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    制度・報酬改定 2026.09.16 約8分で読了

    夜間の人員配置基準、
    さらなる緩和の検討へ
    施設長が「夜勤を減らす」前に確認すべき3つのこと

    夜勤に入れる職員が足りない。求人を出しても応募が来ない。夜勤のできる職員が一人辞めるだけで、残った職員の夜勤回数がすぐに増えてしまう——。こうした悩みを抱える施設長にとって、2026年8月28日の社会保障審議会・介護給付費分科会で「見守り機器を活用している施設の夜間の人員配置」が2027年度の介護報酬改定に向けた論点として示されたのは気になるニュースです。ただし現時点では何も決まっていません。今回は審議会の資料をもとに「何が議論されているのか」「これまでどう緩和されてきたのか」「施設長が今のうちに確認しておくべきこと」を整理します。

    夜間の介護施設の廊下で、奥に立つ職員の後ろ姿
    深瀬久博
    執筆・監修
    深瀬 久博 / 情熱介護 編集長
    精神保健福祉士・社会福祉士・介護支援専門員・介護福祉士・認知症ケア専門士・産業ケアマネ(3級)・ストレスチェック実施者
    編集長より

    「機器を入れれば夜勤の人数を減らせる」という期待が先行しがちです。ただし、過去の緩和には「全員分の機器」「運用ルール」「3か月以上の試行」が前提になっています。制度が決まる前に、自施設の現在地を確認しておくことが何より重要です。

    8月28日の審議会で何が示されたのか

    厚生労働省は、第263回介護給付費分科会で「介護現場の生産性向上等の推進」という資料を提出しました。その最後の「論点」で、夜間の見守り機器を活用して職員の業務時間が減ったという結果を踏まえ、見守り機器を活用した場合の夜間の方策として何が考えられるかを委員に問いかけています。

    報道では、厚労省はサービスの質を確保することを前提に、夜間の人員配置基準をさらに緩和できないか検討する考えを示したと伝えられています。

    ここで押さえておきたいのは、次の3点です。

    • 決定ではなく「検討を始めた」段階です
    • 対象となるサービスや、配置を何人にするかといった具体的な数字は、まだ示されていません
    • 審議会の委員からは、テクノロジーは人の代わりにはならないという慎重な意見も出ています

    具体的な中身は、今後の分科会で議論されることになります。

    これまでの「夜間の緩和」の流れ

    今回の議論は、突然出てきたものではありません。見守り機器を条件にした夜間の緩和は、過去の改定で段階的に進められてきました。

    改定年度対象主な内容
    2021年度特別養護老人ホーム等見守り機器等を導入した場合の、夜間の人員配置基準と夜勤職員配置加算の要件を緩和
    2024年度介護老人保健施設(ユニット型を除く)、短期入所療養介護要件を満たせば、夜間の配置人員を「2人以上」から「1.6人以上」に(常時1人以上は必要)
    2024年度認知症グループホーム夜間支援体制加算を、夜勤職員の加配が0.9人以上の場合でも算定可能に
    2024年度特定施設(有料老人ホーム等)生産性向上に先進的に取り組む施設で、介護・看護職員の配置を特例的に柔軟化

    2024年度の老健の緩和を例にとると、条件は次のとおりでした。

    • すべての利用者に見守りセンサーを導入していること
    • 夜勤職員全員がインカム等を使っていること
    • 委員会の設置、職員の休憩時間の確保、緊急時の体制など、安全体制を整えていること
    • 導入後、少なくとも3か月以上試してから、委員会で安全やケアの質を確認したうえで届け出ること

    つまり「機器を置けば人を減らせる」のではなく、全員分の機器・運用ルール・試行期間・確認の手続きがそろって初めて使える仕組みです。今回の検討がどうなるにせよ、この考え方は引き継がれる可能性が高いと考えられます。

    議論の根拠になった実証データ

    厚労省は、見守り機器の効果を実際の施設で測る実証事業を続けています。今回の資料では、令和7年度の実証(特養・老健・グループホームの計10施設)の結果が報告されました。

    「直接介護」と「巡回・移動」を合わせた時間は、導入前と導入後で比べると次のように減りました(介護職員1人・1日600分に換算した値)。

    施設の種類減った時間
    特別養護老人ホーム約102分
    介護老人保健施設約69分
    認知症グループホーム約60分

    また、令和2〜7年度に見守り機器を全床に導入した42施設の実証では、職員1人あたりが対応できる利用者数が38%増えたと整理されています。

    ただし、令和7年度の実証は10施設と規模が小さく、回答した職員数も少ない点には注意が必要です。「どの施設でも同じだけ時間が減る」と読むのは早いでしょう。

    現場の声としては、「利用者の動きに合わせて対応でき、無理に起こさなくなった」「減った時間をレクリエーションの企画や委員会業務に使えた」「職員が通路を走らなくなった」といった内容が紹介されています。

    現場の実態は「機器はあるが、全員分はない」

    一方で、同じ資料には全国の施設・事業所へのアンケート結果も載っています。こちらを見ると、緩和の条件と現場との間には、まだ距離があることが分かります。

    • 居住系・入所系サービスで見守り機器を導入しているのは47.2%(令和4年度は30.0%)
    • 見守り機器を導入している施設のうち、すべての利用者を個別に見守れる台数があるのは32.9%
    • 夜間の定期巡回を続けている施設は77.6%
    • 機器導入後の夜間の変化は「定期巡回を、利用者の状況に応じた訪室に見直した」が40.4%、「巡回の頻度を減らした」が35.8%。「夜間の人員を減らした」はわずか3.3%
    • 生産性向上推進体制加算(Ⅱ)を取っている施設が、上位の(Ⅰ)を取らない理由は「見守り機器を利用者全員分そろえるのが難しい」61.6%、「インカム等を全職員分そろえるのが難しい」56.3%

    見守り機器の導入費用は、1台あたり平均で約25万円(中央値は15万円)という回答でした。定員の多い施設ほど、全床導入の負担は重くなります。

    見守り機器を入れた施設の多くは、人を減らすためではなく、夜勤の負担を軽くするために使っているのが実態だと読み取れます。

    施設長が今のうちに確認しておくべき3つのこと

    1. 自施設の「現在地」を把握する

    今回の検討がどんな形で決まっても、条件の土台になるのは「見守り機器が全床にあるか」「夜勤職員全員がインカム等を使っているか」「委員会が機能しているか」になると考えられます。

    特に委員会(利用者の安全やケアの質、職員の負担軽減を検討する委員会)は、2024年度改定で入所・泊まり・居住系サービスに設置が義務付けられており、2027年3月末で経過措置(猶予期間)が終わります。緩和を使うかどうかに関係なく、まずここが整っているかを確認しておくと安心です。

    2. 「3か月の試行とデータ」を前提に計画を立てる

    過去の緩和では、機器を入れてすぐ配置を変えることは認められず、試行期間中は通常の配置基準を守る必要がありました。改定が決まってから準備を始めると、実際に使えるのはかなり先になります。

    新しい仕組みがどうなるかは今後の議論次第です。ただ、「導入→運用ルールを決める→試す→記録を取る」には時間がかかる、という見通しは持っておいたほうがよいでしょう。

    3. 「浮いた時間を何に使うか」を先に決める

    実証で減った時間を「夜勤の人数を減らす」ことだけに使うのか、「休憩をしっかり取る」「巡回に追われず、必要な方にしっかり対応する」「日中の業務に回す」ことに使うのか。ここは施設長の判断で大きく変わります。

    参考になるデータがあります。特定施設の配置柔軟化を適用した施設(8施設)では、月平均の残業時間は1.33時間、年間の有給休暇取得は12.93日でした。介護労働実態調査の平均(残業6.80時間、有給7.80日)と比べると、働き方の数字が良くなっています。対象が8施設とごく少ないため一般化はできませんが、「テクノロジーで生まれた余裕を、職員の働きやすさにも回している」施設像がうかがえます。

    「何人減らせるか」より「辞めない夜勤をつくれるか」

    夜勤体制の問題は、人数だけでは解決しません。

    配置基準が緩和されて、夜勤の人数を減らせたとします。それでも、一人あたりの責任が重くなったと職員が感じ、夜勤のできる職員が一人辞めてしまえば、残った職員の夜勤回数は増えます。そして、その穴を埋めるために、また採用費をかけることになります。

    見守り機器や基準の緩和は、使い方によって「職員を減らす道具」にも「職員が辞めない夜勤をつくる道具」にもなります。今回の議論をきっかけに、自施設の夜勤が職員にとってどんな負担になっているのか、一度立ち止まって見直してみてはいかがでしょうか。

    採用で穴を埋め続けるより、今いる職員が続けられる体制をつくる。制度の変化を、その視点で使いこなしていくことが、これからの施設運営ではますます大切になると考えます。

    今後、分科会で具体的な対象や数字が示されたら、情熱介護でも改めてお伝えします。

    深瀬久博
    深瀬 久博
    情熱介護 編集長 / 介護現場マネジメント講師

    この記事の出典

    ※本記事は2026年9月時点の審議会資料をもとにしています。制度の内容は今後の議論で変わる可能性があります。実際の運用にあたっては、指定権者(都道府県・市区町村)にご確認ください。

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