ケアマネ更新制廃止は2027年4月施行――施設長が「今すぐ」ではなく「今月から」備えるべき5つの理由
ケアマネ資格の更新制廃止は成立済みだが、施行は2027年4月(令和9年4月)が見込み。それまでは現行の更新制が続く。研修の労働時間化・事業者の報告義務・経過措置の不確定要素まで、施設長が今月から動くべき準備を解説する。

この記事でわかること
- 「成立」と「施行」の間にある約1年弱の意味
- 施行までに現行の更新制が続くという重要な事実
- 事業者に新たに課される3つの義務
- 研修の「労働時間化」が経営に与える影響
- 今月から動くべき5つの具体的な準備
はじめに:「もう関係ない」と思った施設長へ
前回の記事で、ケアマネ資格の更新制廃止が2026年6月19日に国会で成立したことをお伝えした。
その後、「もう更新研修は受けなくていいんですよね」という問い合わせが現場から相次いでいることがわかった。
正直に言う。それは誤解だ。
法律が成立したことと、実際にその内容が施行されることの間には、約1年弱の準備期間がある。施行時期は2027年4月(令和9年4月)が有力とされており、それまでは現行の更新制がそのまま続く。
この記事では、「成立」と「施行」のギャップを正確に理解し、施設長が今月から動くべき理由を解説する。
「成立」と「施行」は別物だと理解する
法律ができるまでの正確なステップ
今回の改正は、以下のステップを踏んでいる。
- 2026年4月3日:政府が改正案を閣議決定、国会に提出
- 2026年6月19日:参議院本会議で可決・成立
- 公布:成立後、法律として公布される
- 政令・省令の制定:施行の詳細を定める政令・省令が作られる
- 施行:実際に新しい制度が始まる
改正案には「公布の日から1年6ヶ月以内に政令で定める日から施行」と記載されている。第10期介護保険事業計画が始まる2027年4月が、施行日として最も有力だとされている。
つまり今、何が起きているのか
法律は成立した。しかし施行はまだ先だ。
施行までの期間、現行の更新制(5年ごとの更新研修)はそのまま続く。
「資格更新の時期が近いから、廃止を待とう」と考えるのは危険だ。施行前に更新期限を迎えるケアマネは、従来通り更新手続きが必要になる。
施行までに事業者に課される3つの義務
更新制の廃止は「ケアマネの負担が減る」という話だけでは終わらない。同時に、事業者側に新たな義務が課されることになっている。
義務①:雇用するケアマネの状況報告
事業者は、雇用するケアマネジャーの氏名・業務への従事状況などを、都道府県知事に報告する義務を負う。
これまで「資格証を持っているか」を確認するだけだった管理業務が、より積極的な報告義務に変わる。
義務②:研修受講機会の確保
事業者には、ケアマネが法定研修を受講できるよう、受講機会の確保等の措置を講じる義務が課される。
具体的には、研修参加のためのシフト調整・出張対応・費用負担などが想定されている。これに違反した事業者には、知事による勧告・命令・公表といった措置が行われる規定が整備された。
義務③:研修を「労働時間」として扱う
これが経営上、最も重要な変化だ。
研修を受ける時間を労働時間として扱うよう、都道府県から事業所へ周知される見込みとなっている。これまで多くの事業所で「個人の自己研鑽」「自己負担」として扱われてきた研修参加が、今後は事業所の負担として明確化される方向だ。
ケアマネ3名の居宅介護支援事業所を例にすると、現行制度では5年に1回の更新研修にかかる費用(研修費・交通費・代替対応コスト)は1名あたり10〜20万円程度、3名で5年間に30〜60万円の負担になることがあった。新制度では年6〜7時間程度の定期研修が想定されており、これを労働時間として扱うことが求められれば、研修費の個人負担化は制度的に難しくなる。
つまり、事業所として年間の研修費・研修時間を予算に計上する必要が出てくる。
未受講者へのペナルティも強化される
研修受講の実効性を担保するため、知事の監督権限が強化される。
正当な理由なく研修を受けないケアマネジャーに対しては、知事が受講を命じることができ、その命令に従わない場合は、最長1年間の業務従事禁止という処分が下される可能性がある。
「更新制がなくなったから、もう気楽だ」という認識は正確ではない。研修を受けない場合のペナルティは、むしろ明確化されている。
受験資格の緩和も同時に進む
更新制廃止と並行して、ケアマネ試験の受験資格にも変化がある。
- 必要な実務経験:現行の5年から3年に短縮
- 受験対象資格の拡大:診療放射線技師・臨床検査技師・臨床工学技士・救急救命士・公認心理師などが新たに追加される方向
これにより、2027年度以降のケアマネ試験で受験者数・合格者数が増加する見込みとなっている。全国に約60万人いるとされる潜在ケアマネ(資格を持つが現場を離れている人材)の一部が現場復帰すれば、中長期的なケアマネ不足の緩和につながる可能性がある。
経過措置の「不確定要素」に注意する
現時点で、以下の点はまだ確定していない。
- 施行前に資格証の有効期限が切れる場合の対応:政令・省令で今後定められる予定
- 施行をまたぐ更新研修の取り扱い:詳細は未確定
- 研修科目・時間数の具体的な内容:今後制定される省令によって決定される
これらは「今後決まること」であり、現時点で確定的な対応策を示すことはできない。施設長としては、情報が更新されるたびに確認する体制を持つことが重要になる。
施設長が今月から備えるべき5つのこと
備え①:在籍ケアマネの資格更新期限を一覧化する
施行(2027年4月見込み)より前に更新期限を迎えるケアマネがいる場合、現行制度のもとで更新手続きが必要になる。まず一覧化し、いつ誰が更新時期を迎えるかを把握してほしい。
備え②:研修時間の「労働時間化」を見据えた予算計画を立てる
施行後、研修参加が労働時間として扱われる方向性が示されている。今のうちから、研修参加にかかる人件費・代替職員のコストを、将来の予算計画に織り込んでおくことを推奨する。
備え③:情報を継続的に確認する担当者を決める
省令・政令の詳細は今後固まっていく。都道府県の介護保険担当課からの通知、厚生労働省の介護保険最新情報を定期的に確認する担当者を、施設内で一人決めておくとよい。
備え④:潜在ケアマネの採用可能性を視野に入れる
受験資格の緩和・受験対象資格の拡大により、2027年度以降はケアマネの供給が増える可能性がある。今のうちから、採用計画の見直しタイミングを意識しておくことを推奨する。
備え⑤:「焦って動かない」という判断も正しい
経過措置の詳細が固まっていない以上、現時点で大きな制度変更(研修費の負担方針の刷新等)に踏み切るのは時期尚早な部分もある。「今わかっていること」と「まだわからないこと」を区別し、後者については情報を待つという判断も、正しい経営判断だ。
施設長・管理者の今すぐ確認リスト
- 在籍ケアマネの資格更新期限を一覧化した
- 施行(2027年4月見込み)前に期限を迎えるケアマネがいるか確認した
- 研修参加を労働時間として扱う方針について事業所内で検討を始めた
- 都道府県・厚労省からの情報を継続的に確認する担当者を決めた
- 潜在ケアマネの採用可能性について情報収集を始めた
- 経過措置の詳細が固まるまで、大きな制度変更は見送る判断をした
編集長・深瀬久博からひとこと
「もう更新研修はいらない」という期待が現場に広がるのは、無理もないことだ。長年の負担が、ようやく見直される段階に来たのだから。
しかし期待と現実の間には、まだ1年弱の時間がある。
その時間を「待つだけの時間」にするか、「準備する時間」にするかで、2027年4月を迎えたときの現場の混乱度は大きく変わる。
事業所に新たな義務が課されることも忘れてはいけない。ケアマネの負担が減る分、事業所が引き受ける責任は増える。
「制度が変わるから対応する」のではなく、「制度が変わる前に準備する」施設長であってほしい。