処遇改善加算の実績報告書
【2026年度版】完全作成ガイド
――7月31日期限・様式3-1の書き方・返還リスクを防ぐ記録の残し方
処遇改善加算は「計画書を提出して加算を取得したら終わり」ではない。年度終了後に実績報告書を提出し、実際に賃金改善を行った結果を都道府県等に報告するところまでが、一連の流れだ。実績報告書の段階で、計画と実績の整合が取れていない・要件を満たしていないと判断されると、加算額の返還や処遇改善加算の取消につながるおそれがある。本記事では、2026年度の実績報告書作成に必要なすべてを解説する。

この記事でわかること
- 実績報告書とは何か・計画書との違い
- 2026年度の提出期限と対象期間
- 様式3-1・3-2の主な記載項目と書き方のポイント
- 賃金改善実績の正しい算出方法
- 返還請求につながる「よくある失敗」と防ぎ方
- 今から準備しておくべき記録・書類一覧
はじめに:「計画書を出して終わり」では大きなリスクがある
処遇改善加算は「計画書を提出して加算を取得したら終わり」ではない。
年度終了後に実績報告書を提出し、実際に賃金改善を行った結果を都道府県等に報告するところまでが、一連の流れだ。
実績報告書の段階で、計画と実績の整合が取れていない・要件を満たしていないと判断されると、加算額の返還や処遇改善加算の取消につながるおそれがある。
つまり実績報告書は「形式的な書類提出」ではなく、加算を適正に受け取ったことを証明する重要な書類だ。
2026年6月改定で加算の仕組みが大きく変わった今年度は、例年以上に正確な記録と報告が求められる。
今から準備を始めておくことが、来年7月の提出をスムーズにし、返還リスクを防ぐ最善策だ。
実績報告書と計画書の違い
まず基本を整理しておく。
| 書類 | 提出時期 | 内容 |
|---|---|---|
| 処遇改善計画書 | 年度開始前(4〜6月) | 今年度どのように賃金改善を行うかの計画 |
| 処遇改善実績報告書 | 年度終了後(翌年7月末) | 実際に行った賃金改善の実績の報告 |
計画書は「これからやること」、実績報告書は「実際にやったこと」の報告だ。
計画書と実績報告書の内容が大きくずれていると、加算の返還を求められるリスクがある。
提出期限と対象期間
2026年度の実績報告書
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象期間 | 2026年4月〜2027年3月 |
| 提出期限 | 2027年7月31日 |
| 提出先 | 都道府県(または市区町村) |
実績報告書の提出期限は、各事業年度における最終の加算の支払いがあった翌々月の月末までとされている。
2026年度分の最終支払いは2027年3月分(支払いは5月頃)となるため、翌々月末の2027年7月31日が期限だ。
注意点:6月改定により対象期間が変わる
2026年度は6月から新加算体系に移行したため、以下のように対象期間が分かれる可能性がある。
・2026年4〜5月分:旧加算体系(加算Ⅰ〜Ⅴ)
・2026年6月〜2027年3月分:新加算体系(加算Ⅰイ・Ⅰロ・Ⅱイ・Ⅱロ・Ⅲ・Ⅳ)
都道府県から届く様式・通知を必ず確認し、どのような形式での報告が求められるかを把握してほしい。
実績報告書の様式構成
実績報告書の様式は、別紙様式3-1(総括表)と別紙様式3-2(個票)に分かれている。
様式3-1(総括表)の主な記載項目
| 記載項目 | 内容 |
|---|---|
| 基本情報 | 法人名・事業所名・所在地・担当者情報 |
| 加算取得区分 | 取得した加算の区分(Ⅰイ・Ⅰロ等) |
| 加算収入額 | 年間の処遇改善加算による収入総額 |
| 賃金改善実施額 | 職員に支給した賃金改善の総額 |
| 賃金改善方法 | 基本給・手当・賞与等の内訳 |
| 配分ルール | 職種別・経験別の配分方針 |
| キャリアパス要件等の実施状況 | 研修・昇給制度等の実施実績 |
| 令和8年度特例要件の実績 | ケアプランデータ連携・生産性向上加算等の利用実績 |
様式3-2(個票)の主な記載項目
職員ごとに以下を記載する。
・職員名(または番号)・雇用形態
・職種・経験年数
・処遇改善加算による賃金改善額(月別)
・改善方法(基本給増額・手当・賞与等の別)
賃金改善実績の算出方法
基本的な考え方
処遇改善加算による賃金改善の所要額については、具体的な算出方法は問わないとされている。ただし、各職員に対し処遇改善加算を原資として行った賃金改善額を積み上げるなどの適切な方法により算出することとされている。
つまり「この職員にいくら配分したか」を積み上げる形で算出する。
算出の手順
STEP 1:月別の処遇改善加算収入を確認する
国保連からの支払い明細で、月別の加算収入額を確認する。
STEP 2:職員別の賃金改善額を集計する
給与台帳・賃金改善台帳から、職員ごとの処遇改善加算分の賃金改善額を月別に集計する。
STEP 3:合計額を照合する
加算収入の合計額と、職員への賃金改善額の合計を照合する。
加算収入 ≦ 賃金改善実施額 となっていれば適正だ。
STEP 4:不足・超過がある場合の対処
賃金改善実施額が加算収入を下回る場合は「配分不足」として問題になる。
翌年度の処遇改善計画書・実績報告書の作成前に、経理担当・社労士と相談してほしい。
返還リスクを防ぐよくある失敗と防ぎ方
失敗①:配分記録を残していなかった
「職員に処遇改善加算を配分した」という証拠がなければ、実績報告書に記載できない。
防ぎ方:毎月の給与明細に「処遇改善手当」等の名目で明記し、その記録を保存する。
失敗②:令和8年度特例要件の利用実績を記録していなかった
ケアプランデータ連携システムを利用していても、その記録(送受信ログ等)を保存していなければ実績として証明できない。
防ぎ方:毎月の送受信件数・日時のスクリーンショットを保存しておく。
失敗③:配分ルールが計画書と実績でずれた
計画書に「ベテランを厚遇する重点配分」と書いたのに、実際は均等配分していた——このずれが問題になる。
防ぎ方:計画書の配分ルールを現場の実態に合わせ、年度中に変更する場合は都道府県に届け出る。
失敗④:職場環境等要件の取り組み実績を記録していなかった
「取り組みを実施した」と計画書に書いたが、その証拠(研修の出席簿・議事録等)がない。
防ぎ方:研修・委員会・面談等の実施記録を都度作成・保存する習慣をつける。
失敗⑤:提出期限を過ぎた
実績報告書を提出期限ギリギリで作成しようとすると、必要書類がそろわず提出ができないことになりかねない。そうなると、処遇改善加算が算定できなくなる。
防ぎ方:今から月次で記録を整理し、年度末に慌てないよう準備しておく。
今から準備しておくべき記録・書類一覧
実績報告書をスムーズに作成するために、今から毎月保存しておくべき書類はこれだ。
- 国保連の加算支払い明細(月別)
- 職員ごとの賃金改善額の台帳(月別)
- 給与明細の控え(処遇改善手当等の記載確認)
- 賞与での配分がある場合は賞与明細の控え
- 研修の実施記録・出席簿
- 委員会議事録(生産性向上推進委員会等)
- ケアプランデータ連携システムの利用実績(スクリーンショット等)
- 職場環境等要件の取り組み実施記録
施設長の今すぐ確認リスト
- 2026年度の処遇改善計画書の内容を再確認した
- 配分ルールが現場の実態と一致しているか確認した
- 職員への賃金改善額の月次記録を開始した
- 令和8年度特例要件の利用実績の記録を開始した
- 職場環境等要件の取り組み実施記録を保存している
- 都道府県から実績報告書の様式・通知が届いているか確認した
- 社労士・経理担当と年度末に向けたスケジュールを共有した
実績報告書は加算を適正に受け取ったことを証明する、最も重要な書類だ。
編集長・深瀬久博からひとこと
処遇改善加算は「取る」のが目的ではなく、「職員の賃金を上げる」ことが目的だ。
実績報告書はその証明書だ。
ところが毎年、「記録を残していなかった」「計画と実績がずれていた」という理由で、返還を求められる施設が出る。
防ぐ方法はシンプルだ。今から月次で記録を残し続けること——それだけだ。
来年7月の実績報告書提出が「余裕を持って完了できた」という状態を、今から作り始めてほしい。