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    採用・人材戦略 2026.05.21 約18分で読了

    【2026年最新】介護事業所の
    外国人人材活用 完全ガイド
    ――EPA・技能実習・特定技能の選び方と、定着率90%超の受入れ実践法

    『求人を出しても応募がない』『やっと採用できても、すぐに辞めてしまう』――この一行に、2026年の介護経営の現実が凝縮されています。外国人介護人材は、もはや『選択肢のひとつ』ではなく、事業所の存続を左右する経営判断になりました。本記事では、EPA・技能実習・特定技能の3制度を、5年間の総コスト・受入れ要件・転職可否まで横並びで整理し、定着率90%超を実現している施設の受入れ5ステップを、編集長・深瀬久博が経営者目線で解説します。

    介護施設のリビングで、東南アジア系の介護職員と日本人職員が高齢女性をやさしく支えている明るい場面
    深瀬久博
    執筆
    深瀬 久博 / 情熱介護 編集長
    介護福祉士・社会福祉士・認知症ケア専門士・産業ケアマネ(3級)・ストレスチェック実施者
    編集長より外国人材を『安く使える人手』として迎え入れた施設は、ほぼ例外なく失敗します。逆に『この人の人生を、私たちの事業所で何年か預かる』という姿勢で迎え入れた施設は、定着率90%超を当たり前のように出しています。違いは制度ではなく、受け入れる側の覚悟です。本記事は、その覚悟を制度・コスト・運用に落とし込むためのガイドです。

    1. 2026年、外国人介護人材の『現在地』

    受入れ数は約7.4万人、特定技能が急伸

    厚生労働省「外国人介護人材受入れの実態に関する調査」(2024年12月時点)によれば、介護分野で働く外国人材の総数は約74,000名に達しています。とくに伸びが顕著なのは特定技能(介護)で、約44,367名・前年比+35%という拡大ペース。2019年の制度開始からわずか5〜6年で、技能実習・EPAを大きく引き離し、外国人介護人材の主流ルートになりました。

    制度受入れ人数前年比
    特定技能(介護)44,367名+35%
    技能実習(介護)15,909名+12%
    EPA(経済連携協定)3,252名+8%
    在留資格「介護」10,468名+15%
    合計約74,000名+28%
    出典:厚生労働省「外国人介護人材受入れの実態に関する調査」(2024年12月)

    『すぐ辞める』は思い込み――離職率は日本人より低い

    『外国人材は定着しない』という先入観は、データの上では否定されています。厚労省「介護労働実態調査」(2024年度)によれば、特定技能外国人(介護)の離職率は10.6%。日本人介護職員全体の12.4%より、約2ポイント低い水準です。

    離職理由の上位は、『家族の病気・介護』『寮の人間関係』『生活環境のミスマッチ』。『給与が低い』『仕事がきつい』は上位に入りません。つまり、辞める理由は仕事ではなく、生活支援の不備です。受入れ体制さえ整えれば、外国人材は日本人以上に定着し得る――これが本記事の出発点です。

    約7.4万人
    介護分野で働く外国人材の総数(2024年12月)
    出典:厚労省 受入れ実態調査
    10.6%
    特定技能外国人(介護)の離職率(2024年度)
    出典:厚労省 介護労働実態調査
    44.2%
    ベトナム籍の構成比(外国人介護人材全体)
    出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティング
    外国人材は『辞めない』。
    辞めるのは、生活が孤独になったときだ。

    2. EPA・技能実習・特定技能の、完全比較

    3制度の基本比較

    項目EPA技能実習特定技能
    目的経済連携の強化技能移転・国際貢献人材不足分野の労働力確保
    対象国インドネシア・フィリピン・ベトナム多数(主にアジア)多数(主にアジア)
    在留期間最長4年(受験準備含む)最長5年(3年+2年)最長5年(更新可)
    日本語要件N5程度(入国時)N4程度(2号移行時)N4以上+介護技能評価試験合格
    転職不可不可(原則)可能(同一業種内)
    介護福祉士受験可能(推奨)可能可能
    家族帯同不可不可不可
    人数制限なしあり(常勤数に応じた枠)なし
    受入れ期間6〜12ヶ月4〜8ヶ月2〜4ヶ月
    補足:特定技能2号(介護分野)の追加2024年6月の閣議決定により、介護分野も特定技能2号の対象に追加されました。1号で通算5年を経過する前に2号へ移行できれば、在留期間の更新に上限がなく、家族帯同も可能になります。事実上の長期就労ルートが特定技能側にも開かれた点は、3制度の選択判断に大きく影響します(移行には所定の試験・実務経験要件あり)。

    各制度のメリット・デメリット

    ▼ EPA(経済連携協定)――政府間協定に基づく公的制度で、JICWELS等の公的機関のサポートが手厚い。介護福祉士資格取得を前提とした長期育成が可能で、資格を取れば在留資格『介護』で永続的に雇用できます。ただし、受入れまで6〜12ヶ月、4年以内に介護福祉士試験に合格できなければ帰国――『長期育成にコミットできる法人向き』の制度です。

    ▼ 技能実習――監理団体のサポートが手厚く、初めての受入れでも安心。入国前に日本語・介護基礎の研修が済んでいます。一方で初期費用・年間費用ともに3制度の中で最も高額。『初めて外国人を受け入れる小規模事業所』『地方で採用競争が激しくない地域』向き。

    ▼ 特定技能――即戦力(日本語N4以上+介護技能評価試験合格済)で、人数制限なし、受入れまで2〜4ヶ月。コスト効率も最良。一方で『転職可能』のため、職場環境が悪ければ流出します。『選ばれ続ける施設』をつくる覚悟がある事業所に最も向きます。

    5年間の総コスト比較(1名あたり)

    給与18万円/月(社保込22万円)、住居費補助3万円/月、生活支援・研修費10万円/年を前提に、3制度の総コストを試算します。

    制度初期費用年間費用総額
    EPA約150万円約330万円約1,470万円(4年)
    技能実習140〜170万円350〜380万円約1,960万円(5年)
    特定技能60〜95万円325〜330万円約1,720万円(5年)
    ※給与・社会保険料、住居費補助、紹介料・監理費・調整費等を含む試算値。実際の費用は受入れ機関・地域により変動します。
    編集長メモ:コストの読み方『特定技能が最安』『EPAは4年で短い』というだけで判断するのは早計です。EPAは介護福祉士に合格すれば、その後は在留資格『介護』で永続雇用が可能。10年スパンで見れば、もっとも『腰を据えて働いてくれる』可能性が高いのはEPAです。コストは『単年』ではなく『定着年数で割った1年あたり』で見るべきです。

    3. あなたの事業所に最適な制度の、選び方

    タイプA:初めて受け入れる小規模事業所 → 技能実習

    監理団体のサポートが手厚く、入国前研修も充実。転職不可のため育成投資が無駄にならないのが強みです。ただし初期・年間費用は最も高額。『費用は払うので、手間と不安を抑えたい』と考える小規模事業所に向きます。

    タイプB:即戦力を複数名同時に → 特定技能

    日本語N4+介護技能評価試験合格済みで、入職直後から夜勤シフトにも入れる即戦力。受入れまで2〜4ヶ月、人数制限なし。職場環境を整えられる中〜大規模施設に最も向く制度です。

    タイプC:長期育成・介護福祉士まで伴走 → EPA

    介護福祉士資格取得を前提に、長期育成できる法人向き。資格取得後は在留資格『介護』で永続雇用が可能で、将来のリーダー候補として育てたい場合の最有力選択肢になります。

    制度選択フローチャート
    1. Q1. 初めて外国人材を受け入れる? YES → 技能実習
    2. Q2. 即戦力で複数名を同時に採用したい? YES → 特定技能
    3. Q3. 介護福祉士までサポートできる体制がある? YES → EPA
    4. いずれもNOなら → 特定技能(最も柔軟・コスト効率が良い)

    4. 定着率90%超を実現する、受入れ5ステップ

    介護施設の面談スペースで、ベテラン日本人職員がベトナム人介護職員と1対1のメンタリング面談をしている場面
    毎日15分の振り返り面談が、半年後の定着率を変える。

    STEP 1:入職前の準備(受入れ1ヶ月前)

    メンター職員を1名選定し、異文化理解研修を事前に実施します。寮または借り上げ住宅の手配、家具・家電・寝具・Wi-Fi等の生活インフラ整備、翻訳アプリ/多言語マニュアルの導入、全職員への『やさしい日本語』研修――この4点を仕込んでおきます。受入れの成否は、入職前の1ヶ月で半分決まります。

    STEP 2:入職直後のオリエンテーション(入職後1週間)

    初日は業務に入れません。銀行口座開設、役所手続き、ゴミ出しルール、近隣スーパー・病院・役所の場所案内、携帯契約サポート――生活面の不安をゼロにすることに、まる1日を使います。『仕事以外の不安をゼロにする』ことで、業務に集中できる土台ができます。

    STEP 3:メンター制度の運用(入職後3ヶ月)

    メンター職員と毎日15分の振り返り面談、施設長または管理者との週1回の個別面談、勤務時間内の週1回の日本語教室。メンターには『外国人材受入れリーダー』として月5,000円程度の手当を支給するのが効果的です。手当があると、メンター自身のモチベーションが変わります。

    STEP 4:文化交流イベントの実施(入職後6ヶ月)

    月1回の文化交流イベント(母国料理紹介会、日本の四季行事への参加)、宗教・文化への配慮(イスラム教徒の礼拝時間・ハラル食、ラマダン期間中の勤務調整)、地域行事への参加。利用者にも『海外から来てくれた職員』として歓迎される空気を、施設全体でつくります。

    STEP 5:キャリアパスの明確化(入職後1年)

    介護福祉士受験対策講座の開催、受験費用全額補助、合格祝い金の支給、資格取得後の昇給(月額2万円〜)、リーダー職への登用、永住を希望する場合のサポート。『5年後、10年後のキャリアプランを一緒に考える』ことが、最大の定着施策です。

    定着率90%超の3つの共通点
    1. 業務面だけでなく、生活面のサポートを徹底する
    2. メンター職員を明確に任命し、責任と権限と手当を与える
    3. 文化交流イベントを通じて、職場全体で受け入れる雰囲気をつくる

    5. 国籍別の特性と、受入れのポイント

    デイサービスの食卓で、インドネシア人女性職員が母国料理を高齢者にふるまっている場面
    『母国の味』が、利用者と職員の距離をいちばん縮める。
    VIETNAM / 44.2%
    ベトナム

    若年層が多く学習意欲が高い。真面目で勤勉、日本語習得も比較的早い。家族を大切にする文化。

    配慮:明確な指示を出す/家族との連絡時間を確保/テト(旧正月)の長期休暇に配慮

    INDONESIA / 23.0%
    インドネシア

    イスラム教徒が大半。おおらかでフレンドリー。EPA制度での受入れ実績が豊富。

    配慮:礼拝時間(1日5回×5〜10分)の確保/ハラル食・豚肉アルコール不可/ラマダン期間中の勤務調整

    PHILIPPINES / 9.3%
    フィリピン

    英語が堪能、ホスピタリティ意識が高い。看護師資格保有者が多く、家族への送金意識が強い。

    配慮:英語併用での説明/キャリアアップ機会の提示/送金しやすい給与体系(前払い等)

    6. 助成金・補助金を、最大限活用する

    国の助成金:人材確保等支援助成金(最大80万円/事業所)

    厚労省『人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)』は、就業規則・社内マニュアルの多言語化、相談体制の整備、一時帰国休暇制度の導入、多言語案内標識の設置などが対象。最大80万円/事業所が支給されます。要件は『外国人労働者を雇用していること』『就労環境整備計画を作成し都道府県労働局の認定を受けること』『計画実施後の離職率が15%以下』。

    都道府県の補助金(例)

    • 神奈川県:外国人介護人材受入施設環境整備事業(最大20万円/施設)。学習教材・翻訳機器・日本語教室費用が対象。
    • 山梨県:外国人介護人材受入支援事業(日本語学校学費60万円/年、生活費36万円/年、介護福祉士養成施設学費60万円、入学・就職準備金各20万円ほか)。
    • 静岡県:外国人介護人材受入環境整備事業(補助率2/3、最大30万円/施設)。日本語学習・介護技術向上研修・生活支援が対象。
    編集長メモ:助成金の落とし穴『計画実施後の離職率15%以下』という要件は、計画書を出すときに『定着施策』が具体化されていないと、絵に描いた餅になります。本記事の『定着率90%超の5ステップ』を申請書の添付資料として使うイメージで、計画段階から落とし込んでおきましょう。

    7. 規模・サービス別、受入れの実装パターン

    小規模デイサービス・訪問介護(職員10名前後)

    技能実習1〜2名からが現実的。監理団体のサポートを活用し、メンターは管理者本人が兼務。助成金は『就業規則の多言語化』『相談窓口の整備』を中心に最大80万円を狙います。

    中規模特養・老健(職員30〜50名)

    特定技能2〜5名+技能実習1〜2名のハイブリッドが王道。即戦力と長期育成のバランスが取れ、夜勤シフトの安定化に直結します。メンターは現場リーダー2名体制で運用。

    大規模法人(複数事業所・職員100名超)

    EPA・特定技能・在留資格『介護』の3層構造が理想形。EPA組を将来のリーダー候補として育てつつ、特定技能組で現場を回す。法人本部に『外国人材受入れ担当』を専任で置き、複数事業所をまたいで生活支援・キャリア支援を一元化します。

    8. よくある失敗と、回避法

    失敗① 『安い人手』として迎え入れてしまった

    『日本人より安く雇える』という発想で受け入れた施設は、ほぼ確実に1年以内に離職されます。外国人材も日本人材と同等の給与・処遇が大原則。むしろ生活支援・住居補助・研修コストを含めれば、総額は日本人を上回ることもあります。

    失敗② 生活支援を『業務外』として放置した

    銀行口座、役所手続き、医療機関――『プライベートだから』と任せた結果、孤立して離職するパターンが頻発します。入職後3ヶ月は『生活支援も業務』と位置づけ、メンターの勤務時間内に組み込みます。

    失敗③ 文化・宗教への配慮が後手に回った

    イスラム教徒の礼拝時間、ハラル食、ラマダン期間の勤務調整――『あとで考える』では信頼関係が壊れます。受入れ前に必ず確認し、勤務シフト・休憩室・食堂運用を事前設計しておきます。

    9. 今すぐやるべき、3つのアクション

    No.アクション期限効果
    013制度の中から自施設に合う制度を1つ決め、複数の受入れ機関・監理団体・登録支援機関へ見積依頼する今週中制度選択の起点
    02受入れ担当者・メンター職員を選定し、異文化理解研修を実施する1ヶ月以内定着率の土台づくり
    03厚労省『人材確保等支援助成金』および所管都道府県の補助金を調査し、申請計画を立てる2ヶ月以内受入れコスト圧縮

    10. 受入れ前の、施設長チェックリスト

    • 3制度(EPA/技能実習/特定技能)の違いを理解し、自施設に最適な制度を選定した
    • 複数の受入れ機関・監理団体・登録支援機関から相見積を取得した
    • 5年間の総コストを試算し、経営計画に組み込んだ
    • 受入れ担当者・メンター職員を選定し、異文化理解研修を実施した
    • 寮・借り上げ住宅・生活必需品・Wi-Fi環境を準備した
    • 翻訳アプリ・多言語マニュアル・『やさしい日本語』運用ルールを整備した
    • メンター手当(月5,000円程度)・週1面談・週1日本語教室の運用ルールを定めた
    • 文化・宗教への配慮(礼拝時間・ハラル食・ラマダン等)を事前設計した
    • 介護福祉士受験対策・合格祝い金・資格取得後の昇給制度を明文化した
    • 『人材確保等支援助成金』の申請要件と所管自治体の補助金制度を確認した
    編集長より、最後に外国人材を迎え入れるとき、私たちは『人手不足を埋める』のではなく、『その人の数年間の人生を預かる』のだという覚悟を持ちたい。その覚悟さえあれば、制度はあとから付いてきます。あなたの施設が、外国人材にとって『日本で働いて本当によかった』と思える場所になることを、心から願っています。

    11. 参考資料・出典

    1. 厚生労働省「外国人介護人材受入れの実態に関する調査」(2024年12月)
    2. 厚生労働省「介護労働実態調査」(2024年度)
    3. 三菱UFJリサーチ&コンサルティング「外国人介護人材に関する調査研究」(2025年6月)
    4. 厚生労働省「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」
    5. 公益社団法人 国際厚生事業団(JICWELS)「EPA介護福祉士候補者受入れ事業」
    6. 外国人技能実習機構(OTIT/旧JITCO関連)「介護職種に関する技能実習」関連通知
    7. 各都道府県(神奈川県・山梨県・静岡県ほか)「外国人介護人材受入支援事業」実施要綱

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    本記事の制度概要・受入れ人数・離職率・コスト試算・助成金等は、厚生労働省、JICWELS、各都道府県、各種公的調査の公表資料に基づき2026年5月時点の情報を整理したものです。実際の受入れ・申請にあたっては、所管自治体担当課、監理団体、登録支援機関、社会保険労務士、行政書士等の専門家への個別相談をあわせてご活用ください。