2026年6月介護報酬臨時改定
完全対応ガイド
――処遇改善加算の新区分・対象職種拡大・届出期限を、施設長が今すぐ確認すべき実装手順
2026年6月、3年サイクルを待たずに介護報酬の臨時改定が施行されました。処遇改善加算には新区分「加算Ⅰロ」が新設され、長年対象外だったケアマネ・訪問看護・リハビリ職にも対象が拡大。最大月1万9,000円の賃上げが見込まれる一方、届出が遅れれば反映は7月以降にズレ込みます。本記事では、施設長が今週手を止めて確認すべき変更点と3つの実務アクションを、編集長・深瀬久博の視点で整理します。

この記事でわかること
- なぜ今回「臨時改定」が実施されたのか、背景と経緯
- 処遇改善加算の新区分「加算Ⅰロ」の要件と加算率
- ケアマネ・訪問看護・リハビリ職への対象拡大の実務影響
- 届出が遅れると7月以降になる理由と、今週やるべきこと
- 「月1万9,000円」の賃上げ3層構造を正しく理解する
1. はじめに:3年サイクルを待てなかった理由
介護報酬改定は通常、3年に1度のサイクルで行われます。2024年度に改定が行われたばかりであり、本来であれば次は2027年度のはずでした。それが今回、異例の臨時改定として2026年6月に前倒しで施行されました。
背景にあるのは、介護人材の深刻な流出です。他産業との賃金格差は縮まるどころか広がり続け、施設長の努力だけでは補えない構造的な問題になっていました。政府は「他職種と遜色のない処遇改善」を目標として掲げ、改定率プラス2.03%、最大月1万9,000円の賃上げを実現する今回の臨時改定を決定しました。
施設長として押さえておくべき変更点は、大きく3つあります。
3年を待てなかった改定は、
『現場が限界だ』という、
政府の遅すぎる返答でもある。
2. 変更点①:処遇改善加算に新区分「加算Ⅰロ」が新設された
賃上げの3層構造を理解する
今回の改定による賃上げは、以下の3層で構成されています。
第1層:全介護従事者対象(月額+約1万円)
加算の取得要件を満たすすべての事業所が対象。これまでの加算Ⅰイに相当する部分で、ベースとなる賃上げ分です。
第2層:生産性向上・協働化への取り組み事業所(月額+約7,000円)
ここが今回新設された「加算Ⅰロ」に相当する部分。ICT活用や複数法人との連携(協働化)への取り組みが要件となります。
第3層:定期昇給(月額+約2,000円)
事業所ごとの昇給制度による上乗せ分です。
合計すると、すべての要件を満たした事業所の介護職員は最大で月1万9,000円(約6.3%)の賃上げが見込まれます。
「加算Ⅰロ」の主な取得要件
加算Ⅰロを取得するには、以下の取り組みが必要とされます。
- ICT活用の実績。介護記録ソフト・シフト管理ツール・情報共有システムなど、業務効率化につながるICTツールの導入・活用実績。
- 協働化への参加。複数の介護事業所が連携して人材確保・育成・業務効率化に取り組む「協働化」スキームへの参加。
- 計画書の作成・届出。取り組み内容を明示した処遇改善計画書を都道府県に届出。
3. 変更点②:対象職種が大幅に拡大された
今回の改定で最も「現場への影響が大きい」変更がこれです。これまで処遇改善加算の対象外とされていた以下の職種が、初めて加算対象として追加されました。
| 職種 | 改定前 | 改定後 |
|---|---|---|
| 居宅介護支援(ケアマネ) | 対象外 | 対象 |
| 訪問看護師 | 対象外 | 対象 |
| 訪問リハビリ職 | 対象外 | 対象 |
| 通所リハビリ職 | 対象外 | 対象 |
長年「なぜ介護職だけが対象なのか」という現場の声があり、今回ようやく是正された形です。

施設長が確認すべき実務ポイント
複合型サービスを持つ法人は特に注意が必要です。たとえば特養と居宅介護支援事業所を運営している法人の場合、これまでケアマネへの処遇改善は別財源で対応していたケースが多いはずですが、今回から加算として算定できるようになります。
一方で、新たに対象となった職種分の「処遇改善計画書」への記載と届出が必要になるため、書類上の対応漏れが起きやすいのもこの改定の特徴です。経理担当・事務担当と早急に確認作業を進めてください。
4. 変更点③:補助金から加算への完全移行
2025年12月から2026年5月まで支給されていた「介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業」による補助金は、2026年5月で完全に終了しました。6月からは新しい処遇改善加算へと制度が完全移行しています。
注意点:4,000円分は引き継がれない
補助金の3層構造のうち、月4,000円相当の「職場環境改善に自由に使える資金」は新加算には引き継がれません。
この部分はコンサルタント費用や介護助手の募集費用などに充てていた事業所も多かったはずです。6月以降は同額の財源を確保できないことを予算計画に織り込んでおく必要があります。
5. 今週、施設長がやるべき3つのアクション

アクション① 届出の締め切りを確認する
2026年6月の施行に向けて届出が受理された事業所から順次、新たな加算率が適用されます。届出が遅れると反映が7月以降になります。今すぐ都道府県の介護保険担当窓口または国保連に締め切り日を確認してください。
アクション② 対象職種の洗い出しをする
自法人が運営するすべてのサービス種別を一覧化し、新たに加算対象となった職種(ケアマネ・看護・リハビリ)がいるかどうかを確認します。対象職種がいる場合は、処遇改善計画書への反映が必要です。
アクション③ 「加算Ⅰロ」の取得可能性を判断する
ICT活用・協働化の要件を満たせるかどうかを確認し、取得できる場合は今回から算定することを強く推奨します。月7,000円の差は、年間にすると職員1人あたり8万4,000円。10人の職員がいる事業所なら、年間84万円の財源差が生まれます。
届出が間に合わなければ、
善意の制度も、
職員の給与明細には届かない。
6. 今すぐ確認すべき・チェックリスト
- 所管自治体・国保連に届出の締め切り日を確認した
- 自法人のサービス種別ごとに対象職種を一覧化した
- ケアマネ・訪問看護・リハビリ職の対象拡大分を計画書に反映した
- 加算Ⅰロの要件(ICT活用・協働化)の充足状況を判定した
- 補助金で確保していた4,000円分の財源減を予算計画に反映した
- 処遇改善計画書を期日内に提出した/提出予定日を確定した
- 賃上げ反映月を職員に事前周知する文面を準備した
7. 編集長・深瀬久博からひとこと
今回の臨時改定は、現場にとって「朗報」の部分が大きい改定です。ケアマネや看護職が対象外だったことで、同じ事業所内で処遇に差が生じ、それが離職の一因になっていた施設も少なくありませんでした。
ただ、制度が善意で設計されていても、届出が間に合わなければ恩恵を受けられません。「知っていたのに動けなかった」という結末だけは避けてほしいと思っています。
今週、一度だけ手を止めて、届出の締め切りと対象職種の確認をしてください。それだけで十分です。
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本記事の制度・数値は、2026年6月時点で公表されている厚生労働省・関連自治体の情報をもとに整理したものです。加算区分・要件・届出期限の具体的判断、計画書の記載方法については、最新の一次情報および所管自治体・国保連・社会保険労務士等の専門家への個別相談を必ずあわせてご確認ください。