DWAT(災害派遣福祉チーム)とは何か――介護施設長が知るべき基礎知識・協定加入の実務・職員を派遣する側と受け入れる側の両方の準備
能登半島地震(2024年1月)。東日本大震災。熊本地震――大規模災害のたびに問題になるのが、避難所での要配慮者への支援だ。介護施設は今、DWATに関して「職員を派遣する側」と「受け入れる側」の2つの役割を求められている。

この記事でわかること
- DWATとは何か、誰が・いつ・どこで活動するのか
- 能登半島地震でDWATが果たした役割と課題
- 介護施設が「派遣する側」として関わる方法
- 介護施設が「受け入れる側・被災側」として準備すべきこと
- 都道府県のDWATネットワークへの協定加入手順
- 職員をDWAT登録研修に送り出すための実務
はじめに:「自分には関係ない」が最も危険な認識
能登半島地震(2024年1月)。東日本大震災。熊本地震――
大規模災害のたびに問題になるのが、避難所での要配慮者への支援だ。
高齢者・障害者・認知症の方が避難所で十分なケアを受けられず、要介護度が重度化したり、体調を崩して死亡するケースが相次いできた。
この課題に対応するために生まれたのが、DWAT(災害派遣福祉チーム)だ。
「うちは施設だから、災害時は自施設の利用者を守ることで手いっぱい」――そう思っている施設長も多いだろう。しかし今、介護施設はDWATに関して2つの役割を求められている。
①職員をDWATとして派遣する「送り出す側」
②自施設が被災した際にDWATを「受け入れる側」
この2つの観点から、今から備えておく施設が地域から信頼される施設になる。
DWATとは何か:基本を整理する
定義と目的
DWATとは、Disaster Welfare Assistance Team(災害派遣福祉チーム)の略だ。
大規模災害時に、被災した自治体からの要請を受け、避難所等において要配慮者(高齢者・障害者・子ども等)に対する福祉支援を行う、福祉専門職で構成されたチームだ。
目的は「避難生活により生じる要介護度の重度化や生活機能の低下といった二次被害の防止」だ。
誰が参加するのか
DWATのチーム員として登録できるのは、介護福祉士・社会福祉士・精神保健福祉士・保育士・介護支援専門員(ケアマネジャー)などの福祉専門職だ。
1チームは約5名程度で構成され、所有資格・職種・性別などを考慮してチームが組まれる。約5日間活動して次のチームに交代する「クール制」で運営される。
派遣の仕組み
被災した都道府県知事が自県のDWATで対応できないと判断した場合、他の都道府県に応援を要請する仕組みになっている。
東日本大震災を機に設置の議論が始まり、2022年度に厚生労働省により「災害福祉支援ネットワーク中央センター」が創設された。2025年6月にはDWATガイドラインも改正されており、制度的な整備が進んでいる。
能登半島地震でDWATが果たした役割
過去最大規模の派遣
令和6年1月に発生した能登半島地震では、DWATが大規模に派遣された。全国各地のDWATが石川県に派遣され、避難所での要配慮者支援に当たった。
実際の活動内容は以下のようなものだ。
- 避難者の福祉ニーズの把握・スクリーニング
- 要介護者・認知症の方への応急的な介護支援
- 福祉避難所への移送支援
- 医療・保健スタッフとの連携・情報共有
- 避難所での生活環境整備の提言
課題として浮かび上がったこと
能登半島地震の支援を通じて、いくつかの課題も明らかになった。
①派遣できる人材の絶対数が足りない
DWATに登録している職員の数が、全国的にまだ不足している。特に地方部では、自施設の運営を継続しながら職員を派遣することへのハードルが高い。
②施設側の「受け入れ準備」が不十分
被災した施設にDWATが入ろうとしても、どこに何があるか・誰に連絡すればいいかがわからず、支援が遅れるケースがあった。
③情報連携の課題
避難所・病院・福祉施設・市区町村の間での情報共有が取れず、支援の重複や漏れが生じた。
介護施設が「派遣する側」として関わる方法
STEP 1:都道府県のDWATネットワークに加入する
DWATへの参加は、各都道府県の「災害福祉支援ネットワーク」への加入から始まる。
各都道府県の社会福祉協議会または都道府県の福祉担当課が窓口になっており、施設が加入協定を結ぶことでネットワークの一員となる。
まず自県のDWATネットワークの担当窓口を確認してほしい。
STEP 2:職員をDWAT登録研修に参加させる
DWATのチーム員として活動するためには、各都道府県が実施する「DWAT登録研修」を受講する必要がある。
例えば東京都では、令和8年度の登録研修が2026年8月〜9月に計4回開催予定だ。各都道府県でスケジュールが異なるため、都道府県の社会福祉協議会のウェブサイトを確認してほしい。
研修内容は、DWATの役割・活動の実際・要配慮者への支援技術・チーム運営など多岐にわたる。おおむね1〜2日程度のプログラムだ。
STEP 3:派遣時の施設運営体制を整備する
職員をDWATとして派遣する場合、その期間の施設運営をどう維持するかが課題になる。
あらかじめ以下を決めておくことを推奨する。
- 誰をDWAT派遣の対象者とするか(資格・経験年数・家庭環境を考慮)
- 派遣中のシフト補充の方法
- 派遣職員の給与・手当の取り扱い
- 派遣期間中の緊急連絡体制
施設運営に支障が生じない範囲で参加することが前提だ。無理な派遣は自施設の利用者への影響を生む。
介護施設が「受け入れる側」として準備すべきこと
被災時にDWATを受け入れる準備
自施設が被災した際、DWATが支援に来てくれるケースがある。この支援を最大限に活かすために、以下の準備をしておくことを推奨する。
施設の情報を整理して「見える化」する
DWATが来た際に、以下の情報をすぐに共有できる状態にしておく。
- 施設の見取り図・各部屋の配置
- 入所者の状態一覧(要介護度・疾患・服薬・緊急連絡先)
- 備蓄品の場所と数量
- 施設の担当者・連絡先
BCPとの連携
DWATへの受け入れ体制は、BCPの中に組み込んでおくことが理想だ。BCP策定済みの施設は「外部支援者の受け入れ手順」の章にDWATへの対応を明記してほしい。
BCP未策定の施設は、まずBCPの作成が先決だ。
施設長の今から確認リスト
- 自県のDWATネットワークの担当窓口を確認した
- 自法人がDWATネットワークに加入しているか確認した
- DWAT登録研修のスケジュールを都道府県社協のウェブサイトで確認した
- DWATとして派遣できる職員候補を確認した
- 派遣中の施設運営体制を検討した
- 自施設のBCPに「外部支援者受け入れ手順」が記載されているか確認した
- 施設情報(見取り図・入所者状態一覧・備蓄品)を最新状態に整備した
編集長・深瀬久博からひとこと
DWATへの参加は、地域の中での介護施設の役割を問い直す機会でもある。
「自施設の利用者を守る」だけでは、これからの時代は足りない。地域で災害が起きたとき、介護施設が福祉の専門機関として何ができるかを問われるようになっている。
一方で、無理な派遣は自施設の崩壊を招く。自施設の安定を前提とした上で、地域への貢献を考えてほしい。
まず、自県のDWATネットワークの窓口を調べるところから始めてほしい。それだけで、地域との関係が一歩前進する。