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    経営・制度・改定動向 2026.05.22 約20分で読了

    2027年度 介護報酬改定 大予測
    ――過去3回の傾向から読む、加算再編・ICT義務化・処遇改善・在宅シフトの行方

    2027年度の次期介護報酬改定(同時改定:診療報酬・障害福祉サービス報酬と3年に1度の同年改定にあたる本丸)に向け、社会保障審議会・介護給付費分科会、財政制度等審議会、内閣府『骨太の方針』の議論はすでに本格化しています。本記事では、2018/2021/2024年度の過去3回改定に通底する流れを読み解いたうえで、加算再編・ICT/LIFE義務化・処遇改善・在宅シフト・基本報酬調整という5つの予測軸を提示。経営者・施設長が今からの2年間で打つべき先手を、編集長・深瀬久博が整理します。

    介護施設の経営者が壁一面に貼られた制度資料と統計グラフを見ながら、改定に思考を巡らせている場面
    深瀬久博
    執筆
    深瀬 久博 / 情熱介護 編集長
    介護福祉士・社会福祉士・認知症ケア専門士・産業ケアマネ(3級)・ストレスチェック実施者
    編集長より介護報酬改定は『答え合わせ』ではなく、『次の3年の経営戦略書』です。改定が出てから動く事業所と、改定の2年前から動く事業所とで、3年後の体力はまったく別物になります。本記事は『2027年に何が起きるか』ではなく、『2026〜2027年にあなたは何をしておくべきか』を逆算するための地図として書きます。

    1. 2027年度改定が『同時改定』である意味

    3年に1度の介護報酬改定、6年に1度の医療と同時

    介護報酬は3年ごと、診療報酬は2年ごとに改定されます。両者がぶつかる『同時改定』は6年に1度――前回は2024年度、次回は2030年度です。ただし、2027年度は介護・障害福祉サービスの3年同時改定にあたる年であり、福祉領域の制度設計が大きく動きます。地域包括ケアの『医療・介護・障害』を貫く設計思想が、より一段、明確化される改定になります。

    『2040年問題』が改定の通底テーマ

    2040年に介護職員が約272万人必要(厚労省第9期介護保険事業計画ベースの推計)と試算されるなか、需給ギャップは100万人規模で広がる見込みです。2027年度改定は、この『不可避の人手不足』を前提に、『限られた人手で、より多くの人を、安全に』支える制度へと舵を切る改定になります。

    2027年度
    次期 介護報酬改定の施行予定年度(3年ごとの本改定)
    出典:厚労省 介護給付費分科会
    約272万人
    2040年度に必要とされる介護職員数(推計)
    出典:厚労省 第9期介護保険事業計画ベース
    約1.59%
    2024年度改定の改定率(処遇改善分含む全体)
    出典:厚労省 令和6年度介護報酬改定の概要
    改定の2年前から動く事業所と、
    改定後に動く事業所。
    3年後の体力は、まったく別物になる。

    2. 過去3回の改定から読む『通底する3つの流れ』

    介護事業所の経営層が大型モニターで財務・改定資料を分析しながら戦略会議を行っている場面
    『過去の改定の文法』を読めば、次の改定はかなりの精度で予測できる。

    流れ① 基本報酬は抑制、加算で誘導

    2018年度・2021年度・2024年度のいずれも、基本報酬は微増にとどまり、加算で政策誘導する設計が貫かれています。とくに2024年度は、訪問介護の基本報酬がマイナスに振れたことが象徴的でした。これは『何もしなくても入ってくる収入』を減らし、『国の意図に沿った動きをした事業所だけが報われる』方向への明確なシフトです。

    流れ② データ提出・ICT活用が『要件化』される

    LIFEへのデータ提出、業務継続計画(BCP)、ハラスメント対策、虐待防止委員会――これらはすべて『努力義務』から『義務』『加算要件』へと段階的に格上げされてきました。2027年度改定では、この流れがさらに進み、ICT記録・LIFEフィードバック活用などが、より深く義務化される公算が高い。

    流れ③ 処遇改善は『一本化』『簡素化』『底上げ』の方向

    2024年6月、3本に分かれていた処遇改善加算が『介護職員等処遇改善加算』1本に一元化されました。これは事業所の事務負担軽減と、職種間の処遇是正を同時に狙う設計です。2027年度はさらに、特定処遇改善の対象拡大(看護・リハ職等への配分柔軟化)と、最賃連動・物価連動の仕組みが議論される見込みです。

    3. 2027年度改定 5つの予測軸

    予測① LIFE・ICT活用の『要件化』が一段深まる

    LIFEはすでに2024年度で『データ提出+フィードバック活用』が要件化されました。2027年度は、介護記録のICT化、LIFE自動連携、運営指導での電子提出が、加算要件・基本算定要件の両面で拡大する見込みです。紙運用の事業所は、構造的にハンディキャップを負うことになります。

    予測② 生産性向上推進体制加算が『中核加算』へ昇格

    2024年度に新設された『生産性向上推進体制加算』は、推進センター活用や見守りICT導入を要件にしています。2027年度はこれが適用サービス・単位数の両面で拡大し、ICT導入・業務改善PDCAを回せる事業所の収益優位が拡がる見通しです。介護生産性向上推進総合事業との連動も深まります。

    予測③ 訪問介護・小規模事業所の『再編』圧力が強まる

    2024年度に訪問介護の基本報酬が引き下げられたことで、訪問介護の倒産が過去最多を更新しました。2027年度に向けては、大規模化・複合化(複数サービス併設)・地域連携協定への参加を要件とした加算が拡充される可能性が高い。小規模単独事業所には、戦略の見直しを迫る改定になります。

    予測④ 処遇改善の『最賃連動』『物価連動』議論の本格化

    介護人材確保策の文脈で、財政審・社会保障審議会の議論では『公定価格である介護報酬の機動的改定』論が継続的に登場しています。2027年度では、最低賃金・物価変動に応じた処遇改善加算の自動見直しや、対象職種の拡大(看護・リハ・事務職)が論点化される見込みです。

    予測⑤ 認知症ケア・看取り・医療連携の『質の評価』導入

    『提供したサービス量』ではなく『達成された成果』を評価する成果報酬の議論は、ADL維持等加算・科学的介護推進体制加算を皮切りに広がっています。2027年度は、認知症ケア・看取り・医療連携の領域でも、アウトカム指標に連動した評価が拡充される見込みです。

    4. 経営者が今からの2年で打つべき『5つの先手』

    管理者がホワイトボードに改定スケジュールと施策のタイムラインを書き、若手職員が見守るミーティング場面
    改定の2年前は、戦略的に動ける『最後の余白』。

    先手① LIFE運用を『提出するだけ』から脱却させる

    2027年度には、LIFE活用の深度が加算単価に直結する可能性が高い。フィードバック票を多職種で読む運用を、いま組織標準として組み込んでおくこと。詳細はLIFE現場実装ガイドを参照。

    先手② ICT・介護ロボットの導入を補助金で前倒し

    介護テクノロジー導入支援事業(補助率3/4・最大260万円)の活用を、2026〜2027年度のうちに済ませておくことが鉄則。改定後は競争率が跳ね上がります。

    先手③ 訪問・通所など複数サービスの『複合化』を検討

    訪問単独・通所単独の事業所は、小規模多機能・看護小規模多機能・地域密着型複合サービスへの転換、または同一法人内での連携強化を視野に入れる時期です。

    先手④ 処遇改善の『配分設計』を見直す

    2024年6月の一本化以降、配分の自由度は事業所側に委ねられています。看護・リハ・事務職への配分夜勤者・若手・リーダーへの傾斜配分を改定前に整えておくことで、2027年度の対象拡大に即応できます。

    先手⑤ アウトカム指標を『見える化』する仕組みを作る

    ADL・口腔・栄養・認知機能・褥瘡・夜間転倒――これらを月次で記録・可視化する仕組みを、いま整えておくこと。成果評価型の加算が拡大しても、『データで証明できる事業所』だけが取りこぼさないからです。

    5. 2027年度改定までのタイムライン

    時期主な動き経営者が見るべきこと
    2026年 春〜夏介護給付費分科会で論点提示論点リストを毎回フォロー
    2026年 夏骨太の方針/財政審建議財源・抑制トーンの確認
    2026年 秋〜冬具体的改定項目の方向性自施設シミュレーション開始
    2026年 12月改定率の決定(予算編成)3カ年経営計画の起案
    2027年 1〜2月単位数・要件の答申加算別の取得判断確定
    2027年 4月改定 施行移行運用の徹底
    ※スケジュールは過去改定の慣例に基づく見通し。最終的な時期は公式発表を要確認。

    6. 改定リスクが特に高いサービスと、その理由

    ① 訪問介護(基本報酬の追加調整リスク)

    2024年度の基本報酬引き下げの是非は引き続き議論の対象。処遇改善加算の取得率・人材確保状況を改定論議の主軸として注視する必要があります。

    ② 居宅介護支援(ケアマネ)

    ケアマネ不足が深刻化するなか、担当件数上限の見直し/逓減制の緩和/報酬区分の再編が論点化されています。事業所収益への影響は大きく、改定方向の早期把握が重要。

    ③ 通所介護(規模別単価/生産性加算の影響)

    規模別の単価差・送迎の効率化・LIFE活用の深度――いずれも次期改定で再評価される可能性が高い。大規模化と地域連携の両軸での戦略が必要です。

    7. 過去3回の改定率と総額の動き(俯瞰)

    改定年度改定率(全体)主な特徴
    2018年度+0.54%医療介護同時改定/自立支援重視
    2021年度+0.70%コロナ対応/LIFE導入/BCP努力義務
    2024年度+1.59%(処遇改善含む)処遇改善一本化/訪問介護基本報酬▲/生産性向上推進体制加算新設
    2027年度(予測)未定同時改定/ICT・LIFE要件深化/処遇改善拡充
    ※改定率の数値は厚労省公表値に基づく。2027年度は本稿執筆時点の見通し。

    8. 今すぐやるべき、3つのアクション

    No.アクション期限効果
    01介護給付費分科会の資料を月1回チェックするルーティンを作る今月中改定論点の早期把握
    02自施設の加算取得状況を一覧化し、未取得加算の取得計画を立てる2ヶ月以内改定前に基盤づくり
    03ICT/LIFE運用の改善計画を、補助金活用とセットで策定する半年以内2027年度の競争優位

    9. 施設長セルフチェック10項目

    • 次期改定スケジュールと過去3回の改定率を、自分の言葉で説明できる
    • 介護給付費分科会の資料を、月1回以上チェックしている
    • 自施設の加算取得・未取得を一覧化し、次期改定への影響を試算している
    • LIFEの『提出のみ』ではなく『活用』ができている(多職種運用)
    • 介護記録のICT化/LIFE自動連携の導入計画がある
    • 介護生産性向上推進総合事業/推進センターを活用している
    • 処遇改善加算の配分設計を、職種・役割を踏まえて見直している
    • 訪問・通所・居宅などサービス別の収益構造を月次で把握している
    • 3カ年経営計画を作成し、2027年度改定の論点を織り込んでいる
    • 同地域の事業所・職能団体・行政との情報共有ルートを持っている
    編集長より、最後に改定は『国が示すルール変更』ですが、それを『現場の物語に翻訳する』のは経営者の仕事です。職員に『なぜ変わるのか/何を一緒に守るのか』を伝えられる経営者の現場は、改定で空気が乱れません。本記事が、その翻訳作業の手助けになれば本望です。

    10. 参考資料・出典

    1. 厚生労働省「令和6年度 介護報酬改定の概要」
    2. 厚生労働省 社会保障審議会 介護給付費分科会 各回資料
    3. 厚生労働省「第9期介護保険事業計画 基本指針」
    4. 財政制度等審議会 財政制度分科会 社会保障関連資料
    5. 内閣府「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」
    6. 厚生労働省「介護職員等処遇改善加算 一本化に関する通知」(2024年6月)
    7. 福祉医療機構(WAM)「介護経営概況調査」

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    本記事に記載する2027年度改定の方向性は、本稿執筆時点(2026年5月)までに公表されている厚生労働省、社会保障審議会介護給付費分科会、財政制度等審議会、内閣府『骨太の方針』等の公表資料および過去改定の傾向に基づく予測であり、最終的な改定内容を保証するものではありません。実際の経営判断にあたっては、最新の公式資料、社会保険労務士、税理士、行政書士、業界団体等の専門家への個別相談をあわせてご活用ください。