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    経営・制度対応 2026.06.15 約12分で読了

    社会福祉連携推進法人への
    参加戦略【2026年版】
    ――加算Ⅰロ・人材確保・経営基盤強化の3つのメリット

    2026年6月の臨時改定で新設された処遇改善加算Ⅰロ。その取得要件の『3つ目の選択肢』が、社会福祉連携推進法人への所属だ。サービス種別を問わず全事業所が対象となるこの仕組みは、加算取得だけでなく、人材確保・経営基盤強化にも直結する。本記事では制度の中身、3つのメリット、参加手順、注意点までを施設長向けに解説する。

    連携協定を結ぶ複数の介護事業所の代表者たち
    深瀬久博
    執筆
    深瀬 久博 / 情熱介護 編集長
    介護福祉士・社会福祉士・認知症ケア専門士・産業ケアマネ(3級)・ストレスチェック実施者
    編集長より「ケアプランデータ連携も、生産性向上推進体制加算も、自分の事業所では要件が厳しい」――そう感じている施設長にこそ、社会福祉連携推進法人という『3つ目の選択肢』を知ってほしい。加算のための参加から始めても構わない。気がつけば、採用・研修・購買を一緒にできる仲間ができている――それが、この制度のいちばん価値ある使い方です。

    この記事でわかること

    • 社会福祉連携推進法人とは何か、どんな法人が参加できるのか
    • 処遇改善加算Ⅰロの取得要件として『所属』がなぜ認められているのか
    • 参加することで得られる3つの経営メリット
    • 参加の手順と現在の法人数・地域分布
    • 参加にあたっての注意点とよくある誤解
    • 施設長が今すぐやるべき確認事項

    はじめに:処遇改善加算Ⅰロの『3つ目の選択肢』

    2026年6月の臨時改定で新設された処遇改善加算Ⅰロ(月7,000円上乗せ)。その取得要件として認められている選択肢は3つある。

    ・ア)ケアプランデータ連携システムへの加入・利用(訪問・通所系)
    ・イ)生産性向上推進体制加算の取得(施設系)
    ウ)社会福祉連携推進法人への所属(全サービス共通)

    ア・イの2つは当メディアで既に解説した。今回はウ、「社会福祉連携推進法人への所属」について詳しく解説する。

    この選択肢が重要な理由は、サービス種別を問わず全ての事業所が対象という点だ。ケアプランデータ連携もLIFEも要件を満たしにくい事業所でも、社会福祉連携推進法人に所属することで加算Ⅰロを取得できる可能性がある。

    社会福祉連携推進法人とは何か

    制度の概要

    社会福祉連携推進法人は、2022年4月から施行された比較的新しい法人制度だ。令和2年6月に公布された「地域共生社会の実現のための社会福祉法等の一部を改正する法律」に基づき、令和4年4月から「社会福祉連携推進法人制度」が施行された。社会福祉法人等が社員となり、福祉サービス事業者間の連携・協働を図るための取組等を行う新たな法人制度だ。

    簡単に言うと「複数の社会福祉法人・社会福祉事業を運営する事業者が連携して、一緒に課題を解決するための組織」だ。

    参加できる事業者

    社会福祉連携推進法人の社員(参加者)になれるのは以下の法人だ。

    ・社会福祉法人
    ・社会福祉事業を実施する社団法人・財団法人
    ・特定非営利活動法人(NPO法人)
    ・社会福祉事業を実施する公益社団・財団法人
    ・その他厚生労働省令で定める者

    株式会社・合同会社などの営利法人は直接の社員にはなれないが、社会福祉法人等を通じた参加は可能だ。

    現在の状況

    令和8年3月現在、認定されている社会福祉連携推進法人の一覧が厚生労働省から公開されている。制度開始から4年が経過し、全国各地で設立・参加が進んでいるが、まだ認知度が低く「自分たちが参加できるか知らない」という事業所も多い。

    加算のために参加する――それは入口でいい。出口は、地域の仲間と共に強くなることだ。

    参加することで得られる3つのメリット

    メリット①:処遇改善加算Ⅰロが取得できる

    これが2026年6月以降、最も注目されている点だ。令和8年度特例要件として、社会福祉連携推進法人に所属していることが処遇改善加算Ⅰロ・Ⅱロの取得要件として認められている。

    つまり社会福祉連携推進法人に参加するだけで、ケアプランデータ連携システムの導入や生産性向上推進体制加算の取得がなくても、加算Ⅰロの取得要件を満たせる。

    ただし重要な注意点がある。法人が社会福祉連携推進法人に属している場合は要件を満たすが、これは取組というよりも法人の組織形態に関わる話であり、すぐに対応できるものではない。参加するには所定の手続きと承認が必要であり、「今日申請して明日から算定」とはならない。早めの準備が必要だ。

    メリット②:人材確保・育成の共同化

    単独法人では難しい人材確保の取り組みを、複数法人で共同して行える。具体的には:

    ・合同採用説明会・就職フェアの開催
    ・研修・教育プログラムの共同実施
    ・職員の法人間異動・応援派遣
    ・介護福祉士資格取得支援の共同化

    特に「職員の法人間異動」は、人手不足が深刻な事業所への応援派遣として機能する。単独では採用できない規模の施設でも、連携法人全体でカバーできる仕組みだ。

    メリット③:経営基盤・業務効率の強化

    スケールメリットを活かした経営の効率化ができる。

    ・共同購買(食材・消耗品・医療材料等の一括調達でコスト削減)
    ・システム・ソフトウェアの共同利用(導入コストの分担)
    ・専門人材の共有(経理・労務・ICT担当者の兼務)
    ・資金調達力の強化

    単独経営では維持できないコストの設備・人材を、複数法人で分担できる。

    参加の手順

    STEP 1:地域の社会福祉連携推進法人を探す

    まず自施設の地域に、参加可能な社会福祉連携推進法人が既に存在するかを確認する。確認方法は次の3つ。

    ① 厚生労働省HPの「社会福祉連携推進法人一覧」を確認
    ② 都道府県の社会福祉法人担当窓口に問い合わせ
    ③ 地域の社会福祉協議会に相談

    STEP 2:参加の相談・申請

    既存の社会福祉連携推進法人に参加する場合は、その法人の代表理事等に相談し、参加意向を伝える。参加の条件・手続きは各法人によって異なる。

    STEP 3:認定所轄庁への届出

    参加が決まったら、都道府県等の認定所轄庁への届出が必要だ。社会福祉連携推進法人の設立相談について、各都道府県の窓口一覧が厚生労働省から提供されている。

    STEP 4:処遇改善加算Ⅰロの届出

    参加が正式に認められたら、処遇改善加算Ⅰロの届出を行う。参加を証明する書類(認定証等)を添付して都道府県に届け出る。

    参加にあたっての注意点

    注意点①:参加手続きに時間がかかる

    社会福祉連携推進法人への参加は、相談から承認まで数ヶ月かかることがある。「すぐに加算Ⅰロを取りたい」という場合は、並行してケアプランデータ連携システムや生産性向上推進体制加算の取得も検討してほしい。

    注意点②:自施設の近くに連携法人がない場合がある

    社会福祉連携推進法人はまだ全国的に普及途上だ。地域によっては参加できる法人が存在しない場合がある。その場合は新設を検討するか、他の取得要件(ア・イ)を選ぶ必要がある。

    注意点③:参加するだけが目的にならないこと

    「加算のために参加する」という発想は間違いではないが、社会福祉連携推進法人の本来の目的は「法人間の連携・協働」だ。参加後に具体的な連携活動をしなければ、長期的に見て経営メリットが薄れる。参加を検討する際は、「どんな連携ができるか」「どんな課題を一緒に解決できるか」という視点を持ってほしい。

    よくある現場の誤解「うちは株式会社だから関係ない」――直接の社員にはなれませんが、グループ内の社会福祉法人を通じた関与や、連携法人と業務提携する形での恩恵は受け得ます。法人形態だけで諦めず、まずは地域の連携法人がどんな活動をしているかを調べることから始めましょう。

    加算Ⅰロ取得要件の比較:自施設に合った選択肢を選ぶ

    選択肢対象導入期間コスト難易度
    ケアプランデータ連携訪問・通所系数週間〜年間約21,000円
    生産性向上推進体制加算施設系数ヶ月ICT導入コスト
    社会福祉連携推進法人全サービス数ヶ月〜参加費用(法人による)中〜高

    自施設のサービス種別・規模・既存の取り組み状況に応じて、最適な選択肢を選んでほしい。

    施設長の今すぐ確認リスト

    • 自施設が社会福祉法人等、参加資格のある法人形態かを確認した
    • 厚生労働省HPで地域の社会福祉連携推進法人一覧を確認した
    • 都道府県の担当窓口に問い合わせた(または予定を決めた)
    • 参加可能な法人がある場合、相談のアポイントを取った
    • 参加手続きのスケジュールを処遇改善加算Ⅰロの届出と合わせて計画した
    • 地域に参加できる法人がない場合、他の取得要件(ア・イ)を検討した

    編集長・深瀬久博からひとこと

    社会福祉連携推進法人は、単なる「加算要件の一つ」ではない。人手不足・経営難・専門人材の確保――介護業界が共通して抱える課題を、「一法人で解決しようとする」発想の限界を超える仕組みだ。

    地域の仲間と連携し、共に強くなる。それが社会福祉連携推進法人の本質だ。

    加算取得のきっかけで参加し、気づいたら「一緒に採用・研修・購買ができる仲間」ができていた――そういう使い方が、最も価値ある参加の形だと思っている。

    まず地域に連携法人があるかを確認するところから始めてほしい。

    深瀬 久博 / 情熱介護 編集長 / 介護現場マネジメント講師