【2026年最新】
介護事業所の倒産を防ぐ完全ガイド
――訪問介護91件倒産・赤字率45.5%時代の経営者が、今月すべき5つの対策
2025年、訪問介護の倒産は過去最多の91件。事業所のおよそ半数が赤字――この数字を、経営者は『遠い誰かの話』として読んではいけません。本記事では、最新の一次情報をもとに、倒産前に必ず現れる5つの危険信号と、今月から実行できる5つの対策を、編集長・深瀬久博の現場視点とあわせて整理します。

1. 2026年・介護事業所の倒産状況
過去最多を更新した、2025年・訪問介護の倒産件数
東京商工リサーチが2026年1月8日に発表した調査によると、2025年の訪問介護事業所倒産件数は91件(負債総額1,000万円以上)を記録し、介護保険制度開始以来の最多となりました。前年(2024年)の81件から10件増(+12.3%)で、3年連続で過去最高を更新しています。
倒産の内訳は破産(清算型)が86件(94.5%)、民事再生・特別清算など5件(5.5%)。破産が圧倒的に多いということは、倒産に至った事業所の大半が『経営再建の余地がない』状態まで追い込まれていたことを意味します。
業界全体を襲う、赤字経営の実態
倒産だけが問題ではありません。独立行政法人福祉医療機構(WAM)の2023年度経営実態調査によると、訪問介護事業所の赤字率は45.5%に達しています。約半数の事業所が赤字経営を強いられている状況です。訪問介護は小規模事業所が多く、人件費比率が平均74.4%と極めて高いため、わずかな売上減でも即座に赤字転落するリスクを抱えています。
小規模事業所が直面する、構造的な脆さ
倒産した91件のうち、従業員数10人未満が79件(86.8%)、資本金500万円未満が73件(80.2%)を占めています。なぜ小規模事業所がこれほど脆いのか。理由は3つあります。
- ヘルパー1人の離職が経営を直撃。常勤換算5名のうち1名退職で、提供可能サービス時間は20%減。
- 紹介元の喪失リスク。地域包括支援センター・居宅介護支援事業所との関係が切れると、新規利用者がゼロになる。
- 月次売上の変動幅が大きい。入院・退院や家族介護への切替えで、月ごとに±20%変動することも珍しくない。
倒産は、ある日突然ではない。
必ず、半年〜2年前から、
兆候が出ている。
2. 倒産の主な原因を、徹底分析
原因1位:売上不振(82.4%)
2025年に倒産した訪問介護91件のうち、原因として『売上不振』が確認されたのは75件(82.4%)。背景には、2024年度介護報酬改定での訪問介護基本報酬の平均約2%引き下げ、慢性的なヘルパー不足によるサービス提供枠の縮小、軽度者向けサービスを自費や地域支援事業へ誘導する政策の影響、競合増による利用者の奪い合い――これらが同時進行で襲っています。
『2ヶ月後入金』という構造問題
介護報酬は、サービス提供月の翌々月入金です。たとえば4月にサービス提供した場合、入金は6月10日前後。一方で、4月の人件費・家賃・光熱費はすべて先払い。さらに処遇改善加算は四半期ごとの後払い、返戻があれば入金は1〜2ヶ月遅れる――小規模事業所では、月次収支が黒字でも、現預金が枯渇して支払い不能に陥るケースが頻発します。
経営判断の遅延――典型的な失敗パターン
倒産した事業所の多くは、赤字が慢性化してから1〜2年後に倒産しています。典型は、①赤字が出始めても『来月は回復するだろう』と楽観、②手元資金が減っても融資・補助金申請を先延ばし、③スタッフ離職が加速しても具体策を打たない、④気づいたら口座残高が1ヶ月分の人件費を下回り給与遅配、⑤金融機関から追加融資を断られ事業継続不可能――この5段階です。経営者自身が現場に出ており、数字を見る時間が取れていないケースが多く見られます。
3. 倒産前の、5つの危険信号
以下のチェック項目に1つでも該当すれば、今すぐ対策を打つべきです。週末まで待つ必要はありません。
① 現預金残高が、固定費の3ヶ月分を下回っている
直近3ヶ月の平均固定費(人件費+家賃+リース+水道光熱費+通信費)を算出し、現預金残高と比較してください。判定基準:3ヶ月分以上=安全/2〜3ヶ月分=要警戒/1〜2ヶ月分=危険(金融機関・専門家へ即相談)/1ヶ月未満=倒産間近。
② 3ヶ月連続赤字
単月の赤字は珍しくありませんが、3ヶ月連続は構造的問題のサインです。稼働率・人件費比率・加算算定状況のいずれかが、確実にずれています。
③ 国保連返戻が、月3件以上発生している
返戻は『請求知識の不足』ではなく『現場と請求担当の連携不全』が原因のことが多い。返戻1件で1〜2ヶ月の入金遅延が発生するため、キャッシュフローへの打撃は数字以上に大きくなります。
④ 主要スタッフ(サ責・看護師など)の退職意向
サービス提供責任者・看護師・主任ケアマネなど、加算要件に直結する人材の退職は、収益構造そのものを崩します。退職意向を察知した瞬間が、対策のタイムリミットです。
⑤ 処遇改善加算の賃金改善実績が、要件を満たしていない
毎月の賃金台帳と加算支給実績を照合せず、年度末に気づいて返還――この事例は今も後を絶ちません。社会保険労務士への相談を、四半期に1度は入れてください。
4. 倒産を回避する、5つの実践策

対策① 13週間キャッシュフロー予測表を、今週中に作る
今日から13週間(約3ヶ月)先までの『現預金の増減』を週単位で予測する表を作ります。期首残高に、毎週の入金予定(介護報酬/利用者負担/補助金)と支払予定(給与/家賃/リース/社会保険料)を入れ、週ごとの残高を計算するだけ。13週後の残高が固定費2ヶ月分以上なら安全圏、1ヶ月分未満なら緊急対応必須です。Excel/Googleスプレッドシートで十分。会計ソフト(freee/マネーフォワード)のキャッシュフロー機能も使えます。
対策② 新加算より先に『空き枠』を埋める
『新しい加算を取ろう』『ICTを導入しよう』の前に、まず既存サービス提供枠を埋めてください。稼働率80%の事業所が新規加算(+5%)を取得しても、実質増収は『5% × 80% = 4%』。一方、稼働率を80% → 90%に上げれば、増収は+12.5%です。具体策は、①ケアマネへの月1回の御用聞き営業(FAX営業より圧倒的に効く)、②既存利用者の利用回数増加提案、③空き枠の可視化(『火曜午前』『木曜午後』と具体的に伝える)。月間売上200万円なら、年間300万円の増収が見えます。
対策③ 人員配置とシフトの『無駄』をなくす
人手不足だからと管理者・サ責が現場に出すぎていないか。常勤の過重労働と登録ヘルパーの稼働不足が同時発生していないか。訪問先が点在し移動時間が1日2〜3時間に及んでいないか。地域を絞り、登録ヘルパーのシフト希望を丁寧にヒアリングし、管理者は経営・営業に集中する――これだけで、常勤の残業を月30時間削減(年間約60万円のコスト減)も可能です。削減分を登録ヘルパーの時給アップに回せば、採用・定着にも効きます。
対策④ 算定可能な加算を、総点検する
既に要件を満たしているのに算定していない加算が、意外と多く存在します。優先チェックは、特定事業所加算Ⅰ(+20%)・Ⅱ(+10%)、初任者研修修了者(+3%)、サービス提供責任者体制強化加算(+1,000単位/月)。手順は、①現在算定中の加算を一覧化、②算定可能だが未算定の加算を洗い出し、③要件を満たす書類・体制を整備、④次月から算定開始。加算算定には事前の届出が必要なので、都道府県・市区町村の介護保険担当課に必ず確認してください。
対策⑤ 金融機関・専門家に『早めに』相談する
『もう手遅れ』になる前に、必ず外部の専門家に相談してください。相談先と内容は以下のとおりです。
| 相談先 | 主な相談内容 | 費用目安 |
|---|---|---|
| 日本政策金融公庫 | 運転資金融資、セーフティネット貸付 | 金利1.0〜2.0% |
| 地域の信用金庫・信用組合 | 短期運転資金、借り換え | 金利2.0〜3.0% |
| 中小企業基盤整備機構 | 経営相談、事業承継相談 | 無料 |
| 税理士・公認会計士 | 決算書分析、資金繰り改善 | 3〜10万円 |
| 社会保険労務士 | 処遇改善加算、助成金申請 | 3〜5万円 |
| 事業承継・M&A専門会社 | 事業譲渡・M&A | 成功報酬型 |
相談タイミングの目安は、現預金が固定費3ヶ月分を下回ったら今すぐ/3ヶ月連続赤字なら1週間以内/来月の給与が払えない可能性があるなら今日中。一人で抱える時間を、1日でも短くしてください。
5. 規模別・生き残り戦略
小規模訪問介護(常勤換算5名/月商200万円)
サ責1名退職で特定事業所加算Ⅰを喪失、稼働率75%で年商▲360万円、現預金が固定費1ヶ月分を切るケース。打ち手は、①13週キャッシュフロー予測で資金ショート時期を可視化、②日本政策金融公庫から500万円の運転資金融資(金利1.5%)、③サ責候補(介護福祉士)を昇格させ特定事業所加算Ⅱを再取得、④ケアマネ営業を週1回ペースで継続。3ヶ月で稼働率85%まで回復した事例があります。
中規模通所介護(定員40名/月商600万円)
送迎範囲を5km圏内に絞り職員負担を軽減、機能訓練特化型プログラムを導入し個別機能訓練加算Ⅰ・Ⅱを算定開始、ICT記録システムで残業代を月15万円削減、処遇改善加算の再点検でベースアップ等支援加算を追加算定。月商600万円→690万円(+15%)、離職率25%→12%に改善した事例です。初期投資30万円+月額5万円、3ヶ月で投資回収。
大規模特養(定員100名/月商4,000万円)
介護ロボット・見守りセンサー導入(厚労省補助金活用で自己負担300万円)、外国人技能実習生10名受入、大規模修繕の長期借入5,000万円、事業承継準備の開始。人件費比率75%→68%、年間赤字500万円→黒字300万円へ転換した事例です。2年で投資回収、3年目から安定黒字。
6. 最終手段:M&A・事業承継という『責任ある選択』
次の状況に当てはまるなら、M&A・事業譲渡を真剣に検討してください。①後継者がいない(家族・職員ともに承継意思なし)、②現預金が枯渇し追加融資も受けられない、③職員の大量退職で事業継続不可能、④自力での経営再建が現実的でない(赤字3年以上継続)。
M&Aは『失敗』ではない。
利用者と職員の雇用を守る、
責任ある選択肢の一つです。
選択肢は、事業譲渡(M&A)/合併・経営統合/親族内承継/職員承継(MBO)/廃業・清算。成功のポイントは、早めに動く(『もう限界』になってからでは買い手がつかない)/財務状況を整理する/介護業界専門のM&A仲介を選ぶ/利用者・職員への説明を丁寧に行う、の4つです。
7. 今月中に実行すべき、3つのアクション
| No. | アクション | 所要 | 効果 |
|---|---|---|---|
| 01 | 現預金残高を確認し、13週キャッシュフロー予測を作成 | 2時間 | 資金ショート時期を把握 |
| 02 | 空き枠の稼働率を算出し、営業先リストを作成 | 1時間 | 増収施策の優先順位決定 |
| 03 | 算定可能な加算を総点検し、次月から算定開始 | 3時間 | 即座に増収(月10〜50万円) |
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経営の悩みは、お問い合わせから。すべて深瀬が目を通します。
8. 参考資料・出典
- 東京商工リサーチ「2025年訪問介護事業者倒産動向調査」(2026年1月8日公表)
- 独立行政法人福祉医療機構(WAM)「令和5年度(2023年度)訪問介護経営分析参考指標」
- 厚生労働省「令和6年度介護報酬改定について」
- 介護労働安定センター「令和6年度介護労働実態調査」
- 厚生労働省「処遇改善加算に関する基本的考え方/Q&A(令和7年度版)」
- 日本政策金融公庫(融資相談窓口)
- 中小企業基盤整備機構(経営・事業承継相談)
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本記事の数値・調査結果は、東京商工リサーチ、WAM、厚生労働省、介護労働安定センター等の公表資料に基づきます。経営判断にあたっては、最新の一次情報と、税理士・社会保険労務士等の専門家への個別相談を必ずあわせてご確認ください。