【8月1日まで残り10日】
補足給付・食費値上げの
利用者説明マニュアル
――怒らせない・不安にさせない・納得してもらう施設長の伝え方と説明資料のひな型
2026年8月1日、食費の基準費用額が1日100円引き上げられる。多くの施設では、重要事項説明書の改訂文書と変更通知を利用者・家族に送付する形で対応している。しかしこれだけでは不十分だ。家族が受け取るのは「費用が上がる」という事実だ。その背景や理由を丁寧に伝えなければ、「施設側の都合で値上げされた」という誤解を生む。今回の記事では、8月1日の食費改定と補足給付の見直しを、利用者・家族にどう伝えるかの「伝え方」に特化して解説する。

この記事でわかること
- 利用者・家族が「値上げ」と聞いたときに何を感じるか
- 怒りや不安を生む「NG説明」と「OK説明」の違い
- 補足給付第3段階②の対象者への個別説明で押さえるべきポイント
- 「なぜ今さら」「うちだけ高くなるのか」への具体的な答え方
- 今週使える説明資料のひな型(文章例付き)
- 説明後のフォローで苦情を防ぐ3つのポイント
はじめに:制度改定の説明は「通知」ではなく「対話」だ
2026年8月1日、食費の基準費用額が1日100円引き上げられる。
多くの施設では、重要事項説明書の改訂文書と変更通知を利用者・家族に送付する形で対応している。しかしこれだけでは不十分だ。
家族が受け取るのは「費用が上がる」という事実だ。その背景や理由を丁寧に伝えなければ、「施設側の都合で値上げされた」という誤解を生む。
施設への信頼は、こういう場面での対応で作られる。あるいは壊される。
今回の記事では、8月1日の食費改定と補足給付の見直しを、利用者・家族にどう伝えるかの「伝え方」に特化して解説する。
まず「相手が何を感じるか」を理解する
家族が最初に感じること
「値上げ」という言葉を聞いた瞬間、家族の頭の中では複数の感情が交差する。
- 不安:「これからいくらかかるようになるの?」
- 疑念:「施設が便乗値上げしているんじゃないか?」
- 怒り:「なぜ急に言ってくるの?」
- 罪悪感:「親の介護にこれ以上お金をかけられない」
この感情の動きを理解した上で説明することが、苦情を防ぐ最大のポイントだ。
認知症の利用者本人への対応
認知症の方への説明は、家族とは別に考える必要がある。
「お金が上がる」という情報は、認知症の方にとって混乱の原因になりやすい。本人への直接説明は家族の意向を確認した上で行い、必要以上に繰り返さないことが原則だ。家族への説明を丁寧に行うことで、本人への配慮も伝わる。
NG説明とOK説明の違い
NG説明①:「国の制度改定なので」で終わる
「8月から食費が100円上がります。国の制度改定によるものです」
これだけでは家族は納得しない。「国のせいにしているだけ」という印象を与える。
NG説明②:金額だけを伝える
「1日100円、月に3,000円上がります」
数字だけを伝えると、家族はその金額の大小を自分の感覚だけで判断する。「高い」と感じさせないための文脈が必要だ。
NG説明③:書面を送るだけで終わらせる
重要事項説明書の変更通知を郵送または手渡しして、サインをもらうだけの対応。
家族が疑問を持っても質問できない。後から「聞いていない」「説明が不十分だった」という苦情につながりやすい。
よくある質問と具体的な答え方
Q1:「なぜ今さら教えてくれるの?」
答え方:「国の制度改定の詳細が正式に確定したのが〇月でした。確定次第、できるだけ早くお知らせするよう準備を進めてまいりました。ご連絡が〇月になってしまい、ご不便をおかけして申し訳ございません。」
ポイント:謝罪は最小限に。「できる限り早く連絡した」という誠意を伝える。
Q2:「うちの施設だけ高くなるの?」
答え方:「今回は全国すべての介護施設が対象となる制度改定です。特養・老健・ショートステイなど、介護保険施設であれば施設の種類を問わず、同じ基準で変更されます。」
ポイント:「全国一律」という事実を明確に伝える。施設の独自判断ではないことを強調する。
Q3:「補足給付があるから今まで安かったのに、それも上がるの?」
答え方:「補足給付制度は今後も継続されます。ただし今回の改定で、一部の所得区分(第3段階②)の方については負担限度額が見直されます。お父様・お母様の所得区分が第3段階②に該当するかどうか、改めてご確認いたします。」
ポイント:一般論ではなく、その利用者・家族の具体的な状況に引き寄せて話す。
Q4:「これ以上費用が増えると、施設を出なければならないかも」
答え方:「ご不安なお気持ちはよく理解できます。まず実際の変更額を具体的に試算してお見せします。その上で、もし費用面でご相談があれば、担当のケアマネジャーや市区町村の窓口と一緒に考えることができます。今すぐ施設を離れなければならない状況ではありませんので、まずは一緒に確認しましょう。」
ポイント:不安を否定しない。具体的な次のステップを一緒に示す。
補足給付第3段階②の対象者への個別説明
対象者を事前に特定する
第3段階②(年金収入等120万円超)に該当する利用者への説明は、個別対応が必要だ。
一般的な「食費が上がります」という説明とは別に、「あなたの負担限度額が変わります」という個別の情報を伝えなければならない。
個別説明のポイント
①変更前・変更後の金額を具体的に示す
「現在の負担限度額は〇〇円です。8月1日以降は〇〇円に変更になります。月額では〇〇円の変更です。」
曖昧な伝え方は不安を増大させる。数字を具体的に示すことが誠実な対応だ。
②変更の理由を簡潔に説明する
「第3段階②の方については、在宅で生活されている方との公平性を図るため、今回見直しが行われました。」
③「何かあれば相談できる」という安心感を伝える
「費用面でご不安なことがあれば、いつでもご相談ください。担当者から改めてご連絡することも可能です。」
今週使える説明資料のひな型
以下を参考に、自施設の情報を入れた説明資料を作成してほしい。
【文章例】利用者・家族向けのお知らせ文
件名:食費の基準費用額改定に関するご案内
平素よりご利用いただきありがとうございます。 国の介護保険制度の改定により、2026年8月1日より食費の基準費用額が変更となります。 変更内容: - 変更前:1日1,445円 - 変更後:1日1,545円(1日あたり100円の増額) - 月額の変更目安:約3,000円 今回の変更は、物価上昇に対応するための国の制度改定によるものであり、全国の介護施設が対象となります。 ご不明な点がございましたら、担当者までお気軽にお申し付けください。 令和8年〇月〇日 施設名・担当者名
説明後のフォローで苦情を防ぐ3つのポイント
①説明した記録を残す
誰に・いつ・どのように説明したかを記録しておく。後から「聞いていない」という苦情が来た場合の根拠になる。
②「追加の質問はありますか?」と必ず確認する
説明を終えた後、「何かご不明な点はありませんか?」という一言を必ず添える。その場で疑問を解消する機会を作ることで、後からの苦情を防げる。
③家族間の情報共有を確認する
施設と直接連絡を取っているのが一人の家族でも、実際の費用を支払っているのが別の家族というケースがある。「ご家族の皆様にも共有いただけますか?」という一声が、家族内の認識のズレを防ぐ。
施設長の今週確認リスト
- □第3段階②に該当する利用者を特定し、個別説明の準備を始めた
- □説明資料(お知らせ文)を作成した
- □全利用者・家族への説明スケジュールを今週中に完了させる予定を立てた
- □説明した記録(日付・対応者・相手の反応)を残す仕組みを作った
- □苦情が来た場合の対応フローを確認した
- □重要事項説明書の改訂・覚書の取得状況を確認した
編集長・深瀬久博からひとこと
制度改定の説明で失敗する施設と成功する施設の差は、「何を言うか」ではなく「どう伝えるか」にある。
家族は費用が上がることを喜ばない。しかし「この施設はきちんと説明してくれた」「担当者が丁寧に対応してくれた」という体験が、施設への信頼に変わる。
値上げの説明を、施設の誠実さを示す機会として使ってほしい。
残り10日。今週中に全ての説明を終わらせることが、8月1日以降の現場の安定につながる。
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