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    制度・処遇改善 2026.06.13 約12分で読了

    【2026年6月施行済み】
    処遇改善加算Ⅴ全廃止
    ――旧加算のまま放置している施設が今すぐ確認すべき移行手順と収益損失の試算

    2026年6月1日、処遇改善加算の経過措置「加算Ⅴ」が全廃止されました。旧加算のまま届出を更新していない事業所は、月数万〜数十万円の収益損失と、職員賃上げ財源の喪失という二重の損失が静かに進行しています。今週、施設長がやるべき3つのアクションを編集長・深瀬久博がまとめます。

    処遇改善加算の書類と電卓が並ぶ施設長の机。経過措置廃止後の対応を象徴するイメージ
    深瀬久博
    執筆
    深瀬 久博 / 情熱介護 編集長
    介護福祉士・社会福祉士・認知症ケア専門士・産業ケアマネ(3級)・ストレスチェック実施者
    編集長より「請求は通っているから大丈夫」——その安心が一番危ない改定です。加算Ⅴは経過措置でした。役割を終えた区分は、もう戻ってきません。今日、自分の事業所の届出区分を、声に出して読み上げてください。

    この記事でわかること

    • 処遇改善加算Ⅴとは何か、なぜ廃止されたのか
    • 加算Ⅴのまま放置するとどれだけの収益損失が出るか
    • 新加算(加算Ⅰ〜Ⅳ)に移行するための具体的な手順
    • 新設された「加算Ⅰロ」を取得すれば月7,000円上乗せが可能な理由
    • 今週施設長がやるべき3つのアクション

    1. はじめに:「気づいたら損をしていた」を防ぐために

    2024年6月、旧3加算(処遇改善加算・特定処遇改善加算・ベースアップ等支援加算)が一本化され、新しい「介護職員等処遇改善加算」が創設されました。

    その際、旧加算からの移行を円滑にするための「経過措置」として加算Ⅴが設けられました。しかしその経過措置は、2026年6月1日をもって全廃止されています。

    つまり今この瞬間、加算Ⅴのままになっている事業所は「算定できない加算を届け出ている」状態になっている可能性があります。加算が取れていなければ、その分の収益は入ってきません。職員への賃上げ財源も失われます。「まだ対応していなかった」という施設長は、今日中に確認してください。

    経過措置は、
    役割を終えれば、
    戻ってこない。

    2. 処遇改善加算Ⅴとは何だったのか

    旧3加算から新加算への移行経緯

    2024年6月以前、処遇改善に関する加算は以下の3種類に分かれていました。

    • 介護職員処遇改善加算(旧処遇改善加算)
    • 介護職員等特定処遇改善加算(旧特定加算)
    • 介護職員等ベースアップ等支援加算(旧ベースアップ加算)

    これが2024年6月に「介護職員等処遇改善加算」として一本化されました。新加算の区分はⅠ〜Ⅳの4段階で設計されましたが、旧加算の取得状況によっては新加算の上位区分にすぐ移行できない事業所も存在しました。そこで経過措置として設けられたのが「加算Ⅴ」です。旧加算の算定状況に応じた移行準備期間として機能していました。

    加算Ⅴが廃止された理由

    経過措置は「移行のための猶予期間」であり、永続するものではありません。2026年6月の臨時改定では加算区分がさらに拡充され、加算Ⅰ〜Ⅳに加えて新たに「ロ区分」(加算Ⅰロ・加算Ⅱロ)が新設されました。この新体系への完全移行に伴い、経過措置である加算Ⅴは役割を終え、全廃止となっています。

    施設長が電卓と試算表で加算区分の収益影響を確認している様子
    「請求は通っているから大丈夫」が、最も静かな損失を生む。

    3. 加算Ⅴのまま放置するとどうなるか

    収益損失の試算

    加算Ⅴが廃止されたにもかかわらず、届出を更新していない場合、新加算として正しく算定できない状態になります。具体的な収益損失は事業所の規模とサービス種別によって異なりますが、以下が目安です。

    サービス種別月間損失額の目安
    特養(定員50名)数十万円規模
    通所介護(定員30名)数万〜十数万円規模
    訪問介護(登録100名)数万〜十数万円規模
    居宅介護支援(ケアマネ5名)数万円規模

    これは「取れるはずだった加算が取れていない」という機会損失です。職員への賃上げ財源がその分減ることにもなります。

    気づきにくい理由

    加算Ⅴが廃止されても、国保連への請求が即座にエラーになるわけではないケースもあります。そのため「請求が通っているから大丈夫」と思い込んでいる事業所が存在します。しかし実際には正しい加算区分で算定できていない可能性があり、後から発覚すると返還請求のリスクも生じます。

    4. 2026年6月現在の加算体系

    2026年6月施行後の加算区分は以下の通りです。

    区分概要
    加算Ⅰイ基本要件を満たす上位区分(旧加算Ⅰ相当)
    加算Ⅰロ加算Ⅰイ+生産性向上・協働化への取り組み(新設)
    加算Ⅱイ中位区分(旧加算Ⅱ相当)
    加算Ⅱロ加算Ⅱイ+生産性向上・協働化への取り組み(新設)
    加算Ⅲ下位区分
    加算Ⅳ最下位区分
    加算Ⅴ2026年6月1日をもって全廃止

    新設「加算Ⅰロ」で月7,000円の上乗せが可能

    今回の改定で最も注目すべきは加算Ⅰロです。加算Ⅰイの要件を満たした上で、以下のいずれかに取り組む事業所が算定できます。

    • 生産性向上推進体制加算の取得
    • ケアプランデータ連携システムへの加入
    • 社会福祉連携推進法人への所属
    • 上記いずれかの2026年度中の対応誓約

    これを算定することで、加算Ⅰイに比べて職員1人あたり月7,000円の上乗せが可能になります。10人の職員がいる事業所なら月7万円、年間84万円の賃上げ財源の差になります。

    処遇改善計画書のファイルを抱え、窓辺で内容を確認する施設管理者の様子
    届出は出した瞬間から、翌月の収益を変える。

    5. 今すぐやるべき移行手順

    STEP 1:現在の届出状況を確認する

    まず、現在の処遇改善加算の届出区分を確認します。国保連への請求データか、都道府県への届出書類を確認して「加算Ⅴ」の記載があれば、即座に対応が必要です。

    STEP 2:移行可能な加算区分を判断する

    以下の要件を確認し、どの区分に移行できるかを判断します。

    加算Ⅰを目指す場合の主な要件:

    • キャリアパス要件Ⅰ(任用要件・賃金体系の整備)
    • キャリアパス要件Ⅱ(研修の実施)
    • キャリアパス要件Ⅲ(昇給の仕組みの整備)
    • 職場環境等要件(複数の区分から取り組みを実施)

    要件を満たせない場合は加算Ⅱ〜Ⅳの中から現状に合った区分を選びます。

    STEP 3:処遇改善計画書を作成・届出する

    移行する加算区分が決まったら、処遇改善計画書を作成し都道府県に届け出ます。届出が受理された月の翌月から新加算が適用されます。1日でも早く届け出ることが収益の早期回復につながります。

    STEP 4:加算Ⅰロの取得可能性を検討する

    STEP 3で加算Ⅰへの移行が完了したら、次のステップとして加算Ⅰロの取得を検討します。「ケアプランデータ連携システムへの加入」は比較的ハードルが低く、居宅介護支援事業所との連携がある施設なら早期に対応しやすい選択肢です。

    施設長の今週チェックリスト

    • 現在の処遇改善加算の届出区分を確認した
    • 加算Ⅴのまま届出されていないかを確認した
    • 移行可能な加算区分(Ⅰ〜Ⅳ)を判断した
    • 処遇改善計画書の作成に着手した
    • 都道府県への届出スケジュールを決めた
    • 加算Ⅰロの取得要件を確認した
    • 社労士・コンサルへの相談が必要か判断した

    編集長・深瀬久博からひとこと

    処遇改善加算は「取って終わり」ではない。

    制度が変わるたびに、届出を更新し続ける必要がある。

    これを面倒と感じる気持ちはわかる。

    しかし算定できていない加算は、職員に渡るはずだった賃金が消えていることを意味する。

    「知らなかった」では済まされない制度だ。

    今日、まず届出状況を確認するだけでいい。

    それだけで、損失が続くリスクを止められる。

    深瀬久博
    深瀬 久博
    情熱介護 編集長 / 介護現場マネジメント講師

    この記事に関連する実務ガイド

    本記事の制度・数値は、2026年6月時点で公表されている厚生労働省・関連自治体の情報をもとに整理したものです。加算区分の判定、処遇改善計画書の作成、賃金規程の改定等については、最新の一次情報および所管自治体・社会保険労務士等への個別相談を必ずあわせてご確認ください。