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    採用・人材戦略 2026.05.22 約18分で読了

    介護の人材紹介会社の、選び方
    ――手数料・返金規定・トラブル回避と『失敗しない』7つの比較軸【2026年版】

    『1人採用するのに100万円。なのに3ヶ月で辞められた』――介護人材紹介の現場で、いまも繰り返されている経営者の悲鳴です。手数料相場は理論年収の20〜30%。1人で80〜150万円。これだけの投資をするからこそ、紹介会社の選定は経営判断そのものです。本記事では、優良エージェントの見極め方、返金規定・トラブル回避、複数社の並行運用、そして自社採用との使い分けまで、編集長・深瀬久博が経営者目線で整理します。

    介護施設の経営者が人材紹介会社との契約書類を会議室で精査している様子
    深瀬久博
    執筆
    深瀬 久博 / 情熱介護 編集長
    介護福祉士・社会福祉士・認知症ケア専門士・産業ケアマネ(3級)・ストレスチェック実施者
    編集長より人材紹介は『悪』ではありません。むしろ、応募が集まらない事業所にとっては命綱です。問題は、選び方を間違えると『高い金で、すぐ辞める人を、繰り返し買う』循環に陥ることです。本記事は、その循環から抜け出すための実装ガイドです。

    1. 介護人材紹介市場の『いま』

    市場規模は数百億円、紹介会社数は数千社

    厚生労働省「医療・介護・保育分野における職業紹介事業に関する調査」によれば、医療・介護・保育分野の有料職業紹介事業所は数千社規模に達し、市場規模も拡大基調にあります。介護特化型エージェント、医療・介護横断型、看護師起点で介護に拡張した事業者など、プレイヤーは多様化しています。

    手数料相場は『理論年収の20〜30%』

    一般的な相場は、採用決定者の理論年収(月給×12+賞与)の20〜30%。介護福祉士・正社員夜勤あり(年収380〜420万円)であれば、1人あたり80〜120万円。管理者・看護職クラスでは150万円を超えるケースも珍しくありません。

    『早期離職トラブル』が常態化

    厚労省は近年、医療・介護・保育分野の有料職業紹介事業者に対し、『お祝い金』『転職勧奨』『高額手数料』『早期離職』といった問題に重点的に指導を行っており、2021年・2024年と指針・指導の強化が続いています。施設側にも『契約を読まずに署名し、返金規定で揉める』ケースが多発しています。

    20〜30%
    介護人材紹介の手数料相場(理論年収比)
    出典:厚労省 職業紹介事業報告・業界調査
    80〜150万円
    正社員1名採用あたりの手数料目安(職位による)
    出典:編集部まとめ
    2024年
    厚労省が医療・介護・保育分野の紹介事業者への指導を強化
    出典:厚労省 雇用環境・均等局
    紹介会社の選定は、
    『広告費』ではなく『経営判断』である。
    1人で100万円が動くのだから。

    2. 紹介を使うべき施設/使うべきでない施設

    使うべき施設

    ・自社求人広告・ハローワーク・リファラルでの応募が3ヶ月以上ゼロ〜1名の状態が続いている
    ・夜勤可・有資格者・管理者候補など、市場に少ない層を急ぎ確保したい
    ・新規開設・増床で期日までに人員配置基準を満たす必要がある
    こうしたケースでは、紹介を使わない方が機会損失が大きくなります。

    使うべきでない施設

    離職率が25%超で、入れても抜ける状態が続いている(先に定着策が必要)
    求人原稿・採用ページが整っていない(自社採用の伸びしろが残っている)
    手数料を払う体力がないのに、なし崩しに使い続けている
    この場合、紹介に頼るほど経営は悪化します。まず定着自社採用の立て直しが先です。

    紹介を『水道の蛇口』のように使い続けると、年間採用コストが1,000万円規模まで膨らみます。同じ金額を採用ブランディング・既存職員の処遇改善に回していれば、もっと持続的な体制が作れた――そういう後悔を、何度も現場で見てきました。

    3. 失敗しない『7つの比較軸』

    施設長と人材紹介エージェントが契約を結ぶための握手を交わす場面
    『安いから』『熱心だから』だけで選ぶと、必ず後悔する。

    軸① 手数料率と『理論年収の定義』

    同じ『手数料30%』でも、何を理論年収に含めるかで実額は大きく変わります。基本給×12のみか/賞与込みか/夜勤手当・処遇改善加算を含むか――必ず算定式を契約書ベースで確認してください。口頭の『相場通りです』は信用しない。

    軸② 返金規定(リファンドポリシー)の中身

    最重要。一般的には『入社1ヶ月以内:80〜100%返金/3ヶ月以内:50%/6ヶ月以内:0〜30%』が目安。『自己都合退職に限る』『施設都合は対象外』『試用期間中の解雇は返金対象外』など、除外条項に必ず目を通すこと。返金規定が緩い会社ほど、定着への責任意識も高い傾向があります。

    軸③ 『お祝い金』を出していないか

    2021年4月の職業安定法施行規則改正で、医療・介護・保育分野の『お祝い金・転職勧奨』は明確に禁止されました(厚労省指針)。違反業者と取引すること自体が施設のリスク。確認方法は『御社は転職お祝い金や転職祝い金、ギフト券を求職者に提供していますか?』と単刀直入に聞き、書面で回答をもらうこと。

    軸④ 求人票・候補者推薦の『質』

    良いエージェントは、求職者の希望と施設の文化のマッチングに時間をかけます。雑にスカウトメールを撒き、面接設定だけ取ってくる事業者は、入社後すぐ離職するケースが多い。事前に『当社にミスマッチが起きやすいタイプは?』と質問して、答えに具体性があるかをチェック。

    軸⑤ 介護業界への理解度

    キャリアアドバイザーが介護保険制度・夜勤体制・職位別の業務内容を最低限理解しているか。『特養と老健の違い』『処遇改善加算とは何か』『初任者研修・実務者研修・介護福祉士のキャリアラダー』を説明させてみると、力量がはっきり見えます。

    軸⑥ 担当者の継続性と組織体制

    担当が頻繁に変わる会社は、社内の離職率が高い=候補者情報の引き継ぎが甘いサイン。年1回以上の担当変更が常態化している事業者は要注意。担当の在籍年数も遠慮なく確認すべき項目です。

    軸⑦ 入社後フォロー体制

    入社1ヶ月・3ヶ月・6ヶ月のフォロー面談を提供しているか。フォローを通じて早期の離職予兆を共有してくれる会社は、結果として返金規定にも頼らずに済むケースが増えます。フォロー実績を数字で出せる会社を選ぶ。

    4. 契約書で必ずチェックすべき10条項

    • 手数料率と理論年収の算定式(賞与・夜勤手当・処遇改善加算の扱い)
    • 返金規定(期間/返金率/自己都合・施設都合の扱い/試用期間中の扱い)
    • 請求タイミング(入社日/勤務開始日/試用期間満了日のいずれか)
    • 支払い期日と延滞時の遅延損害金
    • 採用辞退・内定取り消し時の費用負担
    • 同一候補者の競合斡旋に関する取り決め
    • 個人情報の取り扱い・候補者情報の保管/破棄ルール
    • 転職勧奨・お祝い金を禁止する条項の明記
    • 契約期間と解約条件(最低契約期間・違約金の有無)
    • 紛争解決方法(管轄裁判所・あっせん・調停の規定)
    契約書はテンプレートで送られてくることが多いですが、条文修正の交渉は可能です。特に『返金期間の延長』『請求タイミングを試用期間満了後にずらす』は、優良エージェントほど応じてくれます。応じない会社は、それだけで判断材料になります。

    5. 複数社の『並行運用』のコツ

    原則① 2〜4社で止める

    10社・20社と契約しても、現場の対応工数が爆発するだけ。『特化型1社+総合型1〜2社+スポット1社』の3〜4社体制が現実解。少数の優良エージェントと深く付き合う方が、紹介精度は上がります。

    原則② 同一候補者の重複応募ルールを決めておく

    『先に推薦を受けた会社が優先』が業界慣行。複数社から同じ求職者が推薦されると、後から手数料トラブルになります。推薦日時を必ずメール記録に残す運用にしてください。

    原則③ 評価サイクルを四半期で回す

    紹介社別に『紹介数/面接設定数/内定数/入社数/3ヶ月定着数』を四半期で集計。定着率の低い会社から契約解除していくことで、ポートフォリオの質が上がります。データを見せると、エージェント側の本気度も変わります。

    6. 紹介と自社採用の『最適な配分』

    新しく入職する介護職員を施設長が玄関で温かく出迎える朝の場面
    紹介で来た人も、自社で来た人も、入った後の景色は同じ。

    戦略① 急ぎは紹介、土台は自社

    欠員補充・新規開設の『短期戦』は紹介、長期の母集団形成は自社採用(求人原稿・採用ページ・採用広報)で。両輪を回す施設は、紹介依存度を年々下げていけます。

    戦略② リファラル採用で『紹介手数料の半分』を職員に還元

    既存職員からの紹介(リファラル)に10〜30万円のインセンティブを出す制度を整える。紹介会社に100万円払うなら、職員に30万円払って自社採用する方が、定着率も高く、コストも1/3で済みます。

    戦略③ 採用広報に予算の一部を恒常的に振る

    紹介手数料の10〜20%を、自社の採用広報(記事・SNS・職員インタビュー動画)に毎年回す。3年継続すれば、紹介に頼らず応募が来る体質に近づきます。

    7. トラブル事例と回避策

    事例① 入社3週間で離職、返金は『50%のみ』

    契約書をよく読むと『1ヶ月以内100%返金』の条件が『勤務日数20日以上経過後』だった――というケース。日数カウント方法の確認を怠らないこと。

    事例② 入社後すぐ別のエージェントから転職勧奨

    お祝い金を提示して引き抜くケース。違反業者は厚労省へ通報可能(職業安定法違反)。契約段階で『当社の入社者への転職勧奨が判明した場合、契約解除と損害賠償請求対象とする』旨を盛り込むのも有効。

    事例③ 経歴詐称が後で発覚

    介護福祉士証の現物確認・前職在籍確認を、紹介会社に書面で求める。優良エージェントは身分証・資格証のコピー提出と前職確認をルーティン化しています。

    8. 今すぐやるべき、3つのアクション

    No.アクション期限効果
    01現契約中の全紹介会社の手数料率・返金規定を一覧化する今月中条件の劣る会社が一目で分かる
    02直近2年の紹介社別『3ヶ月定着率』を集計する2ヶ月以内解約判断と交渉材料が揃う
    03リファラル採用制度(職員紹介インセンティブ)を制度化する3ヶ月以内中長期で紹介依存度を下げられる

    9. 管理者セルフチェック10項目

    • 取引中の全紹介会社の契約書を、自分の手元で読み返している
    • 手数料の算定式(賞与・各種手当の扱い)を正確に説明できる
    • 返金規定の期間・割合・除外条項を把握している
    • 請求タイミングが『入社日』ではなく『試用期間満了後』に交渉できているか確認した
    • 転職勧奨・お祝い金禁止の条項が契約書に明記されている
    • 紹介社別の3ヶ月・6ヶ月定着率を数字で持っている
    • 2〜4社に絞った並行運用ができている
    • リファラル採用のインセンティブ制度がある
    • 自社採用ページ・求人原稿の更新を年1回以上行っている
    • 年間採用コストに占める『紹介手数料比率』を経営会議で共有している
    編集長より、最後に紹介会社は、使い方次第で強力な経営パートナーにも、利益を吸い続ける穴にもなります。違いを生むのは『契約書を読み込み、データを見て、淡々と入れ替える』という、当たり前の経営判断ができるかどうか。本記事のチェックリストを、ぜひ次回の経営会議で開いてください。

    10. 参考資料・出典

    1. 厚生労働省「医療・介護・保育分野における職業紹介事業に関する調査・指針」
    2. 厚生労働省「職業安定法施行規則の一部改正(令和3年4月施行)」
    3. 厚生労働省 雇用環境・均等局「有料職業紹介事業者向け指導関連資料」
    4. 厚生労働省「介護労働実態調査」(介護労働安定センター)
    5. 消費者庁・公正取引委員会「役務提供契約に関する解説資料」

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    本記事に記載する手数料相場・規定内容は、本稿執筆時点(2026年5月)までに公表されている厚生労働省、職業安定法関連法令、業界実態調査等に基づきます。個別契約の内容は紹介事業者により異なりますので、必ず契約書原本および所管行政(労働局)への確認をお願いします。