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    経営・コスト管理 2026.06.15 約12分で読了

    介護施設の電気代・光熱費
    削減完全ガイド【2026年版】
    ――10の節電策・省エネ補助金・電力契約見直しの実装手順

    介護施設の光熱費は、いまや「第2の人件費」と呼べる固定費だ。2022年以降のエネルギー価格高騰で、多くの施設で光熱費は1.5〜2倍に膨らんでいる。本記事では、2026年夏の電気・ガス料金補助の活用から、今すぐ実行できる10の節電策、省エネ補助金、電力契約の見直しまで、施設長が今月から動くべき手順をまとめて解説する。

    介護施設の電気代・光熱費削減
    深瀬久博
    執筆
    深瀬 久博 / 情熱介護 編集長
    介護福祉士・社会福祉士・認知症ケア専門士・産業ケアマネ(3級)・ストレスチェック実施者
    編集長より光熱費削減は「節電キャンペーン」ではなく経営戦略です。利用者の安全と快適性を守りながら、固定費を下げる――今月、まず電気代の明細を引っ張り出して、月別の変化を確認するところから始めてください。

    この記事でわかること

    • 介護施設の光熱費が経営に与える具体的な影響と全国平均データ
    • 2026年夏の電気・ガス料金補助金の仕組みと施設への適用
    • 今すぐ実行できる10の節電・省エネ策と削減効果の目安
    • 省エネ設備導入に使える補助金・助成金の種類と申請方法
    • 電力契約の見直しで年間数十万円削減する方法
    • 施設長が今月から動くべき優先アクション

    はじめに:光熱費が「第2の人件費」になっている

    介護施設の経営を圧迫するコストといえば、人件費が真っ先に挙がる。しかし今、多くの施設長が「第2のコスト問題」として頭を抱えているのが光熱費だ。

    2022年以降のエネルギー価格高騰、円安、再生可能エネルギー賦課金の増加――これらが重なり、介護施設の光熱費は数年前の1.5〜2倍に膨らんでいる。

    24時間365日稼働が基本の介護施設は、照明・空調・厨房・浴室・洗濯・医療機器など、電力消費が止まらない構造にある。節電しようにも「利用者の安全・快適性を守りながら」という制約がある。

    しかし「何もできない」ということはない。正しい順番で取り組めば、年間数十万〜数百万円の光熱費削減が現実的に可能だ。

    介護施設の光熱費の実態

    規模別の光熱費目安

    介護施設の光熱費は施設の規模・種別・地域によって大きく異なるが、以下が目安だ。

    施設種別月間光熱費の目安年間光熱費の目安
    特養(定員50名)60万〜100万円720万〜1,200万円
    通所介護(定員30名)15万〜30万円180万〜360万円
    グループホーム(9名)8万〜15万円96万〜180万円
    訪問看護ステーション3万〜8万円36万〜96万円

    これが2022年以前と比較して1.5〜2倍に膨らんでいる施設が多い。

    電力消費の大きい設備トップ5

    介護施設で最も電力を消費する設備はこの順番だ。

    1. 空調設備(冷暖房):全消費電力の約30〜40%
    2. 給湯設備(浴室・シャワー):約20〜25%
    3. 厨房設備(調理・保冷):約15〜20%
    4. 照明設備:約10〜15%
    5. 洗濯・乾燥設備:約5〜10%

    この5つを重点的に改善するだけで、消費電力の80〜90%をカバーできる。

    今すぐ活用:2026年夏の電気・ガス料金補助

    補助の概要

    2026年夏も7〜9月使用分の電気・ガス料金支援が実施されることが決定した。冷房需要が増える夏季の光熱費負担を軽減するための措置で、利用者側の申請は不要で電力・ガス会社経由で自動的に値引きが適用される。

    施設への影響

    家庭向けの補助と同様に、事業所契約の電気・ガス料金にも一定の補助が適用される。

    補助額の詳細は経済産業省の正式発表を確認してほしいが、特に電力消費量の多い介護施設では、7〜9月の3ヶ月で数万〜数十万円規模の恩恵を受けられる可能性がある。

    確認すべきこと・現在の電力契約が補助対象の事業者か確認する
    ・電力会社から補助適用の通知が来ているか確認する
    ・補助額を経費削減として財務計画に反映する
    節電は我慢ではない。仕組みを変えることだ。

    今すぐ実行できる10の節電策

    ①空調の設定温度・稼働時間の最適化

    最も即効性が高い節電策だ。

    ・冷房設定を28℃(熱中症対策の範囲内で適正管理)
    ・不使用時間帯の空調を自動オフに設定
    ・フィルター清掃を月1回実施(詰まりで消費電力が10〜15%増加)
    ・外気温に応じた稼働スケジュールの設定

    削減効果の目安:月間電気代の5〜10%

    ②LED照明への完全切り替え

    まだ蛍光灯・白熱灯が残っている施設は、今すぐLEDに切り替えるべきだ。

    ・消費電力が蛍光灯比で約50〜60%削減
    ・交換サイクルが長くなり、メンテナンスコストも削減
    ・介護テクノロジー導入支援事業の補助金対象になる場合がある

    削減効果の目安:照明電力コストの50〜60%削減

    ③給湯温度・使用時間の管理

    浴室・厨房の給湯は電力消費が大きい。

    ・給湯温度を必要最低限に設定(入浴は42℃前後、厨房は用途別に設定)
    ・深夜電力を活用した貯湯式給湯器の導入検討
    ・使用していない時間帯の給湯器の待機モード設定

    削減効果の目安:給湯コストの10〜20%削減

    ④厨房設備の省エネ運用

    介護施設の厨房は一日中稼働しており、電力消費が大きい。

    ・冷蔵・冷凍庫の設定温度の適正化(開閉頻度の管理)
    ・調理時間の集約化(一度に大量調理してオーブン・コンロの稼働時間を短縮)
    ・業務用食洗機の満載運転(半分の量での運転は非効率)

    削減効果の目安:厨房電力コストの10〜15%削減

    ⑤待機電力のカット

    使っていない設備の電力をカットするだけで、意外な削減効果がある。

    ・不使用のパソコン・コピー機の電源オフ徹底
    ・自動販売機の省エネモード設定(夜間照明オフ)
    ・充電器・電源タップの不使用時オフ

    削減効果の目安:全電力の3〜5%削減

    ⑥洗濯・乾燥の時間帯シフト

    深夜電力プランを活用している施設は、洗濯・乾燥を深夜に集中させることでコストを下げられる。

    ・深夜電力(夜11時〜翌朝7時)の単価は昼間の約50〜60%
    ・タイマー設定で深夜稼働に切り替える

    削減効果の目安:洗濯・乾燥コストの20〜30%削減(深夜プラン活用時)

    ⑦エレベーターの省エネ設定

    複数階建の施設はエレベーターの電力消費も無視できない。

    ・深夜・早朝の低稼働時間帯は一部エレベーターを休止
    ・省エネモード(低速運転・照明間引き)の設定

    削減効果の目安:エレベーター電力の10〜20%削減

    ⑧電力使用量の「見える化」

    何が電力を消費しているかわからないまま節電しても限界がある。

    ・スマートメーター・電力モニターの導入で時間別・設備別の消費量を把握
    ・月次で電力使用量レポートを作成し、異常値を早期発見

    削減効果の目安:異常な電力消費の早期発見で5〜10%削減

    ⑨太陽光発電・蓄電池の導入

    初期費用はかかるが、長期的に最も大きな削減効果が得られる。

    ・屋上・駐車場への太陽光パネル設置で自家発電
    ・余剰電力の売電収入も期待できる
    ・省エネ設備補助金の対象になる場合が多い
    ・停電時のBCP対策としても機能する

    削減効果の目安:年間電気代の20〜40%削減(設備規模による)

    ⑩電力契約プランの見直し

    これは「節電」ではなく「契約最適化」だが、効果は大きい。

    ・現在の契約アンペア数・プランが実態に合っているか確認
    ・電力自由化後の新電力会社への切り替え検討
    ・時間帯別料金プランへの切り替え(使用時間帯によっては大幅削減)

    削減効果の目安:年間電気代の5〜15%削減

    省エネ設備導入に使える補助金

    主な補助制度

    介護施設が活用できる省エネ関連の補助金は複数ある。

    補助制度対象補助率・上限
    省エネ設備導入補助金(経産省)高効率空調・LED・給湯器等1/3〜1/2
    介護テクノロジー導入支援事業見守りセンサー等のICT機器最大260万円
    ZEB化・省CO2化支援事業(環境省)建物の省エネ改修1/3〜2/3
    地方自治体の省エネ補助金地域によって異なる各自治体に確認

    補助金は年度ごとに内容が変わる。今年度の最新情報は各省庁・都道府県の公式サイトで必ず確認してほしい。

    申請の優先順位

    まず都道府県・市区町村の省エネ補助金を確認する。国の補助金より手続きが簡単で、地元の施設が優先されるケースが多い。次に経産省・環境省の補助金を検討する。

    電力契約の見直し手順

    STEP 1:現在の電力使用量を把握する

    直近12ヶ月の電気使用量(kWh)と請求額を電力会社から取得する。月別の推移を見ることで、季節変動と節電効果の確認ができる。

    STEP 2:現在の契約プランを確認する

    契約アンペア・電力プランが現在の使用実態に合っているか確認する。契約アンペアが過大な場合は基本料金の見直しで削減できる。

    STEP 3:他社プランと比較する

    電力比較サイト(エネチェンジ等)を使って、現在の契約と他社プランを比較する。切り替えの際は解約手数料・最低契約期間を必ず確認する。

    STEP 4:切り替えを実施する

    切り替え手続きは電力会社のWebサイトまたは電話で完結できる。工事は不要で、スマートメーターがある施設は遠隔切り替えが可能だ。

    施設長の今月確認リスト

    • 直近12ヶ月の月別電気代・ガス代を一覧化した
    • 電力消費が大きい設備トップ5を特定した
    • 2026年夏の電力補助が自施設の契約に適用されるか確認した
    • LED照明への切り替えが完了しているか確認した
    • 空調フィルターの清掃スケジュールを設定した
    • 電力契約プランの見直しを検討した
    • 活用できる省エネ補助金を都道府県に確認した
    • 太陽光発電・蓄電池の導入を中長期計画に位置づけた

    編集長・深瀬久博からひとこと

    光熱費削減は「節電キャンペーン」ではない。経営戦略だ。

    人件費が上がり続ける中、固定費の削減は収益改善の数少ない確実な手段だ。

    しかし「利用者の安全・快適性を守りながら」という大前提を外してはいけない。エアコンを切って熱中症を起こすことや、照明を暗くして転倒リスクを高めることは本末転倒だ。

    正しい節電は、利用者の生活の質を守りながらコストを下げることだ。

    今月、まず電気代の明細を引っ張り出して、月別の変化を確認してほしい。それだけで「どこから手をつけるべきか」が見えてくる。

    深瀬 久博 / 情熱介護 編集長 / 介護現場マネジメント講師