課題解決ガイドへ戻る
    採用・人材戦略 2026.06.14 約12分で読了

    介護施設のリファラル採用
    完全ガイド【2026年版】
    ――求人媒体ゼロで年間27名採用した法人の仕組みと、今月から始める5つの実装ステップ

    求人媒体に頼らず職員の紹介で採用する「リファラル採用」は、有効求人倍率3.97倍時代の介護業界に最も合った採用手法です。採用コスト9割削減・定着率向上の仕組みと、今月から始める5つの実装ステップを完全解説します。

    介護ユニフォームの女性2人がスマホを見ながら笑顔で会話しているイメージ
    深瀬久博
    執筆
    深瀬 久博 / 情熱介護 編集長
    介護福祉士・社会福祉士・認知症ケア専門士・産業ケアマネ(3級)・ストレスチェック実施者
    編集長より求人を出せば人が来た時代は、とっくに終わっています。それでも毎月同じ媒体に費用を払い続けている施設長へ。リファラル採用は「仕組み」ですが、その根本は「この職場で働いていて良かった」という職員の実感です。制度を作る前に、今いる職員がそう思えているかを確認してください。

    この記事でわかること

    • リファラル採用とは何か、なぜ今の介護現場に最も合っているのか
    • 求人媒体に頼らず年間27名採用した法人が実践した仕組み
    • インセンティブ設計の正しい考え方と金額の目安
    • 職員が紹介しやすい環境の作り方
    • よくある失敗パターンと防ぎ方
    • 今月から始める5つの実装ステップ

    はじめに:求人を出し続けても人が来ない時代の終わり方

    有効求人倍率3.97倍。東京都では7倍を超える。

    求人を出せば人が来た時代は、とっくに終わっている。

    それでも多くの施設長が、毎月同じ求人媒体に費用を払い続けている。採用できなかった月も、広告費だけが出ていく。

    しかし全国には、求人媒体をほぼ使わずに採用を続けている施設がある。その共通点はひとつだ。

    職員が職員を呼ぶ仕組みを持っている。
    これがリファラル採用だ。

    リファラル採用とは何か

    リファラル(Referral)とは「紹介・推薦」を意味する。

    リファラル採用とは、在籍する職員が友人・知人・元同僚などを自施設に紹介し、採用につなげる手法だ。

    人材紹介会社への依頼(エージェント採用)とは根本的に異なる。

    比較項目求人媒体・エージェントリファラル採用
    採用コスト1名あたり数十万〜100万円以上インセンティブのみ(数万円)
    採用までの期間数週間〜数ヶ月比較的短い
    入社後の定着率平均的高い傾向がある
    職場文化との適合不明紹介者が保証
    即戦力性不明紹介者が把握

    なぜ今の介護現場にリファラル採用が合っているのか

    理由①:介護職のネットワークは業界内で完結している

    介護職は転職先も同業他社であることが多い。つまり在職中の職員は、同業の知人・友人を多く持っている可能性が高い。

    その人脈を活かせるのがリファラル採用だ。

    理由②:リファラル採用者は定着率が高い

    紹介者(在職職員)は、紹介相手の人柄・スキル・働き方をある程度知った上で紹介する。「この人なら合う」という判断が入るため、職場文化とのミスマッチが起きにくい。

    さらに紹介者自身も「自分が連れてきた人」という責任感から、入社後のフォローをしやすい環境が生まれる。

    理由③:採用コストが圧倒的に低い

    人材紹介会社を使うと、採用1名あたり年収の20〜35%が紹介手数料となる。月給25万円の職員を採用した場合、年収約300万円の35%=約105万円が手数料だ。

    リファラル採用のインセンティブは通常3万〜20万円程度。コスト差は歴然だ。

    年間27名採用した法人が実践した仕組み

    船井総合研究所が紹介したリファラル採用の成功事例として、全事業所でリファラル推進に取り組み年間27名の採用に成功した法人がある。その実践のポイントを分解する。

    ポイント①:「金目の話」より「なぜやるか」から始めた

    多くの施設が「採用できたら○万円」というインセンティブだけを伝えて失敗する。

    この法人は逆だった。「職員紹介をなぜやるのか」という理由から動機付けを始めた。

    「仲間と一緒に働けることの喜び」「信頼できる人と職場を作ること」——インセンティブは後から付いてくるものとして位置付けた。

    ポイント②:施設長が毎回説明した

    各施設長が会議のたびに職員へ説明を続けた。「一度説明して終わり」ではなく、繰り返し伝え続けることで認知が定着した。

    ポイント③:給与封筒にチラシを同封した

    毎月の給与を渡す封筒の中に、リファラル採用のチラシを入れた。日常のタッチポイントを使って、継続的に意識付けを行った。

    ポイント④:職員が「紹介したい」と思える職場を先に作った

    これが最も重要な前提だ。職場環境が悪ければ、職員は友人を紹介しない。自施設を「友人に薦めたい職場」にすることが、リファラル採用の最大の前提条件だ。

    インセンティブ設計の考え方

    金額の目安

    インセンティブの金額は施設によって異なるが、一般的な相場はこうだ。

    支払いタイミング金額目安
    入社時(一時金)1万〜5万円
    3ヶ月定着時3万〜10万円
    6ヶ月定着時5万〜20万円
    合計10万〜20万円程度

    定着してから支払う設計にすることで、「紹介したが1ヶ月で辞めた」というトラブルを防げる。

    注意点:インセンティブは「課税対象」

    職員に支払うインセンティブは給与所得として課税される。経理担当と事前に確認し、給与明細への反映・源泉徴収の処理を正しく行う必要がある。

    注意点:就業規則への明記

    インセンティブ制度は就業規則または規程集に明記する。「口約束」で運用すると後からトラブルになる。社労士に確認の上、文書化してほしい。

    よくある失敗パターンと防ぎ方

    失敗①:一度説明して終わりにした

    リファラル採用は「今すぐ紹介できる人がいる職員」だけが動く。ほとんどの職員は「いつか機会があれば」という状態だ。

    繰り返し伝え続けることで、そのタイミングが来たときに思い出してもらえる。

    失敗②:紹介者へのフォローがなかった

    紹介した友人が採用されたのに、紹介者への感謝の言葉が一言もなかった——これで紹介者のモチベーションは消える。

    採用が決まったらすぐに紹介者に伝え、感謝を示すことが次の紹介につながる。

    失敗③:不採用時の連絡が雑だった

    紹介した友人が不採用になった場合、紹介者は非常に気まずい思いをする。

    丁寧な不採用理由の説明と、紹介者への感謝を忘れずに伝えることが、信頼関係を守る上で重要だ。

    失敗④:職場環境が整っていなかった

    「友人を紹介したら、友人から『あの職場はひどかった』と言われた」——これが最悪のケースだ。

    リファラル採用を始める前に、現在の職員が「この職場を友人に薦めたいか」を正直に確認してほしい。

    今月から始める5つの実装ステップ

    STEP 1:現職職員へのヒアリング(今週)

    「もし友人・知人を紹介するとしたら、どんな人を紹介したいか」「今の職場を友人に薦めたいと思うか」を個別または小グループでヒアリングする。

    ここで「薦めたくない」という声が多ければ、まず職場環境の改善が先だ。

    STEP 2:制度設計と就業規則への明記(今月中)

    インセンティブの金額・支払いタイミング・対象者の範囲を決定し、就業規則または規程に明記する。社労士に確認してから実施する。

    STEP 3:全職員への周知(来月初旬)

    施設長が直接、全職員に制度の説明を行う。「なぜやるか」から始め、インセンティブは後から説明する。説明資料は1枚にまとめてわかりやすく。

    STEP 4:継続的な発信(毎月)

    給与封筒へのチラシ同封、朝礼での一言告知、掲示板への掲示など、複数のタッチポイントで毎月発信し続ける。

    STEP 5:採用・定着のたびに感謝を伝える(随時)

    紹介者への感謝を言葉と形(インセンティブ)で示す。「紹介して良かった」という体験が次の紹介を生む。

    施設長の今月確認リスト

    • 現在の職員が「この職場を友人に薦めたいか」を確認した
    • リファラル採用のインセンティブ金額・タイミングを決めた
    • 就業規則または規程への明記を社労士に依頼した
    • 全職員への説明会・告知の日程を決めた
    • 説明資料(1枚もの)を作成した
    • 毎月の発信方法(封筒・掲示板等)を決めた
    • 採用成功時の感謝・インセンティブ支払いフローを確認した

    編集長・深瀬久博からひとこと

    リファラル採用は「仕組み」だが、その根本は「この職場で働いていて良かった」という職員の実感だ。

    職員が友人を紹介するのは、その職場を信頼しているからだ。逆に言えば、誰も紹介しない職場は、職員が自施設を信頼していないということでもある。

    リファラル採用を始めることで、施設の現状が正直に見えてくる。

    制度を作ることより先に、今いる職員が「ここで働いてて良かった」と思えているかを確認してほしい。

    それが整ったとき、リファラル採用は自然に動き始める。

    深瀬久博
    深瀬 久博
    情熱介護 編集長 / 介護現場マネジメント講師