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    制度・報酬改定 2026.09.22更新日:2026.10.12 約9分で読了

    住宅型有料老人ホームの「登録基準」案が示された
    日中常駐・夜間オンコール・ケアマネの独立性、施設長が今から確認すべきこと

    夕暮れどきの住宅型有料老人ホームの外観と、明かりのついた玄関
    深瀬久博
    執筆・監修
    深瀬 久博 / 情熱介護 編集長
    精神保健福祉士・社会福祉士・介護支援専門員・介護福祉士・認知症ケア専門士・産業ケアマネ(3級)・ストレスチェック実施者

    住宅型有料老人ホームは、これまで「届出」をすれば運営できる仕組みでした。人員配置についても、国の指導指針はあっても、法的な拘束力のある基準はありませんでした。

    それが大きく変わろうとしています。2026年6月に成立した法律で、一定の住宅型ホームは都道府県の「登録」を受けなければ運営できない仕組みになりました。そして9月18日、厚生労働省は検討会で、登録を受けるために守るべき「登録基準」の案を示しました。

    人員配置、夜間の体制、契約のルール、いわゆる「囲い込み」対策まで、案の内容は多岐にわたります。現時点では案の段階で、具体的な規定は今後変わる可能性があります。この記事では、検討会の資料をもとに、案の中身と今後のスケジュール、施設長が今から確認しておきたいことを整理します。

    【2026年10月12日 追記】登録基準がとりまとめられ、施行は2027年12月に

    この記事は、登録基準が「案」として示された時点(2026年9月18日の検討会)で書いたものです。その後、2026年10月9日の第10回検討会で登録基準の骨子がとりまとめられ、施行のスケジュールも示されました。

    登録制の施行は2027年12月、既存ホームの移行には1年間の経過措置(2028年12月まで)が設けられる予定です。政省令は2026年内に公布される見込みです。

    記事の最後に追記した「とりまとめで何が決まったか」もあわせてご覧ください。

    登録制とは何か、いつから始まるのか

    2026年6月25日に公布された「社会福祉法等の一部を改正する法律」により、老人福祉法が改正され、有料老人ホームに登録制が導入されることになりました。

    登録を受けるには、都道府県の条例で定める基準に適合していることが必要です。その条例の土台になるのが、国が省令で定める基準です。今回示されたのは、この国の基準の案です。

    この記事を公開した時点では、施行時期は「法律の公布日から2年を超えない範囲で、政令で定める日」とされているだけでした。

    その後、2026年10月9日の検討会で登録基準がとりまとめられ、施行は2027年12月、既存ホームの移行の経過措置は1年間(2028年12月まで)とする方針が示されました。詳しくは、記事の最後に追記した章をご覧ください。

    対象になるホーム

    登録制の対象は、入居者の安全確保や認知症・医療ニーズへの対応の必要性が高いホームです。案では、次のような人を入居対象としているホームが対象になるとされています。

    • 中重度の要介護者
    • 認知症の日常生活自立度がⅢ以上の要介護者
    • 重度の医療ニーズがある、または一定の医療行為を受ける要介護者

    ポイントは、今そうした入居者がいるかどうかではなく、入居対象にしているかどうかで判断されることです。中重度になっても住み続けられるホームも対象になるため、資料では、既存のホームの大半が登録制の対象になるとしています。

    なお、特定施設(介護付き有料老人ホーム)やサービス付き高齢者向け住宅として、すでに行政の確認を受けているホームについては、登録の手続きを簡素にする案が示されています。

    人員に関する基準の案

    今回、最も注目されているのが人員配置です。案の内容は次のとおりです。

    職種登録基準の案
    管理者・生活相談員それぞれ1名以上。支障がなければ、施設内や他施設の職務と兼務できる
    介護職員・看護職員提供する介護等の内容に応じ、介護等の安定的な提供に支障がない体制を確保する(原則、夜間を除きホームの職員が常駐)
    夜間・緊急時いわゆるオンコールにより、対応できる体制を確保する
    栄養士食事を提供する場合、栄養士または管理栄養士の関与のもとで献立を作成するなど、入居者の状態に応じた栄養管理ができる体制を確保する
    機能訓練指導員機能訓練を行う場合、その内容に応じて確保する

    ここでいう「オンコール」とは、入居者からの連絡や通報装置などで状況を把握し、必要な場合には職員(連携先を含む)が駆けつけられる体制のことです。夜間に職員の常駐までは求めず、駆けつけられる体制を義務にする、という案です。

    報道によると、この人員配置の考え方は、これまでの国の指導指針をおおむね踏襲した内容です。ただし、これまでは指針にすぎなかったものが、登録制のもとでは満たさなければ原則として運営できない基準になります。規制の実効性は、これまでより強くなります。

    新たに義務を課すものについては、一定の経過措置期間(猶予期間)を設ける案も示されています。

    検討会では、両方向の意見が出ている

    人員基準については、検討会の中でも意見が分かれています。

    これまでの検討会では、要介護者が多く住む以上、災害対応も含めて24時間建物内に人を置くべきという意見や、中重度の要介護者や看取りの人まで受け入れるなら、特定施設と同じような安心が保障される配置にすべきという意見が出ています。

    一方で、住宅型ホームは住まいであって施設ではない、配置した人件費は入居者の負担に跳ね返る、人材不足の中で基準を満たせず撤退する事業者が出ては本末転倒だ、といった意見も出ています。

    9月18日の検討会でも、夜間の体制をより充実させるべきという意見と、現場の実情に合った柔軟な基準を求める意見の両方があったと報じられています。最終的な基準がどちらに寄るかは、今後の議論次第です。

    運営と契約に関する基準の案

    人員配置のほかにも、運営や契約について、幅広い基準の案が示されています。

    サービスの質の確保として、職員への定期的な研修、虐待防止と身体拘束の適正化、事故発生時の対応、災害や感染症を想定した業務継続計画(BCP)の策定、協力医療機関を定めること、看取りまで行うホームでは看取り指針の整備などが挙げられています。

    設備については、居室は原則個室で、1人あたり13㎡以上とする案です。ただし、既存の建物を活用したホームで基準を満たせない場合は、代わりの措置を講じて入居者に説明することなどを条件に、当面の特例を設ける案になっています。

    「囲い込み」対策の基準

    特に施設長が注意したいのが、いわゆる「囲い込み」への対策です。案では、次のような内容が登録基準に盛り込まれています。

    分類登録基準の案
    契約で禁止される条件併設・関連の介護サービス事業所、ケアマネ事業所、医療機関、訪問看護、薬局などの利用を入居の条件にすること。かかりつけ医や担当ケアマネの変更を強要すること
    禁止される優遇関連の事業所を使う場合に、家賃を安くするなどの優遇をすること
    入居者保護入院や心身の状況の変化を理由に、合意なく居室を変えたり、契約を解約したりする条件を付けること
    ケアマネの独立性入居契約とケアマネジメント契約の独立性を担保する措置(手順書・ガイドラインの策定と重要事項説明での明示、施設長・管理者への研修、相談担当者の設置など)
    情報提供と会計近隣の介護サービス事業所を入居者に情報提供すること。ホーム事業と介護サービス事業の会計を明確に区分すること

    ※地方などで利用できる事業所が限られ、その事業所の利用が事実上不可欠な場合は、そのこと自体が不当な条件とはみなされない、とされています。

    あわせて、入居者紹介事業者を使う場合に、入居希望者の介護度や医療の必要度に応じて手数料を設定するなど、誤解を与えるような手数料設定をしないことも基準の案に含まれています。

    登録しないホームも「ほぼ同じ」ルールに

    登録制の対象にならないホームについても、入居者の尊厳の保持や適切な処遇はすべてのホームに求められるとして、登録基準とおおむね同様の事項を守るべき事項として定める案が示されています。

    施設長が今から確認しておきたい3つのこと

    政省令が公布されるのは年内の予定で、具体的な内容はまだ変わる可能性があります。ただ、今のうちに自施設の状況を確認しておくことで、決まってから慌てずに済みます。

    1. 自施設の夜間体制を「説明できる形」にしておく

    案では、夜間はオンコールで対応できる体制を求めています。今の夜間体制は、誰が、どの手段で状況を把握し、どのくらいの時間で駆けつけられるのか。併設事業所の職員が兼務している場合、その関係は整理されているか。まずは現状を書き出してみることをおすすめします。

    2. 入居契約書と重要事項説明書を見直す

    併設事業所の利用を条件にしていないか、ケアマネの変更を促すような運用になっていないか、入院時の居室変更や解約の条件が入居者に不利になっていないか。契約書だけでなく、入居相談の場で職員がどう説明しているかも含めて確認しておきたいところです。

    3. 「施設長・管理者への研修」「相談担当者」を誰が担うかを考えておく

    ケアマネの独立性を担保する措置として、施設長・管理者への研修や相談担当者の設置が案に含まれています。基準が決まったとき、誰がその役割を担うのか。今の体制で無理なく回せるのかを、早めに考えておく価値があります。

    基準を満たす体制を、誰が支えるのか

    新しい基準は、入居者の安全と尊厳を守るためのものです。一方で、基準を満たすための負担が、特定の職員に偏ってしまう危険もあります。

    夜間のオンコールを、いつも同じ管理者が引き受けている。研修も相談対応も、施設長一人が抱えている。そうした状態は、基準を満たしていても長くは続きません。担っている人が疲弊して辞めてしまえば、体制そのものが崩れます。

    登録制への移行は、体制を整え直すきっかけにもなります。基準を満たすことと、その体制を支える職員が働き続けられることを、セットで考える。採用で穴を埋め続けるのではなく、今いる職員で無理なく回る仕組みをつくることが、登録制の時代を乗り切る土台になると考えます。

    今後、検討会の取りまとめや政省令の内容が示されたら、情熱介護でも改めてお伝えします。

    【2026年10月 追記】とりまとめで何が決まったか

    2026年10月9日の第10回検討会で、厚生労働省は「登録制の施行に向けた対応について(まとめ)」を示し、構成員からおおむね了承を得ました。今後は社会保障審議会・介護保険部会に報告されたうえで、政省令の整備が進みます。

    施行スケジュールが示されました

    時期内容
    2026年内政省令の公布(予定)
    2026〜2027年度都道府県等による条例の制定、自治体向け説明会、新たな登録システムの構築
    2027年12月登録制の施行
    2027年12月〜2028年12月既存ホームの移行に係る経過措置期間(1年間)
    2028年12月経過措置期間の終了

    準備に使える時間は、実質的に1年以上あります。ただし、入居者への説明、契約書類の見直し、申請の準備は、施行前の期間に行うものとして想定されています。

    なお、参考として、ケアプランの作成を担う「登録施設介護(予防)支援」の創設については、公布後3年以内に政令で定める日が施行日とされており、登録制とは時期が異なります。

    登録の対象になるホームの範囲

    対象は、中重度の要介護者を入居対象とするホームに加えて、次のホームとされました。

    • 要介護者であって、認知症の日常生活自立度がⅢ以上である者を入居対象とするホーム
    • 要介護者であって、一定の医療ニーズを有する者を入居対象とするホーム

    「一定の医療ニーズを有する者」の具体的な範囲は、今後の解釈通知等で示されます。

    検討会では、「要介護認定を受けていない医療ニーズの高い人を集めることで、登録から外れる抜け道になりかねない」という懸念も出されました。運用の詳細は、通知を待つことになります。

    登録の申請に必要になる書類

    申請書には、施設の名称、入居対象者、ホームで提供する介護等の内容、他の介護サービス事業者と提携する場合はその情報、入居者紹介事業者を使う場合の手数料設定の考え方などを記載することが求められます。

    添付書類として、次のものが挙げられています。

    • 誓約書(登録を拒否される事由に当てはまらないこと)
    • 入居契約に係る約款
    • 重要事項説明書(入居対象者、提供する介護等の内容、提携先の情報、職員配置などを記載)
    • 入居契約とケアマネジメント契約の独立性、ケアマネジャーの独立性の担保に関する書類
    • 決算書・財務諸表等

    すでに特定施設の指定を受けているホームや、サービス付き高齢者向け住宅として登録しているホームは、手続きが簡素化されます。行政がすでに一定の基準を確認しているためです。

    夜間・緊急時の体制は、案のとおりに

    人員に関する基準は、9月に示された案から大きく変わっていません。夜間・緊急時は、職員の配置またはオンコールによって対応できる体制を確保することが求められます。

    ただし、オンコールの中身について、資料では「職員(連携先を含む)が出勤できる体制」としたうえで、ホームが責任をもって速やかに対応できる体制を取ることを求めると補足されました。

    検討会では、意見が分かれました。

    • 火災や災害時に、入居者からの通報を前提とするオンコールでは対応できない。少なくとも建物内に職員の配置を求めるべき
    • 一律に夜間の配置基準を厳しくすれば、運営できない事業者が出る。それでは本末転倒
    • オンコールは方法論であり、目的は入居者の安全確保。そのことを解釈通知で十分に示すべき
    • 24時間職員を配置するホームと、オンコールのホームではサービス内容が異なる。契約前に入居者と家族への説明が必要

    最後の意見は、実務に直結します。自施設の夜間体制がどうなっているかを、契約前に説明できる形にしておくことが、今後いっそう求められると考えられます。

    入居者紹介事業の認定制度は2027年度から

    入居者を紹介する事業者について、優良な事業者を認定する制度の検討も進んでいます。紹介手数料の設定などの透明性を高めるため、ホーム事業者、紹介事業者、有識者による協議の場で設計を進め、2027年度から運用を開始する予定です。

    紹介手数料の負担に悩んでいるホームにとっては、事業者を選ぶ判断材料が増えることになります。

    届出のままのホームにも、ほぼ同じルールが適用されます

    登録制の対象にならないホーム(届出ホーム)についても、入居者の尊厳の保持と適切な処遇の確保はすべてのホームに求められるとして、登録基準とおおむね同様の事項を遵守すべき事項として定める方針が、あらためて確認されました。

    「登録の対象外だから関係ない」とはならない点に、注意が必要です。

    編集長より

    「届出」から「登録」に変わるというのは、言葉の上では小さな違いに見えます。しかし実際には、基準を満たしていなければ運営できなくなるということです。これまで指針にとどまっていたものが、守らなければならないルールになります。

    施行は2027年12月、既存のホームには1年間の移行期間があります。まだ先の話に思えるかもしれません。ただ、契約書や重要事項説明書の見直し、入居者やご家族への説明、申請に必要な書類の準備を考えると、余裕のある日程とは言えないはずです。

    住宅型ホームは、制度の隙間を埋めるように広がってきた住まいです。そこで暮らす方が中重度になっても住み続けられるよう、現場は工夫を重ねてきました。今回の規制強化は、その工夫を否定するものではないと受け止めています。

    まずは、自施設の夜間体制を紙に書き出すところから始めてみてください。誰が、どうやって、どれくらいの時間で駆けつけるのか。それを言葉にできることが、登録制への第一歩になります。

    この記事の出典

    ※本記事は2026年9月18日の検討会資料をもとに執筆し、2026年10月9日のとりまとめ内容を追記したものです。政省令等の具体的な規定は、今後の検討により変更となる可能性があります。実際の運用にあたっては、都道府県等の最新情報をご確認ください。

    深瀬久博
    この記事を書いた人
    深瀬 久博(情熱介護 編集長)
    重度認知症デイケアでの臨床経験を経て、大手有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅の管理者を歴任。現在は介護現場の管理職・経営層に向けた研修講師として全国に登壇。
    精神保健福祉士・社会福祉士・介護支援専門員・介護福祉士・認知症ケア専門士・産業ケアマネ(3級)・ストレスチェック実施者

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