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    制度・報酬改定 2026.09.22 約9分で読了

    認知症の加算、なぜ取れないのか
    2027年度改定の論点と、算定率の低さの裏にある「研修の壁」

    木のテーブルで、職員と高齢者が一緒に洗濯物をたたむ手元
    深瀬久博
    執筆・監修
    深瀬 久博 / 情熱介護 編集長
    精神保健福祉士・社会福祉士・介護支援専門員・介護福祉士・認知症ケア専門士・産業ケアマネ(3級)・ストレスチェック実施者

    特養の入所者のほとんどが、認知症のある方です。夜間の不穏、帰宅願望、介護への抵抗——。日々の対応に、多くの時間と気配りを使っている施設が大半ではないでしょうか。

    それにもかかわらず、認知症ケアを評価する加算を算定している施設は、ごく一部にとどまっています。

    2026年9月3日の社会保障審議会・介護給付費分科会で、認知症への対応力強化が2027年度の介護報酬改定に向けた論点として示されました。資料には、利用者の実態と加算の算定状況の大きなずれや、研修が受けにくいという現場の声が並んでいます。

    この記事では、審議会の資料をもとに、そのデータと論点、施設長が今からできることを整理します。現時点では論点が示された段階で、加算の見直しの方向性は決まっていません。

    9月3日の審議会で示された4つの論点

    厚生労働省が示した論点は、次の4つです。いずれも「どのように考えるか」という問いかけの形で、結論はまだ出ていません。

    1. 認知症の人の意向を尊重した生活を目標に、各サービスで日常生活動作や社会参加の向上につなげるには、どのような方策が考えられるか
    2. 加算の要件になっている、認知症対応力向上のための研修をどのように考えるか
    3. 若年性認知症の人への支援をどのように考えるか
    4. 利用者の分かりやすさや事業所の事務負担軽減の観点から、算定率が低い加算をどのように考えるか

    施設長にとって特に関係が深いのは、2つ目の研修と、4つ目の算定率が低い加算です。

    利用者の多くは認知症、でも加算はほとんど取られていない

    まず、サービスごとの利用者の状況と、主な認知症関連加算の算定状況を並べてみます。

    サービス認知症自立度Ⅲ以上の利用者の割合認知症専門ケア加算(Ⅰ)の算定率認知症チームケア推進加算(Ⅱ)の算定率
    特別養護老人ホーム72.2%5.3%4.6%
    介護老人保健施設51.0%4.0%7.9%
    介護医療院78.7%5.4%5.2%
    認知症グループホーム63.8%18.5%6.0%
    特定施設(介護付き有料老人ホーム等)45.0%0.89%対象外

    ※算定率は事業所ベース(2025年11月審査分)。利用者の割合は2026年3月サービス提供分。認知症専門ケア加算と認知症チームケア推進加算は、同時には算定できません。

    特養では、入所者の7割以上が認知症自立度Ⅲ以上です。それでも、認知症専門ケア加算(Ⅰ)を算定している特養は約5%にとどまっています。上位区分の(Ⅱ)になると、1.2%です。

    2024年度の改定では、認知症の行動・心理症状(BPSD、いわゆる徘徊や興奮、介護への抵抗などの症状)の予防と早期対応を評価する認知症チームケア推進加算が新設されました。しかし、こちらも算定している施設は1割に届いていません。

    審議会の委員からも、以前から「認知症専門ケア加算などの算定状況は非常に低い水準で推移している」「要因を分析し、要件設定の課題を明確にすべき」といった意見が出ていました。

    なぜ取れないのか:現場が挙げた障壁

    認知症チームケア推進加算を算定するうえでの障壁を、施設に聞いた調査結果があります(複数回答)。

    算定の障壁認知症グループホーム特別養護老人ホーム介護老人保健施設
    人手不足であるため40.5%48.9%59.6%
    定期的にカンファレンスを開くことが困難であるため39.7%46.7%51.9%
    認知症介護実践リーダー研修が受講しにくいため14.9%31.1%28.8%
    単位数に対して労力が見合わないため26.4%20.0%23.1%

    ※令和6年度老人保健健康増進等事業「BPSDの予防・軽減を目的としたチームケア推進に関する調査研究」より

    グループホームを対象にした別の調査では、この加算を算定していない理由として「認知症介護指導者養成研修の修了者がいない」が60.6%、「認知症チームケア推進研修の修了者がいない」が58.2%、「認知症介護実践リーダー研修の修了者がいない」が41.2%と、研修修了者がいないことが上位を占めました。

    人がいない、話し合う時間がない、研修に出せない。この3つが重なっていることが分かります。

    加算の要件になっている研修は、受けるハードルが高い

    認知症関連の加算の多くは、特定の研修を修了した職員の配置を要件にしています。主な研修は次のとおりです。

    研修主な受講対象標準的な研修時間主に関係する加算
    認知症介護実践リーダー研修概ね5年以上の実務経験があり、実践者研修を修了して1年以上たった人講義・演習28時間+職場実習4週間など認知症専門ケア加算(Ⅰ)、認知症チームケア推進加算(Ⅱ)
    認知症介護指導者養成研修社会福祉士・介護福祉士等の資格があり、実践研修を修了した人など講義・演習128時間+職場実習5週間認知症専門ケア加算(Ⅱ)、認知症チームケア推進加算(Ⅰ)
    認知症チームケア推進研修指導者養成研修またはリーダー研修の修了者(受講予定を含む)原則eラーニング認知症チームケア推進加算(Ⅰ)(Ⅱ)

    ※認知症チームケア推進加算は、指導者養成研修またはリーダー研修に加えて、チームケア推進研修の修了も必要です。

    実践リーダー研修だけでも、講義・演習に加えて4週間の職場実習があります。受講料の平均は約3.4万円です。人手が足りない中で、中堅の職員をまとまった期間、研修に出すのは簡単ではありません。

    さらに、都道府県などが行う研修の定員は限られています。審議会でも、研修の定員や回数が少なく、受けたくても受けられないという声が出ていました。

    オンライン化も進んでいません。実践リーダー研修を「対面のみ」で行う自治体は、2024年度に7割を超え、前年より増えています。一方で、オンラインを取り入れた研修と集合研修で、学習効果に有意な差は見られなかったという調査結果も示されています。

    こうした状況を受けて、論点の2つ目で研修のあり方が問われています。

    チームケアの効果は出ている

    一方で、チームケアに取り組んだ施設では、はっきりした変化も報告されています。

    特定施設で、チームケア推進研修に沿った取組を8週間行った調査では、BPSDの重症度を測る尺度の平均点が26.47点から14.24点に下がりました(対象17人)。対象は少ないものの、症状の軽減につながったことが示されています。

    利用者だけでなく、職員の変化も報告されています。研修を修了した職員からは、「職員から意見が出るようになった」「チームで情報を共有するようになった」「BPSDは問題行動ではないと理解し、背景を考えて関わるようになった」といった声が寄せられています。

    施設長が今から考えておきたい3つのこと

    算定率が低い加算が今後どう扱われるかは、まだ分かりません。要件が見直される可能性も、整理される可能性もあります。ただ、どちらになっても、認知症ケアの体制を整えておくことに損はありません。

    1. 研修修了者の「今」と「3年後」を把握する

    認知症介護実践者研修、実践リーダー研修、指導者養成研修を、今誰が修了しているか。その職員が異動や退職をしたら、加算の要件を満たせなくなるのではないか。研修の定員が限られている以上、受講は計画的に進める必要があります。自治体の研修の募集時期や、オンラインでの実施状況も、早めに確認しておきたいところです。

    2. 「取れない理由」を分解する

    加算を取っていない場合、その理由は人なのか、研修なのか、カンファレンスの時間なのか。理由によって、打つ手は変わります。研修修了者がいないなら受講計画を、カンファレンスが開けないなら既存の会議の中に時間を確保する方法を、というように、一つずつ切り分けて考えることをおすすめします。

    3. 加算の有無にかかわらず、「チームで話し合う場」をつくる

    チームケアの中身は、利用者の状態を評価し、情報を共有し、ケアを統一し、振り返ることです。加算の要件を満たしていなくても、この流れ自体は今日から始められます。

    認知症ケアのチームは、職員を支えるチームにもなる

    BPSDへの対応は、職員の負担が大きい業務の一つです。一人で抱え込むと、「自分の関わり方が悪いのではないか」と追い詰められることもあります。

    チームケアに取り組んだ施設の職員から「意見が出るようになった」「チームで情報を共有するようになった」という声が上がっていることは、利用者のためだけでなく、職員が一人で抱え込まない職場づくりにもつながることを示しています。

    研修に職員を出す余裕がない、話し合う時間がない。その状況は、採用で人を増やすだけでは解決しません。今いる職員がチームとして支え合える体制をつくることが、認知症ケアの質を高め、職員が働き続けられる職場にもつながると考えます。

    今後、分科会で具体的な方向性が示されたら、情熱介護でも改めてお伝えします。

    この記事の出典

    ※資料1には、介護給付費等実態統計、介護保険総合データベース、令和6年度・令和7年度老人保健健康増進等事業の調査結果等が掲載されています。

    ※本記事は2026年9月時点の審議会資料をもとにしています。制度の内容は今後の議論で変わる可能性があります。加算の算定については、指定権者(都道府県・市区町村)にご確認ください。

    深瀬久博
    この記事を書いた人
    深瀬 久博(情熱介護 編集長)
    重度認知症デイケアでの臨床経験を経て、大手有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅の管理者を歴任。現在は介護現場の管理職・経営層に向けた研修講師として全国に登壇。
    精神保健福祉士・社会福祉士・介護支援専門員・介護福祉士・認知症ケア専門士・産業ケアマネ(3級)・ストレスチェック実施者

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