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    制度・経営対応 2026.07.11 約13分で読了

    【2026年6月25日公布】改正介護保険法の全施行スケジュール完全整理――住宅型規制強化・過疎地特例・登録施設介護支援・補足給付見直しまで施設長が今から動くべき準備ロードマップ

    2026年6月25日、改正介護保険法が公布された。ケアマネ資格更新制の廃止に加え、住宅型有料老人ホームの登録制・過疎地向け特定地域居宅サービス・登録施設介護支援・補足給付見直しなど、経営に直結する制度変更が複数盛り込まれている。多くは2027年4月施行だが、準備に時間がかかる項目ほど、今から動く施設が先手を取れる。

    改正介護保険法 全施行スケジュール完全整理
    深瀬久博
    執筆
    深瀬 久博 / 情熱介護 編集長
    介護福祉士・社会福祉士・認知症ケア専門士・産業ケアマネ(3級)
    編集長より制度改正は「成立」「公布」「施行」の3段階で現場に届く。多くの施設長は施行日から動き出すが、それでは準備期間がない。今回最も早く現場に来るのは8月1日の補足給付見直し。あと3週間もない。

    この記事でわかること

    • 2026年6月25日公布の改正介護保険法に何が含まれているか
    • 住宅型有料老人ホームの「登録制」導入で何が変わるのか
    • 過疎地・中山間地域向け「特定地域居宅サービス」の概要
    • 「登録施設介護支援」という新たなケアマネジメント類型の内容
    • 補足給付(所得区分)の見直しで利用者負担はどう変わるか
    • 各制度の施行スケジュールと施設長が今すぐやること

    はじめに:「成立」から「公布」へ。制度改正は今、次のステージにある

    2026年6月19日、介護保険法・社会福祉法・老人福祉法等の改正案が参議院本会議で可決・成立した。

    そして6月25日、改正法が公布された。

    「成立」と「公布」は別物だ。成立は国会での議決が完了した段階。公布は内閣が国民に「法律の内容を知らせる」ために官報に掲載した段階だ。公布されて初めて、施行日のカウントダウンが始まる。

    この改正法には、ケアマネ資格更新制の廃止(本誌既報)に加え、住宅型有料老人ホームの規制強化・過疎地のサービス体制の新たな枠組み・登録施設介護支援の創設・補足給付の見直しなど、介護事業の経営に直結する制度変更が複数盛り込まれている。

    ほとんどの施行は2027年4月以降となるが、「来年の話だから今は関係ない」という判断は危険だ。準備に時間がかかる項目ほど、今から動く施設が先手を取れる。

    今回の改正法の全体像

    今回の改正法のポイントは大きく5つだ。

    改正項目主な内容施行時期
    ①住宅型有料老人ホームの登録制導入中重度者受入施設への事前規制2027年4月〜(予定)
    ②過疎地向け特定地域居宅サービスの創設人員・設備基準の弾力化2027年4月〜(予定)
    ③登録施設介護支援の創設住宅型ホーム入居者向け新ケアマネ類型2027年4月〜(予定)
    ④ケアマネ資格更新制の廃止研修義務化と事業者の受講支援義務2027年4月〜(予定)
    ⑤補足給付の所得区分見直し第3段階②の負担限度額引き上げ2026年8月〜(一部)

    改正①:住宅型有料老人ホームの「登録制」導入

    何が問題だったのか

    住宅型有料老人ホームは、介護付有料老人ホーム(特定施設)と異なり、これまで介護保険制度上の規制が相対的に緩かった。

    その結果、中重度の要介護者を受け入れながら、訪問介護や通所介護を過剰に利用させる「囲い込み」が問題視されてきた。入居者の自由なサービス選択が制限されるケースや、質の低いケアが提供されるケースも指摘されていた。

    「登録制」とはどういうことか

    今回の改正で、中重度の要介護者らを受け入れる住宅型有料老人ホームを対象とした「登録有料老人ホーム」という新たな類型が創設される。

    都道府県への登録を行うことで、一定の基準を満たすことが求められる仕組みだ。登録にあたっては、職員配置・入居者へのケアの質・情報公開などの要件が課される方向で検討が進んでいる。

    施設長が今から準備すべきこと

    自施設が「住宅型有料老人ホーム」として運営している場合、この登録制の影響を受ける可能性がある。今のうちに確認すべきことは以下の2点だ。

    • 入居者の要介護度の分布を把握する(中重度者の比率を確認)
    • 訪問介護・通所介護の利用実績を点検し、「囲い込み」と疑われる運用がないか確認する

    詳細な登録要件は今後省令で定められるため、都道府県からの通知を継続的に確認してほしい。

    改正②:過疎地向け「特定地域居宅サービス」の創設

    過疎地の現実

    中山間・人口減少地域では、利用者が少なく事業として成立しにくい。現行の人員・設備基準では、事業所の維持が困難になりつつある地域が全国に広がっている。

    「近くの事業所が閉鎖して、サービスを受けられなくなった」という高齢者が増え続けている現実に、制度が対応しきれていない状況だった。

    「特定地域居宅サービス」とは何か

    今回の改正で、中山間・人口減少地域を対象に「特定地域居宅サービス」という新たな枠組みが創設される。市町村の条例に基づき、通常の人員・設備基準を弾力化して運営することが認められる仕組みだ。これにより、過疎地でも柔軟なサービス提供が可能になる。

    過疎地で事業を展開する法人へ

    自法人が過疎地・中山間地域でサービスを展開している場合、この新枠組みは今後の経営戦略に直結する。条例に基づく基準緩和の詳細は市町村・都道府県が定める。自地域の市町村の検討状況を今から把握しておくことが重要だ。

    改正③:「登録施設介護支援」の創設

    住宅型ホームのケアマネジメントが独立する

    現在、住宅型有料老人ホームの入居者のケアプランは、外部の居宅介護支援事業所のケアマネジャーが作成している。今回の改正で「登録施設介護支援」という新たなケアマネジメント類型が創設される。登録有料老人ホームに特化した、施設内完結型のケアマネジメントの枠組みだ。

    施設長が確認すべきこと

    住宅型有料老人ホームを運営する法人は、この登録施設介護支援がどのように設計されるかを注視する必要がある。施設内でケアプランを完結させる体制が求められる場合、ケアマネジャーの雇用・配置計画に影響が生じる可能性がある。

    省令・告示の詳細が固まる前に、「自施設はどの類型に当てはまるか」を都道府県の担当窓口に早めに相談しておくことを推奨する。

    改正④:ケアマネ資格更新制の廃止(再掲)

    本誌では既に2本の記事で詳しく解説している。ここでは改正全体の文脈での位置づけを整理するにとどめる。

    ケアマネ資格の5年更新制が廃止され、定期的な研修義務に転換される。施行は2027年4月見込み。それまでは現行制度が継続するため、更新時期が近いケアマネがいる事業所は今すぐ確認が必要だ。

    事業者側には、研修受講機会の確保・研修の労働時間化・未受講者への対応など、新たな義務が課される。詳細は関連ガイド(記事末尾)を参照してほしい。

    改正⑤:補足給付の所得区分見直し(2026年8月施行)

    この改正は最も早く現場に影響する

    今回の改正法に含まれる項目の中で、施行時期が最も早いのがこの補足給付の見直しだ。2026年8月1日から、補足給付(低所得者の食費・居住費の負担軽減)の所得区分が見直される。

    具体的に何が変わるか

    これまでの「第3段階」が細分化され、以下のように区分が変わる。

    区分対象者(目安)変更内容
    第1段階生活保護受給者等据え置き
    第2段階年金収入等80万円以下据え置き
    第3段階①年金収入等82.65万円以下据え置き
    第3段階②年金収入等120万円超負担限度額引き上げ

    第3段階②に該当する利用者は、2026年8月から食費・居住費の自己負担が増える。

    施設長が今すぐやること

    ①対象となる利用者を特定する:在籍している利用者・入所者の所得区分を確認し、第3段階②に該当する方を一覧化する。

    ②利用者・家族への説明を準備する:第3段階②に該当する方の家族への説明は、なるべく早く行う。8月1日の直前に説明すると、苦情につながりやすい。7月中に面談・書面説明を完了させることを目標にしてほしい。

    ③重要事項説明書・契約書の改訂:食費・居住費の金額が変わるため、重要事項説明書の改訂と再締結または変更の覚書が必要だ。

    ④請求ソフトの更新確認:介護ソフトが新区分「第3段階②」に対応しているかをベンダーに確認する。

    施設長のための施行スケジュール一覧

    時期内容対応が必要な法人
    2026年8月1日補足給付所得区分見直し特養・老健・介護医療院・ショートステイ
    2027年4月(予定)ケアマネ更新制廃止・新研修制度居宅介護支援事業所・ケアマネを雇用する全事業所
    2027年4月(予定)住宅型有料老人ホームの登録制住宅型有料老人ホーム(中重度者受入)
    2027年4月(予定)特定地域居宅サービス創設過疎地・中山間地域で事業を展開する法人
    2027年4月(予定)登録施設介護支援創設登録有料老人ホームと連携するケアマネ事業所

    施設長の今月確認リスト

    • 補足給付の第3段階②に該当する利用者を特定した
    • 該当利用者・家族への説明資料を7月中に準備する予定を立てた
    • 重要事項説明書の改訂版を作成した(または予定日を決めた)
    • 介護ソフトの新区分対応をベンダーに確認した
    • 自施設が住宅型有料老人ホームの場合、登録制の対象になるか検討した
    • 過疎地・中山間地域で事業展開している場合、市町村の検討状況を確認した
    • ケアマネを雇用している場合、更新時期を一覧化した
    • 2027年4月以降の施行内容について、継続的に情報収集する担当者を決めた

    編集長・深瀬久博からひとこと

    制度改正の情報は、「成立した」「公布された」「施行された」という3つのステージを経て初めて現場に届く。

    多くの施設長は「施行されてから動く」という習慣を持っている。しかし施行日から動き始めると、準備期間がほぼなくなる。

    今回の改正で最も早く現場に来るのは「補足給付の見直し(8月1日)」だ。あと3週間もない。

    住宅型ホームの登録制やケアマネ更新制廃止は来年4月だが、それまでに省令・告示の詳細が固まり、都道府県からの通知が届き、施設として方針を決め、職員に周知する必要がある。

    「来年の話」と思った瞬間に、準備が遅れ始める。

    深瀬久博
    深瀬 久博
    情熱介護 編集長 / 介護現場マネジメント講師