ケアマネ更新制廃止の施行は2027年12月へ――施設長が「今すぐ」ではなく「今月から」備えるべき5つの理由
ケアマネ資格の更新制廃止は成立済みですが、施行日は2027年12月1日とする政令案が示されています。それまでは現行の更新制が続きます。研修の労働時間化・事業者の報告義務・経過措置の不確定要素まで、施設長が今月から動くべき準備を解説します。
【2026年10月17日 訂正】施行日を「2027年4月」から「2027年12月1日」に修正しました
公開当初、この記事は施行日を「2027年4月が見込み」としていました。これは改正法全体の原則的な施行日(2027年4月1日)にもとづく記載でしたが、ケアマネの更新制廃止は、改正法の附則で「公布後1年6月以内に政令で定める日」と別に定められています。
2026年9月に公表された政令案で、この施行日は2027年12月1日とされました。政令の公布は2026年11月下旬の予定です。
記事の内容を、この事実にもとづいて修正しました。読者の皆さまにお詫びいたします。

この記事でわかること
- 「成立」と「施行」の間にある約1年弱の意味
- 施行までに現行の更新制が続くという重要な事実
- 事業者に新たに課される3つの義務
- 研修の「労働時間化」が経営に与える影響
- 今月から動くべき5つの具体的な準備
はじめに:「もう関係ない」と思った施設長へ
前回の記事で、ケアマネ資格の更新制廃止が2026年6月19日に国会で成立したことをお伝えした。
その後、「もう更新研修は受けなくていいんですよね」という問い合わせが現場から相次いでいることがわかった。
正直に言う。それは誤解だ。
法律が成立したことと、実際にその内容が施行されることの間には、1年半近い準備期間があります。施行日は2027年12月1日とする政令案が示されており、それまでは現行の更新制がそのまま続きます。
この記事では、「成立」と「施行」のギャップを正確に理解し、施設長が今月から動くべき理由を解説する。
なぜ、更新制は廃止されることになったのか
そもそも更新制は、ケアマネジャーの専門性を維持するために設けられた制度だった。それがなぜ廃止に向かったのか。背景を押さえておくと、今後の研修制度がどう設計されるかも読みやすくなる。
背景①:更新制が、担い手不足の一因になっていた
ケアマネの高齢化や、介護職との賃金の逆転といった要因に加えて、更新にかかる時間と費用の負担によって資格を手放す人が生じていた。専門性を保つための制度が、結果として担い手を減らす方向に働いていたことになる。
背景②:研修の負担が重かった
厚生労働省の資料によると、更新のための法定研修について、受講料を「全額自分で負担している」ケアマネジャーが34.0%いた。事業所が全額を負担しているケースは半数程度で、残りは一部負担または自己負担だった。
研修は数日間にわたるものが多く、その間の業務は他の職員が引き受けることになる。受講料に加えて、交通費や、抜けた分を埋めるコストもかかる。時間と費用の両方が、この仕事を続けにくくする要因になっていた。
背景③:賃金の問題と重なっていた
介護職からケアマネに移ると、かえって収入が下がるという指摘もある。仕事の責任は増えるのに収入が増えないという構造が、更新制の負担と重なっていた。
2026年6月の処遇改善加算の対象拡大にケアマネも含まれたが、構造的な賃金の問題が解消されたとまでは言えず、居宅介護支援の単価そのものの引き上げを求める声も根強い。
「成立」と「施行」は別物だと理解する
法律ができるまでの正確なステップ
今回の改正は、以下のステップを踏んでいます。
- 2026年4月3日:政府が改正案を閣議決定、国会に提出
- 2026年6月19日:参議院本会議で可決・成立
- 2026年6月25日:公布(令和8年法律第51号)
- 2026年9月7日:施行日などを定める政令案を公表、意見募集を開始
- 2026年11月下旬(予定):政令の公布
- 2027年12月1日(予定):施行
ここで注意が必要なのは、改正法の中でも、規定によって施行日が違うことです。
| 改正の内容 | 施行日 |
|---|---|
| 改正法の原則 | 2027年4月1日 |
| ケアマネの更新制廃止・法定研修の見直し | 2027年12月1日(政令案) |
| 有料老人ホームの登録制度ほか | 公布から2年以内に政令で定める日 |
| 介護被保険者証の見直しほか | 公布から3年以内に政令で定める日 |
ケアマネの更新制廃止は、改正法の附則第1条第2号に定められており、「公布の日から1年6月以内に政令で定める日」から施行されます。2026年9月に公表された政令案で、その日が2027年12月1日とされました。
つまり今、何が起きているのか
法律は成立しましたが、施行はまだ1年以上先です。
施行までの期間、現行の更新制(5年ごとの更新研修)はそのまま続きます。
「資格更新の時期が近いから、廃止を待とう」と考えるのは危険です。施行前に更新期限を迎えるケアマネは、従来どおり更新手続きが必要になります。
特に注意が必要なのは、2027年4月から11月に有効期限を迎えるケアマネです。改正法の原則的な施行日が2027年4月1日であるため、「4月には廃止されるだろう」と考えて更新研修を受けないと、資格が失効します。
施行までに事業者に課される3つの義務
更新制の廃止は「ケアマネの負担が減る」という話だけでは終わらない。同時に、事業者側に新たな義務が課されることになっている。
義務①:雇用するケアマネの状況報告
事業者は、雇用するケアマネジャーの氏名・業務への従事状況などを、都道府県知事に報告する義務を負う。
これまで「資格証を持っているか」を確認するだけだった管理業務が、より積極的な報告義務に変わる。
義務②:研修受講機会の確保
事業者には、ケアマネが法定研修を受講できるよう、受講機会の確保等の措置を講じる義務が課される。
具体的には、研修参加のためのシフト調整・出張対応・費用負担などが想定されている。これに違反した事業者には、知事による勧告・命令・公表といった措置が行われる規定が整備された。
義務③:研修を「労働時間」として扱う
これが経営上、最も重要な変化だ。
研修を受ける時間を労働時間として扱うよう、都道府県から事業所へ周知される見込みとなっている。これまで多くの事業所で「個人の自己研鑽」「自己負担」として扱われてきた研修参加が、今後は事業所の負担として明確化される方向だ。
ケアマネ3名の居宅介護支援事業所を例にすると、現行制度では5年に1回の更新研修にかかる費用(研修費・交通費・代替対応コスト)は1名あたり10〜20万円程度、3名で5年間に30〜60万円の負担になることがあった。新制度では年6〜7時間程度の定期研修が想定されており、これを労働時間として扱うことが求められれば、研修費の個人負担化は制度的に難しくなる。
つまり、事業所として年間の研修費・研修時間を予算に計上する必要が出てくる。
未受講者へのペナルティも強化される
研修受講の実効性を担保するため、知事の監督権限が強化される。
正当な理由なく研修を受けないケアマネジャーに対しては、知事が受講を命じることができ、その命令に従わない場合は、最長1年間の業務従事禁止という処分が下される可能性がある。
「更新制がなくなったから、もう気楽だ」という認識は正確ではない。研修を受けない場合のペナルティは、むしろ明確化されている。
受験資格の緩和も同時に進む
更新制廃止と並行して、ケアマネ試験の受験資格にも変化がある。
- 必要な実務経験:現行の5年から3年に短縮
- 受験対象資格の拡大:診療放射線技師・臨床検査技師・臨床工学技士・救急救命士・公認心理師などが新たに追加される方向
これにより、2027年度以降のケアマネ試験で受験者数・合格者数が増加する見込みとなっている。全国に約60万人いるとされる潜在ケアマネ(資格を持つが現場を離れている人材)の一部が現場復帰すれば、中長期的なケアマネ不足の緩和につながる可能性がある。
「資格が失効している人」が、採用候補に戻る可能性
これまで、更新研修を受けられずに資格を失効させた人が一定数いる。
今回の法改正にあわせて、すでに失効している場合の再研修の扱いについても検討が進められている。資格を持ちながら現場を離れている人の復帰を後押しする方向だ。
これは採用の観点で意味がある。「資格が失効しているから採用できない」と考えていた人材が、今後の制度整備によって再び採用の候補になる可能性があるということだ。
すぐに動ける話ではないが、採用計画を立てるときに、選択肢の1つとして頭の片隅に置いておきたい。
研修制度そのものも、見直しが検討されている
更新制の廃止とあわせて、研修制度についても次のような見直しが検討されている。
| 検討されている内容 | 概要 |
|---|---|
| オンライン受講の全国実施 | 会場への移動負担をなくし、受講しやすくする |
| 研修時間の短縮 | 演習時間が長すぎるという声に対応する |
| 失効している場合の再研修の見直し | 資格を手放した人材の復帰を後押しする |
いずれも「今後検討を続ける」とされている段階で、具体的な内容や実施時期は決まっていない。研修が受けやすくなる方向であることは間違いないが、現時点で確定した制度として職員に説明するのは避けたほうがよい。
経過措置の「不確定要素」に注意する
施行日は政令案で示されましたが、政令はまだ公布されていません(2026年11月下旬の予定)。また、施行日が決まっても、次の点は今後の省令等で定められます。
現時点で、以下の点はまだ確定していない。
- 施行前に資格証の有効期限が切れる場合の対応:政令・省令で今後定められる予定
- 施行をまたぐ更新研修の取り扱い:詳細は未確定
- 研修科目・時間数の具体的な内容:今後制定される省令によって決定される
これらは「今後決まること」であり、現時点で確定的な対応策を示すことはできない。施設長としては、情報が更新されるたびに確認する体制を持つことが重要になる。
施設長が今月から備えるべき5つのこと
備え①:在籍ケアマネの資格更新期限を一覧化する
施行(2027年12月1日の予定)より前に更新期限を迎えるケアマネがいる場合、現行制度のもとで更新手続きが必要になります。まず一覧化し、いつ誰が更新時期を迎えるかを把握してください。
備え②:研修時間の「労働時間化」を見据えた予算計画を立てる
施行後、研修参加が労働時間として扱われる方向性が示されている。今のうちから、研修参加にかかる人件費・代替職員のコストを、将来の予算計画に織り込んでおくことを推奨する。
備え③:情報を継続的に確認する担当者を決める
省令・政令の詳細は今後固まっていく。都道府県の介護保険担当課からの通知、厚生労働省の介護保険最新情報を定期的に確認する担当者を、施設内で一人決めておくとよい。
備え④:潜在ケアマネの採用可能性を視野に入れる
受験資格の緩和・受験対象資格の拡大により、2027年度以降はケアマネの供給が増える可能性がある。今のうちから、採用計画の見直しタイミングを意識しておくことを推奨する。
備え⑤:「焦って動かない」という判断も正しい
経過措置の詳細が固まっていない以上、現時点で大きな制度変更(研修費の負担方針の刷新等)に踏み切るのは時期尚早な部分もある。「今わかっていること」と「まだわからないこと」を区別し、後者については情報を待つという判断も、正しい経営判断だ。
施設長・管理者の今すぐ確認リスト
- 在籍ケアマネの資格更新期限を一覧化した
- 施行(2027年12月1日の予定)前に期限を迎えるケアマネがいるか確認した
- 特に2027年4月〜11月に期限を迎えるケアマネがいないか確認した
- 研修参加を労働時間として扱う方針について事業所内で検討を始めた
- 都道府県・厚労省からの情報を継続的に確認する担当者を決めた
- 潜在ケアマネの採用可能性について情報収集を始めた
- 経過措置の詳細が固まるまで、大きな制度変更は見送る判断をした
この記事の出典
- 厚生労働省「社会福祉法等の一部を改正する法律」(令和8年6月25日公布)および関連資料
- 厚生労働省 老健局「ケアマネジメントに係る現状・課題」(ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会 参考資料)
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001244391.pdf - 令和4年度 老人保健健康増進等事業「介護支援専門員の資質向上に資する研修等のあり方に関する調査研究事業」(株式会社日本総合研究所)
- 厚生労働省「介護保険最新情報」各号
- 厚生労働省「社会福祉法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う関係政令の整備に関する政令案」(概要。意見募集期間:2026年9月7日〜10月7日)
https://public-comment.e-gov.go.jp/pcm/detail?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=495260180&Mode=0
※本記事は2026年9月時点で公表されている情報をもとにしています。施行時期・経過措置・研修制度の詳細は、今後の政令・省令によって変わる可能性があります。実際の対応にあたっては、都道府県の介護保険担当課にご確認ください。
編集長より
「もう更新研修はいらない」という期待が現場に広がるのは、無理もないことだ。長年の負担が、ようやく見直される段階に来たのだから。
しかし期待と現実の間には、まだ1年弱の時間がある。
その時間を「待つだけの時間」にするか、「準備する時間」にするかで、施行を迎えたときの現場の混乱度は大きく変わる。
事業所に新たな義務が課されることも忘れてはいけない。ケアマネの負担が減る分、事業所が引き受ける責任は増える。
「制度が変わるから対応する」のではなく、「制度が変わる前に準備する」施設長であってほしい。