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    居宅・人材戦略 2026.05.22 約18分で読了

    ケアマネ不足を救う
    ――居宅介護支援の働き方改革と、定着率を底上げする5つの実践

    介護支援専門員(ケアマネジャー)の受験者数はピーク時の約1/3、合格者の平均年齢は50代――居宅介護支援事業所の現場では『辞めたら、もう次が来ない』が現実になっています。本記事では、ケアマネ不足の構造/2027年度改定の論点/働き方改革5施策/事業所連携モデル/報酬とキャリアパスまで、いまから着手できる定着戦略を、編集長・深瀬久博が整理します。

    ケアプランの山に囲まれて働く居宅介護支援事業所のケアマネジャー
    深瀬久博
    執筆
    深瀬 久博 / 情熱介護 編集長
    介護福祉士・社会福祉士・認知症ケア専門士・産業ケアマネ(3級)・ストレスチェック実施者
    編集長よりケアマネ不足は、もはや『募集しても来ない』段階を超え、『辞めさせない』しかない局面に入っています。新規流入が細る以上、いまいる人を疲弊させない仕組みを作ることが、事業所存続の唯一の戦略です。本記事は、その『辞めさせない仕組み』を組み立てるための実践書として書きます。

    1. ケアマネ不足の『いま』を、数字で見る

    受験者数はピーク時の約1/3

    介護支援専門員実務研修受講試験の受験者数は、2014年度の約17.4万人をピークに減少を続け、近年は5〜6万人台で推移しています(ピーク比約1/3)。受験者の絶対数が細るなか、合格者の平均年齢は50代後半。新規参入が減り、現役世代の高齢化が同時進行しています。

    居宅介護支援事業所の倒産・休廃止も増加

    ケアマネが配置できず、事業継続を断念する居宅介護支援事業所も増えています。『辞めたら次が来ない』『管理者の引退で閉所』が地方では珍しくありません。地域包括ケアの『要』であるケアマネが消えれば、利用者は行き場を失い、サービス全体が連鎖的に縮みます。

    約1/3
    ケアマネ試験 受験者数のピーク比(2014→近年)
    出典:厚労省 介護支援専門員試験実施状況
    50代後半
    近年の合格者の平均年齢層
    出典:厚労省 介護支援専門員実態
    45件→49件
    居宅介護支援費 逓減制の基準件数(ICT等活用で緩和)
    出典:厚労省 令和6年度介護報酬改定
    募集しても、もう来ない。
    辞めさせない仕組みだけが、
    これからの戦略になる。

    2. なぜケアマネは『増えず、減る』のか――5つの構造

    ケアマネジャーが管理者と一緒にケアプランを検討している場面
    構造を理解しないまま打つ施策は、必ず空振りする。

    構造① 受験要件の厳格化で『なる人』が減った

    2018年度から受験資格が厳格化され、福祉系国家資格+実務5年などの要件に絞られました。介護現場からの『キャリアアップの王道』だったケアマネの入口が狭くなり、結果として受験者数が構造的に半減しました。

    構造② 業務範囲の『無限拡張』

    本来のケアプラン作成・モニタリングに加え、サ高住・有料の入居調整、ゴミ出し、買い物、家族対応、苦情処理、行政文書代行まで、現場の『便利屋』として業務が膨張。ケアマネ業務の範囲を線引きできない事業所ほど、職員の疲弊と離職が早く来ます。

    構造③ 報酬が『労力に見合わない』

    居宅介護支援費は積み上げ式で利益率が低く、管理者の経営的負担も重い。介護福祉士・看護師に戻った方が時給が高いという逆転現象すら起きています。資格取得のコストに見合うリターンが見えにくい。

    構造④ 法定研修の負担が大きい

    主任ケアマネ研修・更新研修・専門研修――合計で数十時間〜100時間規模の研修が、現場業務と並行して求められます。研修参加のための代替要員確保が難しく、結局休日返上で受講する構造に。

    構造⑤ 『孤独な専門職』である

    居宅介護支援事業所は1〜3名規模も多く、ケアマネは事実上『一人職場』になりがち。困難事例・虐待対応・看取り判断などを単独で抱え込み、バーンアウトに至るケースも少なくありません。

    3. 2027年度改定で何が変わるか――居宅介護支援の論点

    論点① 担当件数上限・逓減制の再見直し

    2024年度改定でケアプランデータ連携・ICT活用や事務職員配置を条件に、居宅介護支援費の逓減制基準が45件→49件相当に緩和されました。2027年度改定では、ICT前提のさらなる緩和逓減制の見直しが論点化される見込みです。詳細は2027年度改定大予測を参照。

    論点② 居宅介護支援費の本体報酬の評価

    ケアマネ不足の深刻化を受け、社会保障審議会では居宅介護支援費の引き上げ特定事業所加算の要件再編が継続的に議論されています。経営の屋台骨に関わる改定になります。

    論点③ 主任ケアマネ要件・管理者要件の運用

    居宅介護支援事業所の管理者は『主任介護支援専門員』であることが原則となっており、確保困難な地域に経過措置が続いています。経過措置の延長/要件の再緩和が論点となる見込みです。

    4. 働き方改革5施策――辞めさせないための実装

    ICTツールを活用してオンライン会議を行うケアマネジャー
    テクノロジーは、ケアマネの『時間を取り戻す』ためにある。

    施策① ケアプランデータ連携システムの導入

    国保連経由のケアプランデータ連携システムを導入すれば、サービス事業所との予定・実績のやりとりが電子化され、月末月初のFAX地獄が消えます。担当件数上限緩和の要件にも直結。

    施策② 訪問・モニタリングの記録ICT化

    タブレット・スマホ+音声入力で、訪問先での記録を完結。事業所に戻ってからの『記録残業』を週5〜10時間単位で削減できます。介護テクノロジー導入支援事業の補助対象です。

    施策③ 『業務範囲の線引き』の明文化

    『ケアマネがやる仕事/やらない仕事』を文書化し、利用者・家族・サービス事業所と共有。便利屋化を組織として止める合意形成が、職員を守る最大の盾になります。

    施策④ オンライン・モニタリングの活用

    一定条件下で、月1回のモニタリング訪問をテレビ電話で代替できる運用が制度化されています。安全確保と利用者同意を前提に、効果的に組み込むことで移動時間を圧縮できます。

    施策⑤ ハラスメント・困難事例の『一人で抱えさせない』仕組み

    訪問先でのカスハラ、家族間調整、虐待疑い――一人で対応しないルール(複数訪問・主任CMバックアップ・地域包括との連携記録)を組織標準にする。

    5. 事業所連携モデル――『一人事業所』から抜け出す

    モデル① 地域内ケアマネ連絡会の活用

    市町村単位のケアマネ連絡会・職能団体(日本介護支援専門員協会)を、困難事例の相談ボードとして機能させる。所属のケアマネが孤立しない仕組みづくりは、管理者の重要な仕事です。

    モデル② 法人内・グループ内での『主任CMバックアップ』

    同一法人内に複数の居宅介護支援事業所がある場合、主任介護支援専門員のスーパービジョン体制を法人横断で組む。新任ケアマネの定着率が大きく上がります。

    モデル③ 地域包括支援センターとの『役割の再線引き』

    総合相談・権利擁護・予防プランなど、本来は包括が担う領域がケアマネに流れがちです。運営協議会・連絡会で役割線を引き直すことが、現場負担の軽減につながります。

    6. 報酬・処遇・キャリアパスの『見せ方』

    ① 処遇改善加算は『ケアマネにも分配できる』

    2024年6月一本化以降、事業所裁量で配分対象を広げられる柔軟性が増しました。居宅介護支援事業所単独では加算対象外ですが、法人内介護サービス事業所と一体運用するなかでケアマネ処遇に間接的に反映する設計が可能です。詳細は処遇改善加算完全活用ガイドを参照。

    ② 主任ケアマネ・特定事業所加算でキャリアパスを描く

    特定事業所加算(Ⅰ〜Ⅲ)の取得は、収益と人材育成の両輪。主任ケアマネへの段階的育成計画を、入職時に提示できる事業所は強い。

    ③ 法定研修コストを『事業所負担』として明示する

    更新研修・専門研修の受講料・代替要員コスト・有給扱いを事業所が負担することを明文化。研修負担を個人に押しつけない姿勢が、定着の決め手になります。

    7. 今すぐやるべき、3つのアクション

    No.アクション期限効果
    01『ケアマネがやる仕事/やらない仕事』を文書化し、利用者・家族・連携事業所に配布今月中便利屋化の組織的歯止め
    02ケアプランデータ連携システムの導入を申請(補助金併用)3ヶ月以内月末事務の電子化/件数上限緩和の要件化
    03主任CMによるスーパービジョン会議を月2回/法人内連携を制度化2ヶ月以内孤立防止/新任定着率向上

    8. 管理者セルフチェック10項目

    • 過去2年のケアマネ離職者数・離職理由を把握している
    • 『ケアマネ業務範囲』を文書化し、関係者と共有している
    • ケアプランデータ連携システムを導入済み or 導入計画がある
    • 訪問・モニタリング記録のICT化/音声入力を実装している
    • オンライン・モニタリングを規定に沿って活用している
    • 困難事例・カスハラ事案を一人で抱えさせない運用ルールがある
    • 地域のケアマネ連絡会・職能団体に所属職員を参加させている
    • 主任CMによるスーパービジョンを月次で実施している
    • 更新・専門研修の費用と代替要員を事業所負担としている
    • 処遇改善加算の配分にケアマネ職を視野に入れた設計をしている
    編集長より、最後にケアマネは『地域包括ケアの最後の砦』です。要を失えば、利用者も、サービス事業所も、家族も、行き場を失います。だからこそ――辞めさせない設計を、いま、組織として持つこと。施策の数より、『一人にしない』という意思が、最後にケアマネを残すのだと思います。

    9. 参考資料・出典

    1. 厚生労働省「介護支援専門員実務研修受講試験 実施状況」
    2. 厚生労働省 社会保障審議会 介護給付費分科会 居宅介護支援関連資料
    3. 厚生労働省「令和6年度 介護報酬改定の概要(居宅介護支援)」
    4. 日本介護支援専門員協会 各種調査・提言
    5. 厚生労働省「ケアプランデータ連携システム 運用要領」
    6. 福祉医療機構(WAM)「居宅介護支援事業所の経営状況」

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    本記事に記載する数値・制度内容は、本稿執筆時点(2026年5月)までに公表されている厚生労働省、社会保障審議会介護給付費分科会、日本介護支援専門員協会、福祉医療機構(WAM)等の公表資料に基づきます。担当件数上限・特定事業所加算要件など、自治体運用の詳細や最新の改定動向は、必ず公式資料および所管行政・職能団体への確認をお願いします。