分に応じて段階的に充足。 |
| 職場環境等要件 | 区分ごとに「区分1以上・全体7以上」または「区分2以上・全体13以上」の取組実施+HP掲載等を通じた見える化。 |
| 生産性向上関連 | 上位区分では介護テクノロジー導入や業務改善活動など、生産性向上に資する取組実績が要件化。 |
旧3加算の算定状況に応じた早見表(訪問介護の例)
既に旧3加算を算定していた事業所は、その組み合わせに応じて移行先の新加算区分が示されています。代表的なパターンを抜粋します。
| 旧3加算の状況 | 経過措置(新加算Ⅴ) | 移行先 | 移行後 加算率 |
|---|---|---|---|
| 処遇改善Ⅰ+特定処遇Ⅰ+ベア加算 算定 | ー(移行不要) | 新加算Ⅰ | 24.5% |
| 処遇改善Ⅰ+特定処遇Ⅰ+ベア加算なし | 新加算Ⅴ⑴ 22.1% | 新加算Ⅰ | 24.5% |
| 処遇改善Ⅰ+特定処遇Ⅱ+ベア加算 算定 | ー | 新加算Ⅱ | 22.4% |
| 処遇改善Ⅰのみ算定 | 新加算Ⅴ⑺ | 新加算Ⅲ | 18.2% |
| 旧3加算いずれも未算定 | ー | 新加算Ⅳ | 14.5% |
※加算率は訪問介護の例。サービス種別により率は異なる。出典:厚生労働省「旧3加算の算定状況に応じた新加算Ⅰ〜Ⅳの算定要件(早見表)」

算定対象サービスと「対象外」の確認
新加算は介護報酬上の「処遇改善加算」であり、すべての介護保険サービスが対象になるわけではありません。次のサービスは加算の算定対象外であることに注意が必要です。
- 居宅介護支援(ケアマネジャー事業所)
- 介護予防支援
- 訪問看護・介護予防訪問看護
- 訪問リハビリテーション・介護予防訪問リハビリテーション
- 福祉用具貸与・特定福祉用具販売 など
出典:厚生労働省老健局長通知(令和7年2月7日 老発0207第5号)別紙記載のサービス区分
02令和7年度の経過措置と弾力化措置
令和7年度は、新加算への完全移行に向けた最終調整期間という位置づけです。要件充足の準備が整わない事業所への配慮として、経過措置と弾力化措置が用意されています。
経過措置区分(新加算Ⅴ)
旧3加算をすでに算定していた事業所が、新加算Ⅰ〜Ⅳの要件をすぐに満たせない場合に、当面の間は経過措置区分(新加算Ⅴ⑴〜⒁)を算定できる仕組みです。これは令和6年度中の旧加算の算定実績に基づき自動的に算定可能区分が決まる構造で、令和7年度末(令和8年3月31日)までが原則的な期限です。
取得要件の弾力化
令和7年度は、新加算Ⅰ・Ⅱの上位区分について、特に小規模事業所が取得しやすくなるよう、いくつかの要件が弾力化されています。
- キャリアパス要件Ⅳ(改善後賃金440万円以上の介護福祉士の配置):440万円以上の賃上げが困難である場合は免除規定あり。
- キャリアパス要件Ⅴ(介護福祉士等の配置等):申請時点で未対応でも一定期間内の対応計画提出で算定可。
- 職場環境等要件の見える化:HPや掲示等での公表方法に複数の選択肢。
出典:厚生労働省「処遇改善加算がさらに取得しやすくなります! ― 令和7年度の処遇改善加算を取得しましょう!」(令和7年度リーフレット)
03職場環境等要件 ― 6区分の実務対応
職場環境等要件は、新加算の全区分で必須となる要件です。次の6つの区分から、区分ごとの最低取組数と全体の最低取組数を満たす必要があります。
職場環境等要件の6区分
| 区分番号 | 区分名 | 取組例 |
|---|---|---|
| 1 | 入職促進に向けた取組 | 地域・学校イベントへの参加、職場体験受入、人事評価制度の整備 |
| 2 | 資質の向上やキャリアアップに向けた支援 | 管理者・職員間の定期面談、研修受講機会の確保、資格取得支援 |
| 3 | 両立支援・多様な働き方の推進 | 業務時間調査による役割分担の明確化、短時間勤務制度、育児・介護休業制度 |
| 4 | 腰痛を含む心身の健康管理 | スライディングシート等の腰痛予防器具導入、健康診断の充実、メンタルヘルス相談 |
| 5 | 生産性向上のための業務改善の取組 | ICT・介護ロボット導入、タブレット記録、5S活動、業務手順の標準化 |
| 6 | やりがい・働きがいの醸成 | 理念の共有、職員表彰制度、利用者・家族からのフィードバック共有 |
区分別の必要取組数
| 新加算区分 | 区分ごと最低取組数 | 全体最低取組数 | 見える化要件 |
|---|---|---|---|
| Ⅰ・Ⅱ | 各区分2項目以上 | 全体13項目以上 | HP掲載等 |
| Ⅲ・Ⅳ | 各区分1項目以上 | 全体7項目以上 | HP掲載等 |
出典:厚生労働省「介護職員等処遇改善加算 職場環境等要件 ― まずはこんな取組から!」リーフレット
実際の取組例(リーフレット掲載例より)
職員の声を吸い上げる機会が日常業務に埋もれ、退職の予兆を察知できない。
- ・管理者と職員が年に数回の個別面談を実施
- ・働き方や研修希望をヒアリングし、短時間でも記録に残す
- ・次回面談で前回の話題のフォローアップを行う
職員一人ひとりの状況把握により、早期離職リスクの把握と適切なキャリア支援が可能に。
記録・送迎・準備など介護以外の業務が介護職員に集中し、専門業務への時間が圧迫されている。
- ・1〜2週間の業務時間調査を実施
- ・介護助手・事務職へ移管できる業務を抽出
- ・業務分担マニュアルを作成し、毎月の振り返りで運用改善
介護職員が専門業務に集中できる体制を構築。介護助手の活用は採用ハードルも下がるため、人材確保にも好影響。
移乗介助による身体的負担で、腰痛・離職の主要因となっている。
- ・スライディングシート・グローブを全フロアに配備
- ・ノーリフトケアの基本研修を全職員に実施
- ・腰痛発生件数を月次で記録し、年次で振り返り
腰痛による離職・休職の減少と、職員の身体的安全の確保。介護労働実態調査では、腰痛は離職要因の上位に位置している。
04補助金(介護人材確保・職場環境改善等事業)の活用
令和7年度は、新加算とは別建てで「介護人材確保・職場環境改善等事業」が措置されました。介護職員等の人件費(一時金等)改善や、介護助手募集経費・研修費等の職場環境改善の取組を支援する補助金です。
補助金の基本設計
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 補助の対象 | 介護職員等の一時金等の人件費改善/介護助手募集経費/研修費 等 |
| 算定式 | (基本報酬+加算減算)×単価×交付率 |
| 基準月 | 令和6年12月の総報酬(特別な事情があれば令和7年1〜3月でも可) |
| 想定支給額 | 標準的な職員配置の事業所で、常勤介護職員1人当たり54,000円相当(一律支給を意味するものではない) |
| 主な要件 | 新加算Ⅰ〜Ⅳのいずれかを算定していること(基準月時点) |
出典:厚生労働省「介護人材確保・職場環境改善等事業」リーフレット(令和7年度)
加算と補助金の関係
この補助金は、新加算を算定していることが要件となっており、加算と補助金は排他ではなく接続する関係にあります。新加算で恒常的な月額賃金改善を、補助金で一時金や職場環境改善経費を補い、両輪で職員の処遇と職場の改善を進める構造です。
05介護テクノロジー導入支援事業との併用戦略
職場環境等要件の区分5(生産性向上)は、新加算Ⅰ・Ⅱの上位区分取得のうえで重要な位置を占めます。この生産性向上を後押しする別事業として、地域医療介護総合確保基金による「介護テクノロジー導入支援事業」があります。
支援事業の概要
- 対象機器:見守りセンサー・インカム・介護記録ソフト・移乗支援機器・移動支援機器・入浴支援機器 等
- 補助率:原則 1/2(上限額あり、機器種別・事業所規模により異なる)
- 申請窓口:都道府県(年度ごとに公募)
- 対象事業所:介護保険サービスを提供する事業所
出典:厚生労働省「介護テクノロジー導入支援事業」案内資料
加算要件との接続
この事業で導入した介護テクノロジーは、職場環境等要件・区分5の取組実績として活用できます。介護労働実態調査では、ICT機器・介護ロボットを導入した事業所の約半数が「昼間/夜間の業務負担軽減」に効果があったと回答しており、職員の負担軽減と要件充足を同時に達成できる施策です。
出典:公益財団法人介護労働安定センター「令和6年度 介護労働実態調査結果」(事業所調査・問15)
06実務チェックリスト ― 取得・移行のステップ
ここまでの内容を踏まえ、令和7年度中に進めるべき実務タスクを優先度別に整理します。自施設の進捗確認にお使いください。
STEP 1:現状把握(〜令和7年6月)
- 現在算定している加算区分(新加算Ⅰ〜Ⅴのいずれか/未算定)の確認
- 令和6年12月時点の総報酬の集計(補助金算定の基準月)
- キャリアパス要件・職場環境等要件の充足状況の棚卸し
STEP 2:移行計画の策定(〜令和7年9月)
- 目標とする新加算区分の決定(経営判断)
- 未充足要件のリスト化と、対応に必要な期間・コストの試算
- 補助金・介護テクノロジー導入支援事業の活用可否検討
STEP 3:要件整備(〜令和7年12月)
- 就業規則・賃金規程の改定(月額賃金改善要件・キャリアパス要件Ⅰ・Ⅱ)
- 職場環境等要件の取組実施と記録
- HP・掲示物等での見える化
- 職員説明会の実施
STEP 4:申請・実績報告(令和8年1〜3月)
- 令和8年度の処遇改善計画書の作成・提出
- 令和7年度分の実績報告書の準備
- 差戻し対応(不備があった場合の修正)
よくある不備と差戻し事例
| 不備のパターン | 対策 |
|---|---|
| 賃金改善額の根拠資料の不足 | 改善前後の賃金台帳・配分根拠を月次で保管 |
| 職場環境等要件の取組記録の欠落 | 実施日・参加者・内容を都度記録(議事録・写真等) |
| 見える化の未対応(HP掲載漏れ) | 加算算定の事実と職場環境等要件の取組内容をHP・掲示で公表 |
| キャリアパス要件の規程未整備 | 任用要件・賃金体系・研修計画を就業規則に明記 |

参考資料一覧
- 厚生労働省老健局長通知「介護職員等処遇改善加算に関する基本的考え方並びに事務処理手順及び様式例の提示について(令和7年度分)」(令和7年2月7日 老発0207第5号)
- 厚生労働省「令和7年度の取得要件の弾力化について」(事務連絡)
- 厚生労働省「処遇改善加算がさらに取得しやすくなります! ― 令和7年度の処遇改善加算を取得しましょう!」リーフレット
- 厚生労働省「介護人材確保・職場環境改善等事業」リーフレット(令和7年度)
- 厚生労働省「介護職員等処遇改善加算 職場環境等要件 ― まずはこんな取組から!」リーフレット
- 厚生労働省「旧3加算の算定状況に応じた新加算Ⅰ〜Ⅳの算定要件(早見表)」
- 厚生労働省「介護テクノロジー導入支援事業」案内資料
- 公益財団法人介護労働安定センター「令和6年度 介護労働実態調査結果」(令和7年7月28日公表)
- 社会保障審議会 介護給付費分科会 関連資料
※本記事の内容は、執筆時点で公表されている上記一次資料に基づきます。最新情報・最終的な算定可否は、所轄の指定権者にご確認ください。