介護施設の電気代・光熱費
削減完全ガイド【2026年版】
――10の節電策・省エネ補助金・電力契約見直しの実装手順
介護施設の光熱費は、いまや「第2の人件費」と呼べる固定費だ。2022年以降のエネルギー価格高騰で、多くの施設で光熱費は1.5〜2倍に膨らんでいる。本記事では、2026年夏の電気・ガス料金補助の活用から、今すぐ実行できる10の節電策、省エネ補助金、電力契約の見直しまで、施設長が今月から動くべき手順をまとめて解説する。

この記事でわかること
- 介護施設の光熱費が経営に与える具体的な影響と全国平均データ
- 2026年夏の電気・ガス料金補助金の仕組みと施設への適用
- 今すぐ実行できる10の節電・省エネ策と削減効果の目安
- 省エネ設備導入に使える補助金・助成金の種類と申請方法
- 電力契約の見直しで年間数十万円削減する方法
- 施設長が今月から動くべき優先アクション
はじめに:光熱費が「第2の人件費」になっている
介護施設の経営を圧迫するコストといえば、人件費が真っ先に挙がる。しかし今、多くの施設長が「第2のコスト問題」として頭を抱えているのが光熱費だ。
2022年以降のエネルギー価格高騰、円安、再生可能エネルギー賦課金の増加――これらが重なり、介護施設の光熱費は数年前の1.5〜2倍に膨らんでいる。
24時間365日稼働が基本の介護施設は、照明・空調・厨房・浴室・洗濯・医療機器など、電力消費が止まらない構造にある。節電しようにも「利用者の安全・快適性を守りながら」という制約がある。
しかし「何もできない」ということはない。正しい順番で取り組めば、年間数十万〜数百万円の光熱費削減が現実的に可能だ。
介護施設の光熱費の実態
規模別の光熱費目安
介護施設の光熱費は施設の規模・種別・地域によって大きく異なるが、以下が目安だ。
| 施設種別 | 月間光熱費の目安 | 年間光熱費の目安 |
|---|---|---|
| 特養(定員50名) | 60万〜100万円 | 720万〜1,200万円 |
| 通所介護(定員30名) | 15万〜30万円 | 180万〜360万円 |
| グループホーム(9名) | 8万〜15万円 | 96万〜180万円 |
| 訪問看護ステーション | 3万〜8万円 | 36万〜96万円 |
これが2022年以前と比較して1.5〜2倍に膨らんでいる施設が多い。
電力消費の大きい設備トップ5
介護施設で最も電力を消費する設備はこの順番だ。
1. 空調設備(冷暖房):全消費電力の約30〜40%
2. 給湯設備(浴室・シャワー):約20〜25%
3. 厨房設備(調理・保冷):約15〜20%
4. 照明設備:約10〜15%
5. 洗濯・乾燥設備:約5〜10%
この5つを重点的に改善するだけで、消費電力の80〜90%をカバーできる。
今すぐ活用:2026年夏の電気・ガス料金補助
補助の概要
2026年夏も7〜9月使用分の電気・ガス料金支援が実施されることが決定した。冷房需要が増える夏季の光熱費負担を軽減するための措置で、利用者側の申請は不要で電力・ガス会社経由で自動的に値引きが適用される。
施設への影響
家庭向けの補助と同様に、事業所契約の電気・ガス料金にも一定の補助が適用される。
補助額の詳細は経済産業省の正式発表を確認してほしいが、特に電力消費量の多い介護施設では、7〜9月の3ヶ月で数万〜数十万円規模の恩恵を受けられる可能性がある。
・電力会社から補助適用の通知が来ているか確認する
・補助額を経費削減として財務計画に反映する
節電は我慢ではない。仕組みを変えることだ。
今すぐ実行できる10の節電策
①空調の設定温度・稼働時間の最適化
最も即効性が高い節電策だ。
・冷房設定を28℃(熱中症対策の範囲内で適正管理)
・不使用時間帯の空調を自動オフに設定
・フィルター清掃を月1回実施(詰まりで消費電力が10〜15%増加)
・外気温に応じた稼働スケジュールの設定
削減効果の目安:月間電気代の5〜10%
②LED照明への完全切り替え
まだ蛍光灯・白熱灯が残っている施設は、今すぐLEDに切り替えるべきだ。
・消費電力が蛍光灯比で約50〜60%削減
・交換サイクルが長くなり、メンテナンスコストも削減
・介護テクノロジー導入支援事業の補助金対象になる場合がある
削減効果の目安:照明電力コストの50〜60%削減
③給湯温度・使用時間の管理
浴室・厨房の給湯は電力消費が大きい。
・給湯温度を必要最低限に設定(入浴は42℃前後、厨房は用途別に設定)
・深夜電力を活用した貯湯式給湯器の導入検討
・使用していない時間帯の給湯器の待機モード設定
削減効果の目安:給湯コストの10〜20%削減
④厨房設備の省エネ運用
介護施設の厨房は一日中稼働しており、電力消費が大きい。
・冷蔵・冷凍庫の設定温度の適正化(開閉頻度の管理)
・調理時間の集約化(一度に大量調理してオーブン・コンロの稼働時間を短縮)
・業務用食洗機の満載運転(半分の量での運転は非効率)
削減効果の目安:厨房電力コストの10〜15%削減
⑤待機電力のカット
使っていない設備の電力をカットするだけで、意外な削減効果がある。
・不使用のパソコン・コピー機の電源オフ徹底
・自動販売機の省エネモード設定(夜間照明オフ)
・充電器・電源タップの不使用時オフ
削減効果の目安:全電力の3〜5%削減
⑥洗濯・乾燥の時間帯シフト
深夜電力プランを活用している施設は、洗濯・乾燥を深夜に集中させることでコストを下げられる。
・深夜電力(夜11時〜翌朝7時)の単価は昼間の約50〜60%
・タイマー設定で深夜稼働に切り替える
削減効果の目安:洗濯・乾燥コストの20〜30%削減(深夜プラン活用時)
⑦エレベーターの省エネ設定
複数階建の施設はエレベーターの電力消費も無視できない。
・深夜・早朝の低稼働時間帯は一部エレベーターを休止
・省エネモード(低速運転・照明間引き)の設定
削減効果の目安:エレベーター電力の10〜20%削減
⑧電力使用量の「見える化」
何が電力を消費しているかわからないまま節電しても限界がある。
・スマートメーター・電力モニターの導入で時間別・設備別の消費量を把握
・月次で電力使用量レポートを作成し、異常値を早期発見
削減効果の目安:異常な電力消費の早期発見で5〜10%削減
⑨太陽光発電・蓄電池の導入
初期費用はかかるが、長期的に最も大きな削減効果が得られる。
・屋上・駐車場への太陽光パネル設置で自家発電
・余剰電力の売電収入も期待できる
・省エネ設備補助金の対象になる場合が多い
・停電時のBCP対策としても機能する
削減効果の目安:年間電気代の20〜40%削減(設備規模による)
⑩電力契約プランの見直し
これは「節電」ではなく「契約最適化」だが、効果は大きい。
・現在の契約アンペア数・プランが実態に合っているか確認
・電力自由化後の新電力会社への切り替え検討
・時間帯別料金プランへの切り替え(使用時間帯によっては大幅削減)
削減効果の目安:年間電気代の5〜15%削減
省エネ設備導入に使える補助金
主な補助制度
介護施設が活用できる省エネ関連の補助金は複数ある。
| 補助制度 | 対象 | 補助率・上限 |
|---|---|---|
| 省エネ設備導入補助金(経産省) | 高効率空調・LED・給湯器等 | 1/3〜1/2 |
| 介護テクノロジー導入支援事業 | 見守りセンサー等のICT機器 | 最大260万円 |
| ZEB化・省CO2化支援事業(環境省) | 建物の省エネ改修 | 1/3〜2/3 |
| 地方自治体の省エネ補助金 | 地域によって異なる | 各自治体に確認 |
補助金は年度ごとに内容が変わる。今年度の最新情報は各省庁・都道府県の公式サイトで必ず確認してほしい。
申請の優先順位
まず都道府県・市区町村の省エネ補助金を確認する。国の補助金より手続きが簡単で、地元の施設が優先されるケースが多い。次に経産省・環境省の補助金を検討する。
電力契約の見直し手順
STEP 1:現在の電力使用量を把握する
直近12ヶ月の電気使用量(kWh)と請求額を電力会社から取得する。月別の推移を見ることで、季節変動と節電効果の確認ができる。
STEP 2:現在の契約プランを確認する
契約アンペア・電力プランが現在の使用実態に合っているか確認する。契約アンペアが過大な場合は基本料金の見直しで削減できる。
STEP 3:他社プランと比較する
電力比較サイト(エネチェンジ等)を使って、現在の契約と他社プランを比較する。切り替えの際は解約手数料・最低契約期間を必ず確認する。
STEP 4:切り替えを実施する
切り替え手続きは電力会社のWebサイトまたは電話で完結できる。工事は不要で、スマートメーターがある施設は遠隔切り替えが可能だ。
施設長の今月確認リスト
- 直近12ヶ月の月別電気代・ガス代を一覧化した
- 電力消費が大きい設備トップ5を特定した
- 2026年夏の電力補助が自施設の契約に適用されるか確認した
- LED照明への切り替えが完了しているか確認した
- 空調フィルターの清掃スケジュールを設定した
- 電力契約プランの見直しを検討した
- 活用できる省エネ補助金を都道府県に確認した
- 太陽光発電・蓄電池の導入を中長期計画に位置づけた
編集長・深瀬久博からひとこと
光熱費削減は「節電キャンペーン」ではない。経営戦略だ。
人件費が上がり続ける中、固定費の削減は収益改善の数少ない確実な手段だ。
しかし「利用者の安全・快適性を守りながら」という大前提を外してはいけない。エアコンを切って熱中症を起こすことや、照明を暗くして転倒リスクを高めることは本末転倒だ。
正しい節電は、利用者の生活の質を守りながらコストを下げることだ。
今月、まず電気代の明細を引っ張り出して、月別の変化を確認してほしい。それだけで「どこから手をつけるべきか」が見えてくる。