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    制度・経営対応 2026.07.21 約10分で読了

    【8月1日まで残り10日】
    補足給付・食費値上げの
    利用者説明マニュアル
    ――怒らせない・不安にさせない・納得してもらう施設長の伝え方と説明資料のひな型

    2026年8月1日、食費の基準費用額が1日100円引き上げられる。多くの施設では、重要事項説明書の改訂文書と変更通知を利用者・家族に送付する形で対応している。しかしこれだけでは不十分だ。家族が受け取るのは「費用が上がる」という事実だ。その背景や理由を丁寧に伝えなければ、「施設側の都合で値上げされた」という誤解を生む。今回の記事では、8月1日の食費改定と補足給付の見直しを、利用者・家族にどう伝えるかの「伝え方」に特化して解説する。

    明るいオフィスで、クリップボードを持った施設スタッフが家族に丁寧に説明しているシーン
    深瀬久博
    執筆
    深瀬 久博 / 情熱介護 編集長
    介護福祉士・社会福祉士・認知症ケア専門士・産業ケアマネ(3級)・ストレスチェック実施者
    編集長より制度改定の説明は「通知」ではなく「対話」だ。家族の不安や怒りを受け止め、納得してもらうための説明資料と対応の型を今週中に整えてほしい。

    この記事でわかること

    • 利用者・家族が「値上げ」と聞いたときに何を感じるか
    • 怒りや不安を生む「NG説明」と「OK説明」の違い
    • 補足給付第3段階②の対象者への個別説明で押さえるべきポイント
    • 「なぜ今さら」「うちだけ高くなるのか」への具体的な答え方
    • 今週使える説明資料のひな型(文章例付き)
    • 説明後のフォローで苦情を防ぐ3つのポイント

    はじめに:制度改定の説明は「通知」ではなく「対話」だ

    2026年8月1日、食費の基準費用額が1日100円引き上げられる。

    多くの施設では、重要事項説明書の改訂文書と変更通知を利用者・家族に送付する形で対応している。しかしこれだけでは不十分だ。

    家族が受け取るのは「費用が上がる」という事実だ。その背景や理由を丁寧に伝えなければ、「施設側の都合で値上げされた」という誤解を生む。

    施設への信頼は、こういう場面での対応で作られる。あるいは壊される。

    今回の記事では、8月1日の食費改定と補足給付の見直しを、利用者・家族にどう伝えるかの「伝え方」に特化して解説する。

    まず「相手が何を感じるか」を理解する

    家族が最初に感じること

    「値上げ」という言葉を聞いた瞬間、家族の頭の中では複数の感情が交差する。

    • 不安:「これからいくらかかるようになるの?」
    • 疑念:「施設が便乗値上げしているんじゃないか?」
    • 怒り:「なぜ急に言ってくるの?」
    • 罪悪感:「親の介護にこれ以上お金をかけられない」

    この感情の動きを理解した上で説明することが、苦情を防ぐ最大のポイントだ。

    認知症の利用者本人への対応

    認知症の方への説明は、家族とは別に考える必要がある。

    「お金が上がる」という情報は、認知症の方にとって混乱の原因になりやすい。本人への直接説明は家族の意向を確認した上で行い、必要以上に繰り返さないことが原則だ。家族への説明を丁寧に行うことで、本人への配慮も伝わる。

    NG説明とOK説明の違い

    NG説明①:「国の制度改定なので」で終わる

    「8月から食費が100円上がります。国の制度改定によるものです」

    これだけでは家族は納得しない。「国のせいにしているだけ」という印象を与える。

    OK説明「今回の変更は2026年8月1日に施行される国の介護保険制度の改定によるものです。食材費や光熱費が大幅に上昇する中で、食事の質を維持するために国が基準費用額を見直しました。施設独自の判断ではなく、全国一律の制度変更です。」

    NG説明②:金額だけを伝える

    「1日100円、月に3,000円上がります」

    数字だけを伝えると、家族はその金額の大小を自分の感覚だけで判断する。「高い」と感じさせないための文脈が必要だ。

    OK説明「1日あたり100円、月額にすると約3,000円の変更になります。現在の食費1,445円は、物価が今よりずっと低かった時期に設定されたものです。食材費・光熱費・人件費が上昇する中で、食事の質を守るための国の判断です。」

    NG説明③:書面を送るだけで終わらせる

    重要事項説明書の変更通知を郵送または手渡しして、サインをもらうだけの対応。

    家族が疑問を持っても質問できない。後から「聞いていない」「説明が不十分だった」という苦情につながりやすい。

    OK説明書面の送付に加えて、「内容についてご不明な点はいつでもご連絡ください」という一言を必ず添える。可能であれば面談の機会を設け、その場で質問を受け付ける。

    よくある質問と具体的な答え方

    Q1:「なぜ今さら教えてくれるの?」

    答え方:「国の制度改定の詳細が正式に確定したのが〇月でした。確定次第、できるだけ早くお知らせするよう準備を進めてまいりました。ご連絡が〇月になってしまい、ご不便をおかけして申し訳ございません。」

    ポイント:謝罪は最小限に。「できる限り早く連絡した」という誠意を伝える。

    Q2:「うちの施設だけ高くなるの?」

    答え方:「今回は全国すべての介護施設が対象となる制度改定です。特養・老健・ショートステイなど、介護保険施設であれば施設の種類を問わず、同じ基準で変更されます。」

    ポイント:「全国一律」という事実を明確に伝える。施設の独自判断ではないことを強調する。

    Q3:「補足給付があるから今まで安かったのに、それも上がるの?」

    答え方:「補足給付制度は今後も継続されます。ただし今回の改定で、一部の所得区分(第3段階②)の方については負担限度額が見直されます。お父様・お母様の所得区分が第3段階②に該当するかどうか、改めてご確認いたします。」

    ポイント:一般論ではなく、その利用者・家族の具体的な状況に引き寄せて話す。

    Q4:「これ以上費用が増えると、施設を出なければならないかも」

    答え方:「ご不安なお気持ちはよく理解できます。まず実際の変更額を具体的に試算してお見せします。その上で、もし費用面でご相談があれば、担当のケアマネジャーや市区町村の窓口と一緒に考えることができます。今すぐ施設を離れなければならない状況ではありませんので、まずは一緒に確認しましょう。」

    ポイント:不安を否定しない。具体的な次のステップを一緒に示す。

    補足給付第3段階②の対象者への個別説明

    対象者を事前に特定する

    第3段階②(年金収入等120万円超)に該当する利用者への説明は、個別対応が必要だ。

    一般的な「食費が上がります」という説明とは別に、「あなたの負担限度額が変わります」という個別の情報を伝えなければならない。

    個別説明のポイント

    ①変更前・変更後の金額を具体的に示す

    「現在の負担限度額は〇〇円です。8月1日以降は〇〇円に変更になります。月額では〇〇円の変更です。」

    曖昧な伝え方は不安を増大させる。数字を具体的に示すことが誠実な対応だ。

    ②変更の理由を簡潔に説明する

    「第3段階②の方については、在宅で生活されている方との公平性を図るため、今回見直しが行われました。」

    ③「何かあれば相談できる」という安心感を伝える

    「費用面でご不安なことがあれば、いつでもご相談ください。担当者から改めてご連絡することも可能です。」

    今週使える説明資料のひな型

    以下を参考に、自施設の情報を入れた説明資料を作成してほしい。

    【文章例】利用者・家族向けのお知らせ文

    件名:食費の基準費用額改定に関するご案内

    平素よりご利用いただきありがとうございます。 国の介護保険制度の改定により、2026年8月1日より食費の基準費用額が変更となります。 変更内容: - 変更前:1日1,445円 - 変更後:1日1,545円(1日あたり100円の増額) - 月額の変更目安:約3,000円 今回の変更は、物価上昇に対応するための国の制度改定によるものであり、全国の介護施設が対象となります。 ご不明な点がございましたら、担当者までお気軽にお申し付けください。 令和8年〇月〇日 施設名・担当者名

    説明後のフォローで苦情を防ぐ3つのポイント

    ①説明した記録を残す

    誰に・いつ・どのように説明したかを記録しておく。後から「聞いていない」という苦情が来た場合の根拠になる。

    ②「追加の質問はありますか?」と必ず確認する

    説明を終えた後、「何かご不明な点はありませんか?」という一言を必ず添える。その場で疑問を解消する機会を作ることで、後からの苦情を防げる。

    ③家族間の情報共有を確認する

    施設と直接連絡を取っているのが一人の家族でも、実際の費用を支払っているのが別の家族というケースがある。「ご家族の皆様にも共有いただけますか?」という一声が、家族内の認識のズレを防ぐ。

    施設長の今週確認リスト

    • 第3段階②に該当する利用者を特定し、個別説明の準備を始めた
    • 説明資料(お知らせ文)を作成した
    • 全利用者・家族への説明スケジュールを今週中に完了させる予定を立てた
    • 説明した記録(日付・対応者・相手の反応)を残す仕組みを作った
    • 苦情が来た場合の対応フローを確認した
    • 重要事項説明書の改訂・覚書の取得状況を確認した

    編集長・深瀬久博からひとこと

    制度改定の説明で失敗する施設と成功する施設の差は、「何を言うか」ではなく「どう伝えるか」にある。

    家族は費用が上がることを喜ばない。しかし「この施設はきちんと説明してくれた」「担当者が丁寧に対応してくれた」という体験が、施設への信頼に変わる。

    値上げの説明を、施設の誠実さを示す機会として使ってほしい。

    残り10日。今週中に全ての説明を終わらせることが、8月1日以降の現場の安定につながる。

    深瀬久博
    深瀬 久博
    情熱介護 編集長 / 介護現場マネジメント講師

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