「登録施設介護支援」が
住宅型ホーム経営を変える
――ケアプラン有料化・囲い込み規制強化・収益構造の透明化で施設長が今から取るべき3つの経営判断
2026年4月3日、政府は介護保険法等の改正案を閣議決定した。その中に、住宅型有料老人ホームの経営モデルを根本から変える制度変更が含まれていた。「登録施設介護(予防)支援」の創設だ。これは単なる新サービス類型の追加ではなく、住宅型有料老人ホームで長年続いてきた「囲い込み」という収益構造に制度として終止符を打つ試みだ。同時に、ケアプランの作成について原則1割の利用者負担が導入されることで、「ケアプランは無料」という介護保険制度の前提が、一部の入居者に限り変わることになる。

この記事でわかること
- 「登録施設介護支援」とは何か、なぜ今創設されるのか
- ケアプラン有料化(原則1割負担)が入居者・家族に与える影響
- 定額報酬化で居宅介護支援事業所の収益がどう変わるか
- 「囲い込み」規制強化で住宅型ホームの収益構造が問われる理由
- 施設長が今から取るべき3つの経営判断
- 2027年4月施行に向けて今月確認すべきこと
はじめに:「住宅型」の経営モデルが根本から変わる
2026年4月3日、政府は介護保険法等の改正案を閣議決定した。
その中に、住宅型有料老人ホームの経営モデルを根本から変える制度変更が含まれていた。
「登録施設介護(予防)支援」の創設だ。
これは単なる「新しいサービス類型の追加」ではない。住宅型有料老人ホームにおいて長年続いてきた「囲い込み」という収益構造に、制度として終止符を打つ試みだ。
同時に、ケアプランの作成について原則1割の利用者負担が導入されることで、「ケアプランは無料」という介護保険制度の前提が、一部の入居者に限り変わることになる。
この変化を「住宅型ホームだから関係ない」と思っている施設長は、2027年4月以降に大きな経営上の打撃を受けるリスクがある。
「登録施設介護支援」とは何か
創設の背景:囲い込み問題の歴史
住宅型有料老人ホームは、介護付きホーム(特定施設入居者生活介護)と異なり、居住と介護サービスが分離している。入居者は外部の居宅介護支援事業所のケアマネジャーにケアプランを作成してもらい、外部の訪問介護・通所介護等を利用する形が基本だ。
しかし実態として、多くの住宅型ホームでは同一法人または関連法人のケアマネ・訪問介護・通所介護が「囲い込み」の形で提供されてきた。
この構造には以下の問題がある。
- ケアプランの中立性が失われる(自法人サービスを過剰に組み込む)
- 入居者の選択権が実質的に制限される
- 区分支給限度額いっぱいまでサービスを組み込む過剰給付が発生する
厚労省は2018年・2021年・2024年の改定で同一建物減算等の対策を打ってきたが、居宅介護支援の仕組み自体は維持されてきた。今回の「登録施設介護支援」の創設は、その構造そのものを変える試みだ。
制度の概要
登録施設介護支援は、新たに「登録制」の対象となる住宅型有料老人ホームの入居者に対して、ケアプラン作成と生活相談を一体的・包括的に提供する新たなケアマネジメント類型だ。
現行の居宅介護支援とは別建ての制度として創設される。
主な特徴は以下の通りだ。
| 項目 | 現行の居宅介護支援 | 登録施設介護支援 |
|---|---|---|
| 対象 | 在宅・住宅型ホーム入居者 | 登録制対象の住宅型ホーム入居者 |
| 利用者負担 | なし(全額保険給付) | 原則1割の定率負担 |
| 報酬体系 | 出来高報酬 | 定額報酬 |
| ケアプランの性質 | 居宅ケアプラン | 新類型のケアプラン |
ケアプラン有料化が入居者・家族に与える影響
「ケアプランは無料」の前提が変わる
現行制度では、ケアプランの作成費用は全額介護保険から給付され、利用者負担はゼロだ。
登録施設介護支援では、このケアプラン作成費用について原則1割の定率利用者負担が発生する。
介護付きホーム(特定施設)と同様の仕組みだ。
入居者・家族への影響
具体的な利用者負担額は今後省令で定められるが、現行の特定施設の定額報酬を参考にすると、月額で数千円程度の自己負担が発生する可能性がある。
入居者・家族への影響として考えられることは以下だ。
①費用面の変化
これまで「ケアプランは無料だった」入居者が、一定額の自己負担を求められるようになる。食費の引き上げ(8月施行)と重なるタイミングで、費用増加への不満が出やすい環境になる。
②「なぜ住宅型ホームに入るとケアプランが有料になるのか」という疑問
この疑問に丁寧に答えられない施設は、入居者・家族からの信頼を失うリスクがある。
定額報酬化で居宅介護支援事業所の収益がどう変わるか
居宅介護支援事業所への影響
登録施設介護支援の創設で最も大きな影響を受けるのは、住宅型ホームやサ高住の入居者を多く担当している居宅介護支援事業所だ。
現行の出来高報酬(担当ケース数×月額報酬)から、定額報酬への移行が求められる可能性がある。
出来高→定額の変化が意味すること:
- 加算を積み上げて収益を増やすモデルが成立しにくくなる
- 担当ケース数の管理が重要になる
- ケアプランの質・中立性が問われるようになる
収益構造の透明化という圧力
今回の制度設計で注目すべきは、「収益構造の透明性が問われる」という点だ。
住まい事業(賃料)としての収支、介護事業(介護報酬)としての収支、紹介料や自費サービスを含む収益構造が、今後は制度的に「見える化」される方向に進んでいる。
これまで「住宅型は自由度が高い」という前提で成立していたビジネスモデルに、制度的な透明性の要求が加わることになる。
施設長が今から取るべき3つの経営判断
経営判断①:自施設が「登録制」の対象になるかを今から把握する
登録制の対象となるのは「中重度者・医療ケアを要する高齢者が多い施設」が中心とされている。
現時点では省令による詳細な対象基準が未確定だが、以下を今から確認しておくべきだ。
- 現在の入居者の要介護度分布(重度者の比率)
- 医療的ケアが必要な入居者の数と割合
- 同一法人または関連法人のケアマネ・訪問介護の担当割合
この数字を把握することで、登録制の対象になりやすいかどうかの自己評価ができる。
経営判断②:「囲い込み」依存の収益モデルを今のうちに見直す
登録施設介護支援の創設は「囲い込みへのペナルティ」ではなく「囲い込みが成立しない仕組みへの転換」だ。
登録制の対象となった場合、入居者のケアプランは登録施設介護支援として提供されることになり、自法人サービスへの誘導が難しくなる。
今の収益が「自法人の訪問介護・通所介護への誘導」に依存している割合が高い住宅型ホームは、今のうちに以下を検討すべきだ。
- 自費サービスの充実(介護保険外での収益確保)
- 住まいとしての価値(居住環境・食事・設備)の強化
- 外部ケアマネとの信頼関係の構築
囲い込みに頼らなくても選ばれる施設になることが、2027年以降の経営安定の条件だ。
経営判断③:居宅介護支援事業所の経営を切り分けて考える
住宅型ホームと居宅介護支援事業所を併設している法人は、居宅介護支援事業所の収益が登録施設介護支援の創設でどう変わるかを別途シミュレーションすべきだ。
登録制対象の入居者については、登録施設介護支援として別途指定・報告が必要になる可能性がある。現行の居宅介護支援事業所の指定とは別の手続きが求められることも想定される。
今から経営を「住まい事業」「介護事業」「ケアマネジメント事業」に分けて管理する体制を作ることが、2027年以降の経営の透明性確保につながる。
「ケアプラン有料化への呼び水」にしてはいけない理由
今回の登録施設介護支援の創設を「ケアプラン全面有料化への第一歩」と捉える見方がある。
この懸念は理解できる。しかし正確に言えば、今回の有料化は「登録制対象の住宅型ホーム入居者」に限定されたものだ。在宅の一般利用者のケアプランが有料化されるわけではない。
施設長として重要なのは、この制度変更を正確に理解した上で、「うちの施設は対象か」「対象になった場合どう変わるか」という具体的な経営判断をすることだ。
不正確な情報で「ケアプランが全部有料になる」という誤解を入居者・家族に広げることは避けてほしい。
施設長の今月確認リスト
- □自施設の入居者の要介護度分布・医療ケア必要者の割合を確認した
- □同一法人・関連法人のケアマネ・訪問介護の担当割合を確認した
- □登録制の対象基準(今後の省令)を継続的にウォッチする体制を整えた
- □居宅介護支援事業所を併設している場合、収益への影響をシミュレーションした
- □自費サービスの充実・住まいとしての価値向上の可能性を検討した
- □外部ケアマネとの関係構築状況を確認した
編集長・深瀬久博からひとこと
「囲い込み」という言葉は、制度の外から批判する人が使う言葉だ。
しかし現場の施設長の多くは「利用者のために必要なサービスを提供している」と信じて運営してきた。その善意と、制度が問題視してきた構造的な歪みは、必ずしも一致しない。
今回の登録施設介護支援の創設は、その構造に制度として向き合うことを施設長に求めている。
「対象になるかどうか分からないから、とりあえず様子を見る」という判断は、2027年4月に慌てることになる。
今月、自施設の入居者構成と収益構造を数字で確認してほしい。それだけで、準備の入り口に立てる。
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