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    人事・組織制度 2026.07.31 約13分で読了

    【2027年4月施行】育成就労で外国人職員は「辞められる」ようになる
    転籍の柔軟化が介護施設に迫る、受け入れから定着への転換

    外国人材の受け入れ方を書いた記事は数多くありますが、入ってきた後の話はほとんど書かれていません。2027年4月、外国人職員は本人の意向で職場を変えられるようになります。辞められない前提で成り立っていた受け入れは、そこで終わります。

    タブレットと記録用紙で申し送りを確認する介護施設の職員2人
    深瀬久博
    執筆・監修
    深瀬 久博 / 情熱介護 編集長
    介護福祉士・社会福祉士・認知症ケア専門士・産業ケアマネ(3級)・ストレスチェック実施者

    外国人材の受け入れについて書かれた記事は、驚くほど多く存在します。制度の比較、必要書類、受け入れ手順、費用の目安。行政書士事務所も、人材紹介会社も、監理団体も、それぞれ丁寧な解説を出しています。

    ただ、そのほとんどに共通していることがあります。入ってきた後の話が書かれていません。

    2027年4月1日、技能実習制度は育成就労制度へ移行します。この制度変更の本質は、受け入れ手続きが変わることではありません。これまで実質的に「辞められなかった」外国人職員が、本人の意向で職場を変えられるようになることです。

    つまり、外国人材が日本人職員と同じ条件になります。辞める人は、辞めます。

    この記事では、制度の骨子を最小限に整理したうえで、施設長が2027年4月までに準備すべきことを扱います。中心は、受け入れではなく定着です。

    本記事の前提

    本記事は、育成就労法(令和6年6月成立)および出入国在留管理庁が公表する育成就労制度の運用要領・Q&A等の公表資料を基にしています。

    制度の詳細な運用は、施行に向けて継続的に整備・改正が行われています。分野別運用方針、経過措置の詳細、監理支援機関の許可要件など、本記事執筆後に更新される可能性があります。実際の受け入れ判断にあたっては、出入国在留管理庁の最新の公表資料および専門家(行政書士・監理支援機関等)にご確認ください。

    01 制度の骨子:最低限これだけ

    何が変わるのか

    項目技能実習制度育成就労制度
    目的技能移転による国際貢献人材育成と人材確保
    期間最長5年(1号〜3号)原則3年
    到達目標技能検定等特定技能1号の水準
    入国時の日本語介護分野はN4相当N5相当以上、または所定の講習修了
    転籍(職場変更)原則不可(やむを得ない事情のみ)本人の意向による転籍が可能に

    施行日は2027年4月1日です。

    キャリアの階段が明確になります

    新制度では、育成就労(原則3年)→ 特定技能1号(5年)→ 特定技能2号(在留期間の更新に上限なし)という道筋が制度上の想定になります。

    これは施設にとって好材料です。長く働き続ける前提の制度になったということだからです。

    既存の技能実習生は、慌てなくて構いません

    現在受け入れている技能実習生は、技能実習計画の満了まで在留を継続できます。施行日をもって直ちに切り替える必要はありません。

    多くの施設で現実的な選択肢になるのは、技能実習2号を良好に修了したうえで特定技能1号へ移行するルートです。この場合、介護技能評価試験・介護日本語評価試験・日本語能力試験の受験が免除される取扱いとなっています。

    ただし、技能実習計画の在留期限を超えての延長はできません。満了の6か月前から特定技能1号への変更申請の準備を始めるのが実務上の目安です。書類収集に2〜3か月、審査に1〜2か月を見込む必要があります。

    制度の骨子はここまでです。手続きの詳細は、監理団体や行政書士の解説記事のほうが正確で詳しいので、そちらを参照してください。

    02 本題:転籍の柔軟化が意味すること

    これまで、外国人職員は辞められませんでした

    技能実習制度では、転籍は原則として認められていませんでした。実習先の倒産や人権侵害など、やむを得ない事情がある場合の例外に限られていたのです。

    この構造が、受け入れ施設側に何をもたらしていたか。「3年間は必ずいてくれる」という前提です。

    日本人職員の採用では、こうはいきません。合わない、きつい、条件が違う。そう感じれば辞めます。だから施設は、日本人職員に対しては定着策を講じます。

    外国人職員に対しては、それが必要ありませんでした。辞められない仕組みだったからです。

    2027年4月から、その前提が消えます

    新制度では、本人の意向による転籍が認められます。一定の要件(同一機関での就労期間、技能・日本語の水準、転籍先の適正性など)は設けられますが、制度の設計思想として「本人が職場を選べる」方向に転換します。

    この意味を、経営の言葉に翻訳します。

    これまで無償で得られていた定着が、これからはコストと工夫を要する定着になります。

    何が起きるか

    想定されるのは以下です。

    • 賃金水準の高い施設・地域への流出
    • 母国のコミュニティが大きい地域への集中
    • 同国籍の先輩職員がいる施設への移動
    • SNSを通じた待遇情報の共有と、それに基づく比較

    特に3点目と4点目は、日本人職員の転職市場より速く動く可能性があります。同国籍のネットワークは、求人サイトより情報伝達が速いためです。

    「うちは大切にしている」という自己認識は、この局面では機能しません。比較されるのは、他施設との相対です。

    03 施設長が2027年までに準備すべきこと

    ① 賃金テーブルに外国人職員を明示的に位置づける

    外国人職員の賃金を、日本人職員と別枠で管理している施設があります。これが最も危険です。

    理由は2つです。

    1つ目。転籍が可能になった時点で、賃金は比較の第一項目になります。別枠管理は、往々にして相場から取り残されます。

    2つ目。日本人職員から見て不透明な賃金体系は、それ自体が不信の材料になります。「外国人のほうが安い」でも「外国人のほうが高い」でも、説明できない差は組織を割ります。

    同一の等級制度の中に位置づけ、資格取得や経験年数で同じように上がる形にしてください。

    2026年度の最低賃金改定への対応とあわせて設計する場合は、最低賃金+55円で介護施設の人件費はどう動くかを参照してください。

    ② キャリアの階段を、本人に見える形で示す

    新制度は、育成就労 → 特定技能1号 → 特定技能2号という階段を前提としています。

    この階段が、本人に見えているかどうかが定着を分けます。

    具体的に示すべきものは以下です。

    示すこと具体例
    次の在留資格に進む要件いつまでに、どの試験に合格する必要があるか
    施設としての支援内容受験料の負担、学習時間の勤務時間内確保、教材の提供
    資格取得後の処遇介護福祉士取得で時給がいくら上がるか
    到達可能な役職リーダー・ユニット主任等に就く道があるか

    4行目を明示している施設は多くありません。「日本人職員の下で働き続ける」以外の未来が見えない職場から、人は出ていきます。

    ③ 日本語学習を「業務」として設計する

    学習支援を「本人の努力次第」にしている施設が多数あります。

    新制度では入国時の日本語要件がN5相当以上に設定される一方、3年で特定技能1号の水準に到達することが求められます。この差を埋めるのは、本人の自助努力ではなく施設の教育設計です。

    最低限、以下を決めてください。

    • 学習時間を勤務時間内に確保するか、時間外なら手当を出すか
    • 誰が教えるか(専任か、持ち回りか)
    • 教材の費用を誰が負担するか
    • 試験の受験料と、不合格時の再受験料をどうするか

    ④ 記録・申し送りの日本語を見直す

    これは今日から着手できます。

    介護記録と申し送りは、専門用語と略語と手書きの塊です。日本語能力試験に合格しても、現場の記録は読めません。

    • 頻出する略語の一覧を作る(「トロミ」「エアマット」「BPSD」など)
    • 記録の定型文をテンプレート化する
    • 音声入力や翻訳機能のあるシステムを検討する

    副次的な効果があります。新人の日本人職員にとっても、記録が読みやすくなります。外国人職員のためだけの投資にはなりません。

    04 最も見落とされる論点:教える側が辞めます

    ここが、この記事で最もお伝えしたい部分です。

    外国人材に関する記事を読み比べると、書かれているのは受け入れ手続きと、外国人職員本人の支援です。教える側の日本人職員について書かれたものは、ほとんどありません。

    現場で起きているのは、こういうことです。

    指導は、特定の1人に集中します

    外国人職員を受け入れると、施設は指導担当を決めます。多くの場合、面倒見がよく、丁寧で、断らない職員が選ばれます。

    その職員に何が起きるか。

    • 通常の業務量は減らないまま、指導が上乗せされる
    • 言葉が通じにくい分、1つ説明するのに時間がかかる
    • 同じことを何度も説明する場面が出る
    • 記録の確認・修正が業務に加わる
    • 生活面の相談(住居、役所手続き、体調)まで持ち込まれる
    • これらのどれにも、手当がつかない

    そして最も重いのが、この負荷が誰にも見えていないことです。指導は数字に表れません。シフト表にも、業務日報にも、「指導3時間」とは書かれません。

    やがて、こう言われます

    「もう、私には無理です」

    このとき施設長が受け取るのは、外国人材の受け入れが失敗したというメッセージではありません。最も丁寧に仕事をする職員を1人失ったという事実です。

    しかも、その職員は最後まで「外国人職員のせいだ」とは言いません。言えないからです。だから理由は「家庭の事情」になります。

    施設長がやるべき4つのこと

    1. 指導担当を複数にする

    1人に固定しないでください。3〜4名の担当を置き、日ごと・領域ごとに分担します。「あの人に聞けばいい」という状態は、外国人職員にとっては安心でも、指導者にとっては逃げ場のない状態です。

    2. 指導時間を業務時間として計上する

    シフトに「指導」の枠を入れてください。時間を可視化しないかぎり、負荷は存在しないものとして扱われます。

    3. 指導手当を設ける

    金額の多寡ではありません。月3,000円でも構いません。負荷を認識しているという表明として機能します。認識されていない負荷が、人を辞めさせます。

    4. 生活支援を業務から切り離す

    住居、役所手続き、通院、金銭。これらを現場の指導担当に背負わせないでください。監理支援機関の役割か、法人の事務部門の担当として明確に分けます。

    外国人材の定着を語る前に、教える側の定着を設計してください。教える人がいなくなった施設に、外国人職員は残りません。

    現場の負荷が見えなくなる構造については「もう限界です」と言えない管理者へ、指導する側と指導される側の関係については現場の空気が、重い|介護現場の心理的安全性を取り戻す7つの実践で扱っています。

    05 2027年4月までのスケジュール

    時期やること
    2026年8月〜9月既存技能実習生の在留期限を全員分リスト化。満了時期と移行ルートを確定
    2026年秋賃金テーブルへの位置づけを整理。日本人職員との等級統合
    2026年秋指導体制の見直し(複数担当化・指導時間の可視化・手当の設計)
    2026年冬記録・申し送りの日本語整備(略語一覧・テンプレート化)
    2027年初頭監理支援機関の選定・確認。許可を受けているか要確認
    2027年初頭キャリアパス(資格取得支援・到達可能な役職)の明文化
    2027年4月〜新制度での受け入れ開始

    最初の行を最優先にしてください。在留期限は待ってくれません。満了の6か月前が動き出しの目安なので、2027年前半に満了を迎える職員がいる施設は、既に準備期間に入っています。

    06 参考資料・関連記事

    主要参考資料

    • 出入国在留管理庁「育成就労制度」
    • 出入国在留管理庁「育成就労制度Q&A」
    • 育成就労制度運用要領
    • 厚生労働省「介護職種の技能実習制度について」
    編集長メッセージ

    外国人職員を受け入れたとき、私は「3年はいてくれる」と思っていました。今から思えば、それは制度がそう作られていただけで、施設が選ばれていたわけではありませんでした。

    指導を任せた職員が、あるとき「私、教え方が下手なんだと思います」と言いました。下手なのではなく、1人で背負わせていただけでした。私はそれを、その職員が辞めるまで理解していませんでした。

    2027年から、外国人職員は職場を選べるようになります。選ばれる施設になるために必要なのは、外国人向けの特別な何かではないと思っています。日本人職員が辞めない施設が、外国人職員も辞めない施設です。

    情熱介護 編集長 深瀬 久博

    深瀬久博
    深瀬 久博
    情熱介護 編集長 / 介護現場マネジメント講師

    最終更新:2026年7月31日 / 情熱介護編集部