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    DX・加算対応 2026.08.03 約9分で読了

    【介護】処遇改善加算Ⅰロの必須要件「現場の課題の見える化」は、何から始めればいいのか
    アンケートより先にやるべきこと

    処遇改善加算のⅠロ・Ⅱロを算定するには、生産性向上に関する取り組みが必要です。そして、そのなかで必ず実施しなければならない項目の一つが、要件⑱「現場の課題の見える化」です。

    ノートに業務時間調査の記録表を書き込み、現場の課題を見える化する介護施設の管理者
    深瀬久博
    執筆・監修
    深瀬 久博 / 情熱介護 編集長
    介護福祉士・社会福祉士・認知症ケア専門士・産業ケアマネ(3級)・ストレスチェック実施者

    制度上の位置づけや、加算全体の取得手順については、別の記事で解説しています(生産性向上推進体制加算の取り方【2026年版】)。

    この記事では、そこから一歩踏み込みます。「見える化」とは、具体的に何をすればいいのか。何から手をつければいいのか。現場での実務に絞って整理します。

    そもそも「見える化」は、何を求めているのか

    要件⑱の正式な文言は、こうです。

    「現場の課題の見える化(課題の抽出、課題の構造化、業務時間調査の実施等)を実施している」

    これは、厚生労働省の「生産性向上ガイドライン」に沿った取り組みを想定しています。ガイドラインでは、生産性向上の手順の2番目に「現場の課題を見える化しよう」という段階が置かれており、要件⑱はこれに対応します。

    つまり、求められているのは3つです。

    • 課題の抽出/現場にどんな困りごとがあるかを、洗い出す。
    • 課題の構造化/洗い出した課題を、整理し、関連づける。
    • 業務時間調査/どの業務に、どれだけ時間がかかっているかを測る。

    「等」とあるので、この3つすべてが必須というわけではありません。ただ、現場の課題を、感覚ではなく目に見える形にする——これが要件の核心です。

    つまずくのは、「いきなり解決策を探す」から

    多くの施設が、ここでつまずきます。

    「見える化」と聞くと、すぐに介護ソフトや見守りセンサーの導入を検討し始めてしまう。あるいは、職員アンケートを配って満足度を測ろうとする。

    しかし、順番が逆です。

    ガイドラインが求めているのは、まず「どこに問題があるか」を突き止めることです。問題の在り処が分からないまま道具を入れても、その道具が課題に合っているかどうか、判断できません。

    清掃や整理整頓(5S)から始める施設もありますが、それも「どの業務に無駄が多いか」が見えていなければ、どこを整理すべきか決められません。

    解決策は、課題が見えたあとの話です。見える化は、その手前の作業です。

    何から始めるか——おすすめは「業務時間調査」

    3つの要素のうち、最初に手をつけやすく、かつ効果が分かりやすいのは、業務時間調査です。

    理由は、特別な道具がいらないからです。紙とペン、あるいは表計算ソフトがあれば始められます。

    やり方は、こうです。1日の業務を時間帯ごとに区切り、どの職員が、いつ、何に、どれだけ時間を使ったかを記録していきます。数日間、これを続けます。

    すると、いくつものことが見えてきます。記録や書類の作成に、想像以上の時間が取られていた。特定の時間帯に業務が集中し、そこで残業が発生していた。同じ内容を、別々の書類に二度書きしていた——。

    ここで大切なのは、「バッファーの時間」と「ムダな時間」を分けて考えることです。急な対応に備えて空けている余裕の時間は、削るべきムダではありません。一方、二度手間や、なくても回る作業は、削れるムダです。この2つを混同すると、現場を追い詰めるだけの改善になってしまいます。

    「課題の抽出」は、職員に聞くのが早い

    業務時間調査が「時間」の見える化なら、課題の抽出は「困りごと」の見える化です。

    ここで、多くの施設が職員アンケートを使います。それ自体は有効ですが、注意点があります。

    匿名性が薄いと、本音が出ないのです。職員20〜100名規模の施設では、「2階の夜勤帯が」と書いた時点で、誰が書いたか分かってしまう。すると、当たり障りのない回答しか集まりません。

    対策としては、設問を「個人を特定しにくい形」にすることです。「あなたの不満は?」ではなく、「この施設で、改善したほうがいいと思う業務は?」と、施設全体の話として尋ねる。回答のハードルが下がります。

    そして、集めた声を整理・分類するのが「構造化」です。バラバラの困りごとを、「人間関係」「業務量」「設備」といった塊に分けていく。こうすると、どの塊が一番大きいか——つまり、最初に手をつけるべき課題が見えてきます。

    「一度やって終わり」にしないために

    ここまでを実施すれば、要件⑱の「見える化」としては形になります。

    ただ、実務として本当に意味があるのは、これを継続することです。

    業務時間調査も、職員への聞き取りも、一度きりでは「その時点のスナップショット」でしかありません。改善策を打ったあと、それが本当に効いたのか。新しい課題が生まれていないか。定期的に測り直して、初めて「見える化」は機能します。

    要件を満たすためだけに一度実施して、報告書に書いて終わり——そうなってしまう施設は少なくありません。しかしそれでは、加算は取れても、現場は何も変わりません。

    見える化の本当の価値は、加算の要件を満たすことではなく、「辞めそうな職員」や「無理が生じている業務」に、手遅れになる前に気づけることにあります。

    定期的に現場の状態を測る仕組みを持てば、それは加算のためだけでなく、職員の定着そのものに効いてきます。

    継続的に現場を測り、課題を捉え、改善する。この一連の流れを、施設の運用のなかに組み込めるかどうか。そこが、加算を「取って終わり」にするか、施設を実際に良くしていくかの分かれ目になります。

    この記事の出典

    • 厚生労働省「介護分野における生産性向上ガイドライン」
    • 厚生労働省「介護職員等処遇改善加算 職場環境等要件」関連通知・事例集
    深瀬久博
    深瀬 久博
    情熱介護 編集長 / 介護現場マネジメント講師

    最終更新:2026年8月3日 / 情熱介護編集部

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