【2026年最新】介護事業所の
外国人人材活用 完全ガイド
――EPA・技能実習・特定技能の選び方と、定着率90%超の受入れ実践法
『求人を出しても応募がない』『やっと採用できても、すぐに辞めてしまう』――この一行に、2026年の介護経営の現実が凝縮されています。外国人介護人材は、もはや『選択肢のひとつ』ではなく、事業所の存続を左右する経営判断になりました。本記事では、EPA・技能実習・特定技能の3制度を、5年間の総コスト・受入れ要件・転職可否まで横並びで整理し、定着率90%超を実現している施設の受入れ5ステップを、編集長・深瀬久博が経営者目線で解説します。

1. 2026年、外国人介護人材の『現在地』
受入れ数は約7.4万人、特定技能が急伸
厚生労働省「外国人介護人材受入れの実態に関する調査」(2024年12月時点)によれば、介護分野で働く外国人材の総数は約74,000名に達しています。とくに伸びが顕著なのは特定技能(介護)で、約44,367名・前年比+35%という拡大ペース。2019年の制度開始からわずか5〜6年で、技能実習・EPAを大きく引き離し、外国人介護人材の主流ルートになりました。
| 制度 | 受入れ人数 | 前年比 |
|---|---|---|
| 特定技能(介護) | 44,367名 | +35% |
| 技能実習(介護) | 15,909名 | +12% |
| EPA(経済連携協定) | 3,252名 | +8% |
| 在留資格「介護」 | 10,468名 | +15% |
| 合計 | 約74,000名 | +28% |
『すぐ辞める』は思い込み――離職率は日本人より低い
『外国人材は定着しない』という先入観は、データの上では否定されています。厚労省「介護労働実態調査」(2024年度)によれば、特定技能外国人(介護)の離職率は10.6%。日本人介護職員全体の12.4%より、約2ポイント低い水準です。
離職理由の上位は、『家族の病気・介護』『寮の人間関係』『生活環境のミスマッチ』。『給与が低い』『仕事がきつい』は上位に入りません。つまり、辞める理由は仕事ではなく、生活支援の不備です。受入れ体制さえ整えれば、外国人材は日本人以上に定着し得る――これが本記事の出発点です。
外国人材は『辞めない』。
辞めるのは、生活が孤独になったときだ。
2. EPA・技能実習・特定技能の、完全比較
3制度の基本比較
| 項目 | EPA | 技能実習 | 特定技能 |
|---|---|---|---|
| 目的 | 経済連携の強化 | 技能移転・国際貢献 | 人材不足分野の労働力確保 |
| 対象国 | インドネシア・フィリピン・ベトナム | 多数(主にアジア) | 多数(主にアジア) |
| 在留期間 | 最長4年(受験準備含む) | 最長5年(3年+2年) | 最長5年(更新可) |
| 日本語要件 | N5程度(入国時) | N4程度(2号移行時) | N4以上+介護技能評価試験合格 |
| 転職 | 不可 | 不可(原則) | 可能(同一業種内) |
| 介護福祉士受験 | 可能(推奨) | 可能 | 可能 |
| 家族帯同 | 不可 | 不可 | 不可 |
| 人数制限 | なし | あり(常勤数に応じた枠) | なし |
| 受入れ期間 | 6〜12ヶ月 | 4〜8ヶ月 | 2〜4ヶ月 |
各制度のメリット・デメリット
▼ EPA(経済連携協定)――政府間協定に基づく公的制度で、JICWELS等の公的機関のサポートが手厚い。介護福祉士資格取得を前提とした長期育成が可能で、資格を取れば在留資格『介護』で永続的に雇用できます。ただし、受入れまで6〜12ヶ月、4年以内に介護福祉士試験に合格できなければ帰国――『長期育成にコミットできる法人向き』の制度です。
▼ 技能実習――監理団体のサポートが手厚く、初めての受入れでも安心。入国前に日本語・介護基礎の研修が済んでいます。一方で初期費用・年間費用ともに3制度の中で最も高額。『初めて外国人を受け入れる小規模事業所』『地方で採用競争が激しくない地域』向き。
▼ 特定技能――即戦力(日本語N4以上+介護技能評価試験合格済)で、人数制限なし、受入れまで2〜4ヶ月。コスト効率も最良。一方で『転職可能』のため、職場環境が悪ければ流出します。『選ばれ続ける施設』をつくる覚悟がある事業所に最も向きます。
5年間の総コスト比較(1名あたり)
給与18万円/月(社保込22万円)、住居費補助3万円/月、生活支援・研修費10万円/年を前提に、3制度の総コストを試算します。
| 制度 | 初期費用 | 年間費用 | 総額 |
|---|---|---|---|
| EPA | 約150万円 | 約330万円 | 約1,470万円(4年) |
| 技能実習 | 140〜170万円 | 350〜380万円 | 約1,960万円(5年) |
| 特定技能 | 60〜95万円 | 325〜330万円 | 約1,720万円(5年) |
3. あなたの事業所に最適な制度の、選び方
タイプA:初めて受け入れる小規模事業所 → 技能実習
監理団体のサポートが手厚く、入国前研修も充実。転職不可のため育成投資が無駄にならないのが強みです。ただし初期・年間費用は最も高額。『費用は払うので、手間と不安を抑えたい』と考える小規模事業所に向きます。
タイプB:即戦力を複数名同時に → 特定技能
日本語N4+介護技能評価試験合格済みで、入職直後から夜勤シフトにも入れる即戦力。受入れまで2〜4ヶ月、人数制限なし。職場環境を整えられる中〜大規模施設に最も向く制度です。
タイプC:長期育成・介護福祉士まで伴走 → EPA
介護福祉士資格取得を前提に、長期育成できる法人向き。資格取得後は在留資格『介護』で永続雇用が可能で、将来のリーダー候補として育てたい場合の最有力選択肢になります。
- Q1. 初めて外国人材を受け入れる? YES → 技能実習
- Q2. 即戦力で複数名を同時に採用したい? YES → 特定技能
- Q3. 介護福祉士までサポートできる体制がある? YES → EPA
- いずれもNOなら → 特定技能(最も柔軟・コスト効率が良い)
4. 定着率90%超を実現する、受入れ5ステップ

STEP 1:入職前の準備(受入れ1ヶ月前)
メンター職員を1名選定し、異文化理解研修を事前に実施します。寮または借り上げ住宅の手配、家具・家電・寝具・Wi-Fi等の生活インフラ整備、翻訳アプリ/多言語マニュアルの導入、全職員への『やさしい日本語』研修――この4点を仕込んでおきます。受入れの成否は、入職前の1ヶ月で半分決まります。
STEP 2:入職直後のオリエンテーション(入職後1週間)
初日は業務に入れません。銀行口座開設、役所手続き、ゴミ出しルール、近隣スーパー・病院・役所の場所案内、携帯契約サポート――生活面の不安をゼロにすることに、まる1日を使います。『仕事以外の不安をゼロにする』ことで、業務に集中できる土台ができます。
STEP 3:メンター制度の運用(入職後3ヶ月)
メンター職員と毎日15分の振り返り面談、施設長または管理者との週1回の個別面談、勤務時間内の週1回の日本語教室。メンターには『外国人材受入れリーダー』として月5,000円程度の手当を支給するのが効果的です。手当があると、メンター自身のモチベーションが変わります。
STEP 4:文化交流イベントの実施(入職後6ヶ月)
月1回の文化交流イベント(母国料理紹介会、日本の四季行事への参加)、宗教・文化への配慮(イスラム教徒の礼拝時間・ハラル食、ラマダン期間中の勤務調整)、地域行事への参加。利用者にも『海外から来てくれた職員』として歓迎される空気を、施設全体でつくります。
STEP 5:キャリアパスの明確化(入職後1年)
介護福祉士受験対策講座の開催、受験費用全額補助、合格祝い金の支給、資格取得後の昇給(月額2万円〜)、リーダー職への登用、永住を希望する場合のサポート。『5年後、10年後のキャリアプランを一緒に考える』ことが、最大の定着施策です。
- 業務面だけでなく、生活面のサポートを徹底する
- メンター職員を明確に任命し、責任と権限と手当を与える
- 文化交流イベントを通じて、職場全体で受け入れる雰囲気をつくる
5. 国籍別の特性と、受入れのポイント

若年層が多く学習意欲が高い。真面目で勤勉、日本語習得も比較的早い。家族を大切にする文化。
配慮:明確な指示を出す/家族との連絡時間を確保/テト(旧正月)の長期休暇に配慮
イスラム教徒が大半。おおらかでフレンドリー。EPA制度での受入れ実績が豊富。
配慮:礼拝時間(1日5回×5〜10分)の確保/ハラル食・豚肉アルコール不可/ラマダン期間中の勤務調整
英語が堪能、ホスピタリティ意識が高い。看護師資格保有者が多く、家族への送金意識が強い。
配慮:英語併用での説明/キャリアアップ機会の提示/送金しやすい給与体系(前払い等)
6. 助成金・補助金を、最大限活用する
国の助成金:人材確保等支援助成金(最大80万円/事業所)
厚労省『人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)』は、就業規則・社内マニュアルの多言語化、相談体制の整備、一時帰国休暇制度の導入、多言語案内標識の設置などが対象。最大80万円/事業所が支給されます。要件は『外国人労働者を雇用していること』『就労環境整備計画を作成し都道府県労働局の認定を受けること』『計画実施後の離職率が15%以下』。
都道府県の補助金(例)
- 神奈川県:外国人介護人材受入施設環境整備事業(最大20万円/施設)。学習教材・翻訳機器・日本語教室費用が対象。
- 山梨県:外国人介護人材受入支援事業(日本語学校学費60万円/年、生活費36万円/年、介護福祉士養成施設学費60万円、入学・就職準備金各20万円ほか)。
- 静岡県:外国人介護人材受入環境整備事業(補助率2/3、最大30万円/施設)。日本語学習・介護技術向上研修・生活支援が対象。
7. 規模・サービス別、受入れの実装パターン
小規模デイサービス・訪問介護(職員10名前後)
技能実習1〜2名からが現実的。監理団体のサポートを活用し、メンターは管理者本人が兼務。助成金は『就業規則の多言語化』『相談窓口の整備』を中心に最大80万円を狙います。
中規模特養・老健(職員30〜50名)
特定技能2〜5名+技能実習1〜2名のハイブリッドが王道。即戦力と長期育成のバランスが取れ、夜勤シフトの安定化に直結します。メンターは現場リーダー2名体制で運用。
大規模法人(複数事業所・職員100名超)
EPA・特定技能・在留資格『介護』の3層構造が理想形。EPA組を将来のリーダー候補として育てつつ、特定技能組で現場を回す。法人本部に『外国人材受入れ担当』を専任で置き、複数事業所をまたいで生活支援・キャリア支援を一元化します。
8. よくある失敗と、回避法
失敗① 『安い人手』として迎え入れてしまった
『日本人より安く雇える』という発想で受け入れた施設は、ほぼ確実に1年以内に離職されます。外国人材も日本人材と同等の給与・処遇が大原則。むしろ生活支援・住居補助・研修コストを含めれば、総額は日本人を上回ることもあります。
失敗② 生活支援を『業務外』として放置した
銀行口座、役所手続き、医療機関――『プライベートだから』と任せた結果、孤立して離職するパターンが頻発します。入職後3ヶ月は『生活支援も業務』と位置づけ、メンターの勤務時間内に組み込みます。
失敗③ 文化・宗教への配慮が後手に回った
イスラム教徒の礼拝時間、ハラル食、ラマダン期間の勤務調整――『あとで考える』では信頼関係が壊れます。受入れ前に必ず確認し、勤務シフト・休憩室・食堂運用を事前設計しておきます。
9. 今すぐやるべき、3つのアクション
| No. | アクション | 期限 | 効果 |
|---|---|---|---|
| 01 | 3制度の中から自施設に合う制度を1つ決め、複数の受入れ機関・監理団体・登録支援機関へ見積依頼する | 今週中 | 制度選択の起点 |
| 02 | 受入れ担当者・メンター職員を選定し、異文化理解研修を実施する | 1ヶ月以内 | 定着率の土台づくり |
| 03 | 厚労省『人材確保等支援助成金』および所管都道府県の補助金を調査し、申請計画を立てる | 2ヶ月以内 | 受入れコスト圧縮 |
10. 受入れ前の、施設長チェックリスト
- 3制度(EPA/技能実習/特定技能)の違いを理解し、自施設に最適な制度を選定した
- 複数の受入れ機関・監理団体・登録支援機関から相見積を取得した
- 5年間の総コストを試算し、経営計画に組み込んだ
- 受入れ担当者・メンター職員を選定し、異文化理解研修を実施した
- 寮・借り上げ住宅・生活必需品・Wi-Fi環境を準備した
- 翻訳アプリ・多言語マニュアル・『やさしい日本語』運用ルールを整備した
- メンター手当(月5,000円程度)・週1面談・週1日本語教室の運用ルールを定めた
- 文化・宗教への配慮(礼拝時間・ハラル食・ラマダン等)を事前設計した
- 介護福祉士受験対策・合格祝い金・資格取得後の昇給制度を明文化した
- 『人材確保等支援助成金』の申請要件と所管自治体の補助金制度を確認した
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11. 参考資料・出典
- 厚生労働省「外国人介護人材受入れの実態に関する調査」(2024年12月)
- 厚生労働省「介護労働実態調査」(2024年度)
- 三菱UFJリサーチ&コンサルティング「外国人介護人材に関する調査研究」(2025年6月)
- 厚生労働省「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」
- 公益社団法人 国際厚生事業団(JICWELS)「EPA介護福祉士候補者受入れ事業」
- 外国人技能実習機構(OTIT/旧JITCO関連)「介護職種に関する技能実習」関連通知
- 各都道府県(神奈川県・山梨県・静岡県ほか)「外国人介護人材受入支援事業」実施要綱
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本記事の制度概要・受入れ人数・離職率・コスト試算・助成金等は、厚生労働省、JICWELS、各都道府県、各種公的調査の公表資料に基づき2026年5月時点の情報を整理したものです。実際の受入れ・申請にあたっては、所管自治体担当課、監理団体、登録支援機関、社会保険労務士、行政書士等の専門家への個別相談をあわせてご活用ください。