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    採用・人材戦略 2026.05.22 約18分で読了

    介護経営者のための、採用支援サービスの選び方
    ――RPO・媒体運用代行・採用ブランディングの使い分け【2026年版】

    『紹介会社に毎年1,000万円。でも結局、定着しない』――この循環から抜けるには、自社採用の力を中長期で底上げする『採用支援』が必要です。介護領域の採用支援は大きくRPO(採用代行)/求人媒体運用代行/採用ブランディング/ダイレクトリクルーティング支援の4類型。本記事では、料金体系・向く施設・失敗パターンを、編集長・深瀬久博が経営者目線で整理します。

    介護施設の経営者がノートPCで採用支援サービスの提案書を比較検討している様子
    深瀬久博
    執筆
    深瀬 久博 / 情熱介護 編集長
    介護福祉士・社会福祉士・認知症ケア専門士・産業ケアマネ(3級)・ストレスチェック実施者
    編集長より『採用支援』という言葉は、業者ごとに指すサービスが違います。同じ『採用支援』でも、RPO(プロセス代行)と採用ブランディング(資産作り)では、料金も期待値も全く別物。本記事は、4類型を切り分けた上で、自社の課題と予算に合うものを経営者自身が選び切るための判断材料を整理します。

    1. なぜ今、『採用支援』が経営課題なのか

    紹介会社依存は、毎年積み上がる『運用費』

    人材紹介は1人80〜150万円の『使い切り型コスト』。10名で1,000万円超を毎年溶かしても、何も資産が残りません。一方の採用支援は、求人原稿・採用ページ・採用広報といった『資産が積み上がる』投資です。同じ予算でも、3年後・5年後の応募力が変わります。

    自社採用の難易度は年々上がっている

    厚労省「介護労働実態調査」では、介護職の有効求人倍率は3〜4倍で高止まり。ハローワーク・無料媒体だけでは応募が来ない時代に、自社の力で採用しきるには『運用ノウハウ』『コンテンツ制作力』『広報設計』のいずれも不足しがちです。ここを外部の専門家で補うのが採用支援の役割。

    『紹介ゼロ』を目指す事業所が増えてきた

    年間採用コストに占める紹介手数料比率を50%→20%→0%に段階的に下げる中期計画を組む施設が増えています。採用支援は、その中期計画を遂行する伴走パートナーとして位置づけるのが正解です。

    3〜4倍
    介護職の有効求人倍率(高止まり)
    出典:厚労省 一般職業紹介状況・介護労働実態調査
    80〜150万円
    紹介手数料1名あたり(使い切りコスト)
    出典:編集部まとめ
    3〜5年
    自社採用力の底上げに必要な期間(採用支援を伴走で活用した場合の目安)
    出典:編集部取材
    紹介は『支出』、採用支援は『投資』。
    積み上がる資産があるかどうかで、
    経営の意味は変わる。

    2. 採用支援サービスの『4類型』

    採用代行の担当者と施設の採用責任者がモニターで求人ページを確認しながら打ち合わせをしている様子
    『支援』の意味は、サービスによって全く違う。

    類型① RPO(採用代行)

    求人原稿作成・スカウト配信・応募者対応・面接日程調整など、採用プロセスを丸ごと(または部分)代行。月額20〜80万円が相場(業務範囲による)。採用担当者を置けない/本部が小規模な事業所に向く。一方で『現場感の理解』をどう担保するかが課題で、面接対応まで外注しすぎると入社後ギャップが生まれます。

    類型② 求人媒体運用代行

    ジョブメドレー、カイゴジョブ、Indeed、indeed PLUS連携媒体などの有料媒体の入稿・改善運用を代行。月額10〜40万円+媒体費用。媒体は出しっぱなしでは効果が落ちるため、A/Bテスト・タイトル改善・キーワード調整を継続できる事業者を選ぶ。Indeedの正規パートナー(認定代理店)かどうかも重要なチェックポイント。

    類型③ 採用ブランディング

    採用サイト構築/職員インタビュー記事・動画/SNS運用/オウンドメディアなどで、中長期に応募が来る『母集団形成資産』を作る。初期200〜500万円+月額10〜30万円が一般的。短期の応募数より、2〜3年後の応募の質と量を変えに行く投資。法人理念・事業ビジョンの言語化から入る業者を選ぶ。

    類型④ ダイレクトリクルーティング支援

    doda、ビズリーチ、ジョブメドレースカウト等のスカウト型媒体での候補者選定・スカウト文面作成・配信運用を代行。管理者・看護職・リハビリ職など、紹介でも採れない層のピンポイント獲得に強い。月額15〜50万円+媒体費用。

    3. 自社の課題に、どの類型が合うか

    課題向く類型理由
    採用担当者を置けないRPOプロセスを丸ごと預けられる
    媒体に出しても応募が来ない媒体運用代行原稿改善・運用ノウハウを買う
    そもそも法人の魅力が伝わっていない採用ブランディング資産を作って中長期で効かせる
    管理者・有資格者が採れないダイレクト支援スカウトで顕在化していない層を掘る
    紹介依存を3年で半減させたいブランディング+RPO資産形成と日常運用を両輪で回す
    最も多い失敗は、『採用ブランディング』を依頼して3ヶ月で応募が来ないと契約解除すること。ブランディングは1〜2年で効いてくる投資です。短期に応募が欲しいなら媒体運用代行かRPO、中長期の資産形成ならブランディング――目的別に契約することが鉄則です。

    4. 失敗しない『8つの比較軸』

    軸① 介護領域の実績本数

    一般採用のRPO・代理店は多いものの、介護領域の実績が薄い業者は要注意。介護福祉士・初任者研修・夜勤体制・処遇改善加算など、業界特有の知識を持っているかが、コピーの質を決めます。実績ロゴだけでなく、担当者の介護領域の年数を必ず聞くこと。

    軸② 成果指標(KPI)の置き方

    『応募数』だけをKPIにする業者は危険。本質は『内定承諾数』『3ヶ月定着数』です。応募数を盛るために的外れな広告を打たれると、現場の面接工数だけが増えます。定着まで責任を持つKPI設計に合意できるか確認。

    軸③ 料金体系の透明性

    月額固定/成果報酬/ハイブリッド――それぞれにメリットがありますが、何にいくら払っているかが明細で見えることが最重要。『パッケージ一式◯◯万円』しか出てこない業者は、内訳開示を求める。応じない業者は除外。

    軸④ 契約期間と解約条件

    初期に6〜12ヶ月の最低契約期間を求める業者が多い。一定期間の伴走で資産が積み上がる性質上、ある程度は妥当だが、中途解約時の違約金条件は必ず書面で確認すること。

    軸⑤ レポーティング頻度と粒度

    月次レポートで『応募数・面接設定数・内定数・定着率』が施設別/媒体別/職種別で見られるか。レポートが薄い業者は、運用も薄いと思っていい。

    軸⑥ 制作物の著作権・データ帰属

    採用ページ・記事・動画・職員インタビューなど、制作物の著作権・利用権が施設側に帰属する契約か。契約終了後も使い続けられるかは、資産形成の観点で死活問題。スカウト返信データ・候補者リストの帰属も明文化を。

    軸⑦ 法人理念・事業ビジョンへの理解

    良い業者は、必ず経営者・施設長へのヒアリングから始めます。テンプレで原稿を作る業者は、どの施設の求人も同じ顔になる。『なぜこの法人で働くのか』を言語化できる業者を選ぶ。

    軸⑧ 現場(職員)との接点を持てるか

    職員インタビュー・現場見学・施設長同行など、現場の空気に触れる工程を組み込んでいる業者は、コンテンツの解像度が違います。完全リモートだけで完結する業者は、介護領域には合いません。

    5. 契約前に必ず確認すべき10条項

    • 業務範囲(何を/どこまで/頻度)が具体的に明記されている
    • 料金体系(月額固定/成果報酬/実費)の内訳が見える
    • KPIに『応募数』だけでなく『内定承諾数・定着率』が含まれる
    • 制作物(原稿・画像・動画・サイト)の著作権が施設側に帰属する
    • 候補者リスト・応募データの所有権・移管条件が明記
    • レポート提出頻度・項目・形式が定められている
    • 契約期間・更新条件・中途解約時の取り扱い
    • 個人情報保護・秘密保持(NDA)の条項
    • 競合他施設との取引制限(必要に応じて)
    • 担当者の変更条件・引き継ぎ責任

    6. 紹介・媒体・支援サービスの『最適配分』

    採用支援会社の担当者と施設の経営者が穏やかな雰囲気で打ち合わせをしている場面
    紹介を否定するのではなく、依存度を経営でコントロールする。

    初年度:紹介60% / 媒体運用30% / ブランディング10%

    まずは欠員補充を紹介で止血しつつ、媒体運用代行で自社採用の応募導線を整える。ブランディングは小さく始めて(採用ページ刷新+職員インタビュー2〜3本)資産化の第一歩を踏み出す。

    2年目:紹介30% / 媒体運用40% / ブランディング30%

    媒体運用が回り始め、自社の母集団が増えてきたら、ブランディング比率を上げる。職員インタビュー記事・動画を毎月積み上げ、採用サイトのSEO流入も増やしていく。

    3年目:紹介10% / 媒体運用40% / ブランディング50%

    ブランディング資産が効き始め、指名で応募が来る状態へ。紹介は『緊急時のスポット利用』に限定。年間採用コストを2/3〜半額に抑えつつ、定着率を上げる体質に近づきます。

    この配分はあくまで目安です。事業所規模・採用ニーズ・地域特性で最適配分は変わります。重要なのは『毎年、紹介比率を下げる計画になっているか』を経営会議で言語化することです。

    7. よくある失敗パターンと回避策

    失敗① 『応募数』だけ追って、定着率を見ない

    広告費を盛れば応募は増えますが、的外れな候補者を呼び込むだけで、面接工数だけが膨らみます。必ず『定着率』までをKPIに含めること。

    失敗② ブランディングを『3ヶ月で諦める』

    採用ブランディングはSEO・コンテンツ資産の積み上げ型。1〜2年は腰を据えて伴走する覚悟がないなら、最初から発注しない方が良い。

    失敗③ 複数業者を入れすぎて運用が破綻

    RPO・媒体代理店・ブランディング会社・スカウト代行を別々の業者で動かすと、情報の縦割りが起き、現場の対応工数が爆発します。2〜3社までに絞り、定例会議でデータを横断共有できる体制を作る。

    失敗④ 担当者任せで、経営者が関与しない

    採用支援は『経営者が法人の物語を語る』ところから始まります。担当者に丸投げした瞬間、コピーは凡庸になり、結果も出ません。月1回は経営者が定例会議に出るルールにしてください。

    8. 今すぐやるべき、3つのアクション

    No.アクション期限効果
    01直近1年の採用コスト内訳(紹介/媒体/広報)を一覧化今月中どこに資金が偏っているか可視化
    02採用支援3〜5社から提案を取り寄せ、本記事の8軸で比較2ヶ月以内自社課題に合う1社を選定できる
    033年計画で紹介比率を毎年▲20pt下げるKPIを設定3ヶ月以内経営会議で採用が議題化される

    9. 管理者セルフチェック10項目

    • 『RPO/媒体運用/ブランディング/ダイレクト支援』の違いを説明できる
    • 自社の採用課題に対し、どの類型が必要かを言語化できている
    • 業者選定時に『介護領域の実績年数』を必ず確認している
    • KPIに『応募数』だけでなく『定着率』を含めている
    • 料金体系の内訳が明細で見える契約になっている
    • 制作物の著作権が施設側に帰属する条項を確認した
    • 月次レポートを経営会議で開いて議論している
    • 業者を2〜3社までに絞り、情報の縦割りが起きていない
    • 月1回は経営者本人が定例会議に出ている
    • 3年計画で『紹介依存度を下げるKPI』を設定している
    編集長より、最後に採用支援は『応募を買う』のではなく『応募が来る体質を作る』投資です。短期の応募数に一喜一憂せず、3年後・5年後の応募力に焦点を合わせてください。紹介を止血剤として使いながら、採用支援で体質改善を進める――その両輪が、これからの介護経営の標準形になります。

    10. 参考資料・出典

    1. 厚生労働省「一般職業紹介状況」(介護関連職種の有効求人倍率)
    2. 介護労働安定センター「介護労働実態調査」
    3. 厚生労働省「医療・介護・保育分野における職業紹介事業に関する指針」
    4. 厚生労働省「職業安定法施行規則」
    5. 各種採用支援サービス事業者の公開資料・編集部取材

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    本記事に記載する料金相場・サービス区分は、本稿執筆時点(2026年5月)の市場実態および編集部取材に基づきます。実際の契約条件は事業者ごとに異なります。導入の最終判断は、必ず複数社の提案書を比較し、契約書原本をご確認のうえ行ってください。