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    採用・人材確保 2026.10.01 約9分で読了

    紹介手数料を払う前に使える、公的な採用ルート4つ
    無料の職業紹介・労働局の相談窓口・国の認定制度の使い方

    公的な相談窓口のカウンターで、相談員と施設長が資料を見ながら話している様子
    深瀬久博
    執筆・監修
    深瀬 久博 / 情熱介護 編集長
    精神保健福祉士・社会福祉士・介護支援専門員・介護福祉士・認知症ケア専門士・産業ケアマネ(3級)・ストレスチェック実施者

    1人採用するたびに、80万円から150万円。人材紹介を使えば、それだけの手数料がかかります。しかも、採用した職員が3か月で辞めても、全額は戻ってきません。

    それでも使い続けてしまうのは、「ほかに手がない」と感じているからではないでしょうか。

    実は、国と都道府県には、手数料を1円も払わずに使える仕組みがあります。民間の紹介会社ほど積極的に営業してこないため、存在を知られていないだけです。

    この記事では、人材紹介に頼る前に使える公的なルートを4つ整理します。あわせて、民間の紹介会社を使う場合に、国の制度をどう活用できるかもお伝えします。

    まず押さえたい4つのルート

    ルート費用主にできること
    都道府県の福祉人材センター無料職業紹介、職場見学・職場体験の受け入れ、就職フェアへの参加、求人票の書き方の相談
    ハローワークの専門窓口無料介護・医療・保育などに詳しい専門相談員による求人の充足支援
    国の適正事業者認定制度無料(調べるだけ)民間の紹介会社を選ぶときの判断材料
    都道府県労働局の特別相談窓口無料紹介会社とのトラブルや、法令違反の疑いがある場合の相談

    ひとつずつ見ていきます。

    1. 都道府県の福祉人材センター

    各都道府県の社会福祉協議会が運営している機関です。国から無料職業紹介事業者の許可を受けて、求職者と事業所をつなぐ仕事をしています。

    できることは、職業紹介だけではありません。

    • 職場見学・職場体験の受け入れ:いきなりの応募ではなく、まず現場を見てもらう形をつくれます
    • 就職フェアへの出展:求職者と直接会える場に参加できます
    • 求人票の相談:センターの職員が事業所を訪問し、アピールポイントの整理を手伝ってくれる場合があります

    求人を出すだけで終わらせず、職場体験の受け入れ先として登録しておくと、接点が増えます。見学や体験を経て応募した人は、入職後のギャップが小さくなります。紹介会社経由の採用で起きがちな「聞いていた話と違う」という早期離職を、構造的に減らせます。

    使うときの注意点

    無料である代わりに、民間の紹介会社のような「すぐに候補者を連れてくる」スピードはありません。登録して待つだけでは動きません。定期的に顔を出し、どんな人を求めているかを伝えておくことが前提になります。

    2. ハローワークの専門窓口

    ハローワークの中には、介護・医療・保育といった人手不足の分野に特化した専門の窓口を設けているところがあります。東京の場合、都内10か所のハローワークに設置されています(大森・渋谷・新宿・池袋・足立・墨田・木場・八王子・立川・府中)。

    専門の相談員が、その分野に詳しい立場で、求職者の支援と求人の充足支援の両方を行います。設置場所や名称は都道府県によって違うため、まずは管轄のハローワークに「介護分野の専門窓口はありますか」と聞いてみてください。

    求人票を出しただけで終わらせない

    ハローワークの求人は、無料で出せます。ただ、出しただけで応募が来る状況ではありません。専門窓口を使う価値は、求人票の書き方や条件設定について、専門相談員の目を借りられることにあります。

    同じ地域の他の施設がどんな条件を出しているか、自施設の求人がなぜ見られていないのか。こうした話は、相談窓口でしか得られません。

    3. 国の「適正事業者認定制度」で、紹介会社を見極める

    民間の紹介会社を使う場合にも、公的な判断材料があります。

    厚生労働省の委託事業として、医療・介護・保育分野における適正な有料職業紹介事業者の認定制度が設けられています。一定の基準を満たした紹介会社を「適正認定事業者」として認定し、公表する仕組みです。

    認定の基準に、何が入っているか

    認定を受けるには、「必須基準」のすべてと、「基本基準」の一定数以上を満たす必要があります。必須基準には、次のような項目が含まれています。

    必須基準の例内容
    手数料の公表手数料に関する事項や、職種別の手数料実績を公表している
    早期離職時の返戻金就職後6か月以内に離職した場合の返戻金制度を設けている
    違約金の明示求人者に対する違約金規約を設けている場合、あらかじめ誤解が生じないよう明示している
    お祝い金の禁止求職者に金銭等(いわゆる「お祝い金」など)を支給していない
    転職勧奨の禁止自らの紹介により就職した人に対して、転職勧奨をしない

    施設長が気にする点が、ほぼそのまま基準になっています。認定の有効期間は3年で、3年ごとに受け直す必要があります。

    介護分野で認定の対象になる職種は、介護職(介護福祉士とそれ以外)、看護職、リハビリテーション専門職、介護支援専門員、生活相談員・支援相談員、機能訓練指導員、栄養士・管理栄養士です。

    使い方

    適正認定のウェブサイトでは、認定事業者の名称、サービス名、対象職種別の紹介実績数の目安、対応エリアを調べられます。契約を検討している会社が認定を受けているかどうかは、ここで確認できます。

    ただし、認定を受けていない会社が不適切だという意味ではありません。認定を受けているのは全体のごく一部です。あくまで「選ぶときの材料のひとつ」として使ってください。

    4. トラブルが起きたら、労働局の特別相談窓口へ

    紹介手数料などの条件についてトラブルがあったり、法令違反の疑いがあったりする場合は、最寄りの都道府県労働局の「医療・介護・保育」求人者向け特別相談窓口で相談を受け付けています。

    次のような場合が対象になります。

    • 契約時に説明のなかった違約金を請求された
    • 同じ職員の採用について、複数の会社から手数料を請求された
    • ハローワーク経由で採用したのに、紹介会社から手数料を請求された
    • 紹介会社の担当者から、採用した職員への転職勧奨があった疑いがある

    また、適正認定を受けている事業者については、制度の運営事務局でも苦情の窓口を設けています。苦情は事実確認のうえ、制度を運営する協議会に報告される仕組みになっています。

    「もめても面倒だから」と泣き寝入りする施設は少なくありません。ただ、相談の記録が積み上がることで、制度の見直しにつながります。実際、2025年4月からは手数料率の公表や違約金の明示がルール化されました。これは、現場からの声が積み重なった結果です。

    候補者が使える制度も、採用側が知っておく

    職員本人が使える制度も、採用側が知っていると役に立ちます。

    一度介護の仕事を離れた人が再び介護職として働く場合、都道府県の福祉人材センターなどが窓口となり、再就職の準備にかかる費用を貸し付ける制度があります。一定期間働き続けると返還が免除される仕組みです。

    ここで重要なのは、本人が再就職する前に、あらかじめ手続きをしておく必要がある点です。入職した後では間に合わないことがあります。

    貸付の上限額や細かい要件は都道府県によって異なります。採用の候補者に「以前介護の仕事をしていたが、離れていた」という方がいたら、面接の段階で「こういう制度があるようなので、福祉人材センターに確認してみてください」と伝えるだけで、親切な施設だと受け取られます。細かい条件は都道府県の福祉人材センターで確認してもらってください。

    公的ルートの弱点を、正直に書いておきます

    ここまで紹介した仕組みには、共通の弱点があります。すぐには人が来ないことです。

    民間の紹介会社は、手数料が高い代わりに、候補者を能動的に探して連れてきます。公的なルートは費用がかからない代わりに、施設側が動かないと何も起きません。

    だから、現実的な使い分けはこうなります。

    • 急な欠員で、今すぐ人が必要なとき:紹介会社を使う。ただし契約内容は事前に確認する
    • 半年から1年先を見据えた採用:公的ルートを並行して動かす。職場体験の受け入れ、就職フェアへの参加、求人票の見直しを進めておく

    公的ルートは、今日始めて、半年後に効いてくる種類の手段です。だからこそ、紹介手数料に追われている今のうちに動き出す価値があります。

    手数料の総額は、「単価」ではなく「回数」で決まる

    紹介手数料を減らそうとすると、どうしても「手数料率を下げてもらう」という発想になります。しかし、1件あたりの単価を数パーセント下げるより、効果が大きいことがあります。

    紹介会社を使う回数そのものを減らすことです。

    年に4人採用して、そのうち2人が1年以内に辞めれば、翌年もまた紹介会社を使うことになります。1人分の手数料が100万円なら、辞めた2人分で200万円。採用のたびに同じ金額が出ていきます。

    今いる職員が辞めずに働き続ければ、その200万円は発生しません。公的ルートを整え、職場体験から入ってもらい、入った後のギャップを小さくする。この積み重ねが、手数料の総額を下げる一番確実な方法です。

    採用で穴を埋め続けるのか、今いる職員が続けられる体制をつくるのか。手数料の請求書を見るたびに、その問いが戻ってきます。

    この記事の出典

    ※本記事は2026年10月時点の情報をもとにしています。窓口の設置状況、制度の要件、貸付の上限額などは都道府県によって異なります。実際の利用にあたっては、各都道府県の福祉人材センター、ハローワーク、都道府県労働局にご確認ください。

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    深瀬久博
    この記事を書いた人
    深瀬 久博(情熱介護 編集長)
    重度認知症デイケアでの臨床経験を経て、大手有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅の管理者を歴任。現在は介護現場の管理職・経営層に向けた研修講師として全国に登壇。
    精神保健福祉士・社会福祉士・介護支援専門員・介護福祉士・認知症ケア専門士・産業ケアマネ(3級)・ストレスチェック実施者

    編集長より

    公的なルートは、派手さがありません。窓口に行っても、その日に候補者が決まるわけではない。だから後回しにされます。

    ただ、紹介手数料の請求書が届くたびに「来年も同じことになる」と感じているなら、今日できることから手をつけてほしいと思います。まずは、お住まいの都道府県の福祉人材センターに電話をして、職場体験の受け入れについて聞いてみる。それだけで十分です。

    焦って決めた採用より、時間をかけて現場を見てもらった採用のほうが、結果として長く続きます。急がば回れ、という言葉を、採用でも思い出していただけたらと思います。