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    制度・経営対応 2026.06.13 約11分で読了

    【8月1日施行】
    介護施設の食費基準費用額
    引き上げ完全ガイド
    ――利用者説明・契約書改定・請求システム対応を今すぐ終わらせる施設長の実装手順

    2026年8月1日、食費の基準費用額が1日あたり100円引き上げられ1,545円になります。特養・老健・ショートステイの施設長は、利用者・家族への説明、重要事項説明書の改定、請求システムの更新を7月末までに終えなければ、現場の混乱と収益のロスにつながります。今月中に動ける施設と動けない施設の分岐点を、編集長・深瀬久博がまとめます。

    窓辺の柔らかな光に包まれた介護施設の和定食。ご飯・味噌汁・焼き魚・煮物・小鉢が並ぶお盆
    深瀬久博
    執筆
    深瀬 久博 / 情熱介護 編集長
    介護福祉士・社会福祉士・認知症ケア専門士・産業ケアマネ(3級)・ストレスチェック実施者
    編集長より6月の処遇改善加算改定が一段落したと思ったら、8月にもう一つの改定が控えています。「たった100円」と侮ると、説明遅れ・契約書の不備・請求設定ミスで、収益も利用者の信頼も失います。今月中に動ける施設だけが、夏を静かに乗り切れます。

    この記事でわかること

    • なぜ今回、食費基準費用額が引き上げられるのか
    • 1日100円の値上げが年間でどれだけの収益に影響するか
    • 利用者・家族への説明で押さえるべきポイントと注意点
    • 契約書・重要事項説明書の改定で変更すべき箇所
    • 請求システムの更新期限と確認手順
    • 低所得者(補足給付対象者)への対応方法

    1. はじめに:6月改定が終わったと思ったら、8月がある

    2026年6月1日、処遇改善加算の改定が施行されました。届出対応・職員への周知・給与計算の見直し——ようやく一段落したと感じている施設長も多いでしょう。

    しかし、もう一つの改定が迫っています。2026年8月1日、食費の基準費用額が改定されます。6月改定と8月改定は同じ「令和8年度介護報酬改定」の一部ですが、施行時期が異なる2段階構造になっています。この差を見落とし、8月の準備が間に合わないケースが現場で起き始めています。

    今回の食費改定は「たった100円」ではありません。利用者・家族への説明義務、契約書の改定、請求システムの更新——これらが全て7月末までに必要になります。今月中に動けるかどうかが、現場の混乱を防ぐ分岐点です。

    6月の安堵と、
    8月の改定の間に、
    『動かなかった7月』が、ある。

    2. 何が変わるのか:基本の確認

    食費基準費用額とは

    基準費用額とは、国が定めた「施設における食事にかかる平均的な費用の額」です。いわば介護施設の食費の「定価」に当たります。この金額が、2026年8月1日から以下のように改定されます。

    項目改定前改定後
    食費(1日あたり)1,445円1,545円
    変更額+100円/日

    対象となるサービス

    今回の改定が適用されるのは以下のサービスです。

    • 特別養護老人ホーム(特養)
    • 介護老人保健施設(老健)
    • 介護医療院
    • 短期入所生活介護(ショートステイ)
    • 短期入所療養介護

    通所系・訪問系サービスは対象外です。

    低所得者(補足給付対象者)への影響

    低所得者については所得段階に応じた配慮があります。

    • 第1・2段階(最低所得層):負担限度額は据え置き
    • 第3段階(一定の年金収入がある層):在宅生活者との公平性の観点から一部負担増

    補足給付を受けている利用者については、実際の自己負担がどう変わるかを個別に確認する必要があります。

    3. 施設経営への影響試算

    「1日100円」は小さく見えますが、施設経営の視点では別の話です。

    施設規模月間影響額年間影響額
    定員30名+約9万円+約110万円
    定員50名+約15万円+約182万円
    定員100名+約30万円+約365万円

    ※稼働率100%、月30日換算

    物価高騰で圧迫されていた食材費・光熱費を一部カバーできる改定です。ただし、この収益増を実現するためには8月1日までに請求設定を正しく更新する必要があります。更新が遅れれば、正当な収益が入ってきません。

    重要事項説明書と電卓が置かれた施設長のデスク。契約書改定の準備を象徴するイメージ
    100円の改定は、書類と請求設定の100箇所の確認を伴う。

    4. 今月中にやるべき3つの対応

    対応① 利用者・家族への説明(7月中に完了)

    食費の変更は利用者・家族に対する事前の説明と同意が必要です。重要事項説明書の変更を伴うため、口頭説明だけでは不十分です。

    説明で押さえるべきポイント:

    • いつから変わるか:2026年8月1日から
    • いくら変わるか:1日あたり100円の増加
    • 月額でいくらになるか:月30日で約3,000円増
    • 補足給付対象者への影響:個別に試算して説明
    • 変更の理由:国の制度改定であることを明示
    「国が決めたことだから」で済ませず、「物価高騰で食材費が上がり続ける中、質を維持するための改定」という文脈で説明すると、家族の理解が得やすくなります。苦情や不満が出やすいのは、説明が遅くなったケースです。7月初旬には説明を完了させることを目標にしてください。
    施設長が利用者家族に契約書の変更点を丁寧に説明している面談の様子
    説明の早さは、納得の深さに直結する。

    対応② 契約書・重要事項説明書の改定

    食費の金額は重要事項説明書に明記されているため、今回の改定に伴い書類の改定と再締結(または変更の覚書)が必要です。

    変更が必要な箇所:

    • 重要事項説明書の「食費」の金額欄
    • 入居契約書に食費金額が記載されている場合はその箇所
    • 「利用料金一覧表」などの別紙

    手続きの流れ:

    • 改定後の書類を作成する
    • 利用者・家族に説明の上、署名または変更同意書を取得
    • 原本を施設で保管

    社会福祉法人・医療法人の場合は、理事会・運営推進会議への報告が必要なケースもあるため、早めにスケジュールを組んでください。

    対応③ 請求システムの更新

    介護報酬の請求システムで食費の設定金額を更新する必要があります。

    確認・更新すべき内容:

    • 介護ソフト(カイポケ・ワイズマン・ほのぼの等)のアップデートが2026年8月対応版になっているか確認
    • 食費の単価設定を1,545円に変更
    • 補足給付対象者の負担限度額設定も合わせて確認
    • テスト請求で金額が正しく反映されているか確認
    締め切りの目安7月中に設定更新を完了させておかないと、8月の請求業務に影響します。介護ソフトのサポートセンターに問い合わせるなら、7月第2週までに動いておくと余裕があります。

    5. 7月末までに完了すべき・チェックリスト

    • 所管自治体の通知・厚労省告示で改定内容を一次情報で確認した
    • 自施設の対象サービス(特養・老健・ショート等)を一覧化した
    • 定員と稼働率から年間の収益影響額を試算した
    • 利用者・家族への説明文書(変更通知)を7月初旬までに配布した
    • 補足給付対象者(第1〜3段階)への個別影響を試算した
    • 重要事項説明書・契約書・料金一覧表の改定版を作成した
    • 署名または変更同意書の取得計画を立てた
    • 理事会・運営推進会議への報告スケジュールを確定した
    • 介護ソフトの8月対応版アップデートを確認・適用した
    • 食費単価(1,545円)と補足給付の負担限度額をシステムに反映した
    • テスト請求で8月分の金額が正しく出ることを検証した
    • 厨房委託会社・栄養士と食材費・献立への影響を共有した

    編集長・深瀬久博からひとこと

    6月改定、LIFE移行(7月31日)、食費改定(8月1日)——2026年の夏は、施設長にとって制度対応が重なる異例の時期だ。

    これだけの対応が短期間に集中すると、何かが後回しになる。

    優先順位をつけるなら、利用者・家族への説明だけは絶対に先手を打ってほしい。

    説明が遅れると苦情になり、苦情になると対応コストが何倍にもなる。

    今月中に説明資料を作り、7月の面談予定を入れる。

    その一手が、8月以降の現場を守る。

    深瀬久博
    深瀬 久博
    情熱介護 編集長 / 介護現場マネジメント講師

    この記事に関連する実務ガイド

    本記事の制度・数値は、2026年6月時点で公表されている厚生労働省・関連自治体の情報をもとに整理したものです。基準費用額・補足給付・契約書改定の具体的判断、請求システムの設定方法については、最新の一次情報および所管自治体・国保連・社会保険労務士・介護ソフトベンダー等への個別相談を必ずあわせてご確認ください。