記事一覧へ戻る
    制度・報酬改定 2026.10.12 約9分で読了

    グループホームのケアマネ配置、緩和案が示された
    対象は1ユニットの事業所、3ユニットの夜勤2人体制も拡大へ

    グループホームの居間で、職員が窓際の椅子に座り記録をつけている様子
    深瀬久博
    執筆・監修
    深瀬 久博 / 情熱介護 編集長
    精神保健福祉士・社会福祉士・介護支援専門員・介護福祉士・認知症ケア専門士・産業ケアマネ(3級)・ストレスチェック実施者

    計画作成担当者が辞めてしまった。募集をかけても、ケアマネジャーの応募が来ない。管理者が兼務でしのいでいるが、いつまで続けられるか分からない——。

    認知症グループホームを運営する法人から、こうした声が上がっています。

    2026年10月9日の社会保障審議会・介護給付費分科会で、厚生労働省が計画作成担当者(ケアマネジャー)の配置要件を見直す案を示しました。あわせて、3ユニットの事業所の夜勤を2人体制にできる範囲を広げる案も出ています。

    いずれも「対応案」として示された段階で、決定ではありません。この記事では、資料の中身と、グループホームを運営する施設長が今から確認しておきたいことを整理します。

    示された2つの対応案

    厚生労働省が資料で示した対応案は、次の2つです。

    項目対応案の内容
    計画作成担当者の配置人材の確保が困難であり、かつ経営状況が厳しい1ユニットの事業所において、ケアの質の確保を前提としつつ、配置要件の見直しを検討してはどうか
    3ユニットの夜勤体制見守り機器等を活用した継続的な状態把握と迅速な対応ができる体制を要件として、2ユニットが同一階で隣接し、別の階の1ユニットと一体的に運営されている場合や、同一階に隣接していない3ユニットの場合も、夜勤を2人体制にできるようにしてはどうか

    どちらも「どのように考えるか」「検討してはどうか」という問いかけの形です。具体的に何をどう緩めるかは、まだ示されていません。

    計画作成担当者の配置は、これまでも緩和されてきた

    まず、現在の基準を確認します。

    グループホームの計画作成担当者は、事業所ごとに1人以上の配置が必要です。2人以上配置する場合は、そのうち1人が介護支援専門員(ケアマネジャー)の資格を持っていれば足りますが、全員が認知症介護実践者研修を修了している必要があります。

    この基準は、2021年度の改定で緩和されたものです。それ以前は「ユニットごとに1人以上」でした。あわせて、サテライト型の事業所を設置する場合には、ケアマネジャーではなく認知症介護実践者研修の修了者を計画作成担当者として配置できる仕組みも設けられました。

    つまり、今回の案は3回目の緩和にあたります。

    今回の対象は「1ユニットの事業所」に絞られています

    ここが重要な点です。対応案では、対象を「人材の確保が困難であり、かつ経営状況が厳しい1ユニットの事業所」としています。

    グループホームのユニット数の内訳を見ると、2ユニットが63.3%で最も多く、1ユニットは28.3%、3ユニットは5.8%です(2026年度の調査、120事業所)。

    つまり、この案がそのまま実現しても、対象になるのは全体の3割弱ということになります。2ユニット以上の事業所にとっては、今回の緩和案は直接の対象外です。

    人材が足りないのは、むしろ地方です

    資料には、計画作成担当者の充足状況の調査結果も載っています。

    地域充足しているやや不足とても不足
    都市部(n=10)80.0%20.0%0.0%
    一般市町村(n=16)81.3%18.8%0.0%
    中山間地域等(n=55)65.5%25.5%7.3%

    中山間地域では「充足している」が65.5%にとどまり、他の地域より不足感が強くなっています。今回の案が中山間地域を念頭に置いていると報じられているのは、このデータが背景にあります。

    ただし、調査の対象数は少ない(全体で81事業所)点には注意が必要です。

    3ユニットの夜勤2人体制は、ほとんど使われていない

    もう1つの案が、3ユニットの事業所の夜勤体制です。

    グループホームの夜勤は、原則としてユニットごとに1人です。3ユニットなら3人になります。一定の要件を満たす場合には2人にできる仕組みがすでにありますが、この仕組みを使っている事業所はほとんどありません。

    算定状況を見ると、「3ユニット夜勤職員2人以上の場合」の減算(1日あたり50単位の減算)が適用されているのは、全体の0.2%(件数ベース)です。

    使われていない理由として、建物の構造が挙げられます。3ユニットの事業所119か所のうち、「同一階にはない」が77.3%を占めます。現在の仕組みは、3ユニットが同一階に隣接していることが前提なので、多くの事業所は構造上使えません。

    今回の案は、この構造の条件を緩めるものです。見守り機器等の活用を要件としたうえで、同一階に隣接していない場合でも2人体制を認める方向が示されています。

    夜勤の現場が抱える課題

    資料には、夜勤に関する現場の課題も載っています(複数回答、1,239事業所)。

    課題割合
    夜勤のシフト調整に苦慮している(夜勤をできる職員が限られている)57.5%
    夜勤のシフト調整に苦慮している(職員の人数に余裕がない)49.6%
    夜勤職員の確保ができない(応募がない)37.8%
    夜勤のシフトが調整できず、管理者がその穴埋めをすることが度々ある35.7%
    夜勤職員確保のために、人材紹介会社・人材派遣会社に多額の費用を支払っている18.1%

    管理者がシフトの穴埋めをしている事業所が3分の1以上あります。ユニット数が多いほど、シフト調整に苦慮する割合は高くなっています。

    見守り機器を入れている事業所は、まだ少数です

    夜勤2人体制の要件には、見守り機器等の活用が含まれる見込みです。ただ、現状は追いついていません。

    グループホームで生産性向上推進体制加算を算定している事業所は、(Ⅰ)が3.6%、(Ⅱ)が22.7%で、7割以上がどちらも算定していません。

    一方、算定した事業所に効果を聞くと、「業務の効率化につながった」が73.5%、「残業時間の減少や有給休暇取得の促進につながった」が40.6%、「職員の身体的・心理的負担の軽減につながった」が29.8%でした。

    夜勤体制の緩和を使いたい場合、機器の導入とデータの蓄積が前提になります。要件が決まってから動き出すのでは間に合いません。

    もう1つの論点:地域の拠点としての機能

    今回の資料には、もう1つ論点があります。グループホームが地域の拠点としての役割を果たすことを評価するという方向です。

    認知症基本法の理念を踏まえ、本人の能力や強みを生かしたボランティア参加の支援、若年性認知症の人への就労支援、入居者の本人発信や社会参加活動の推進などに取り組む事業所を評価してはどうか、という対応案が示されました。

    調査では、地域連携・地域支援の取組を3つ以上行っている事業所で、「入居者の活動・参加の機会が増えた」が49.9%(2つ以下は23.0%)、「入居者が地域住民の一員として生活しやすくなった」が30.5%(2つ以下は10.1%)と、差が出ています。

    新しい加算になるのか、基本報酬に組み込まれるのかは、まだ分かりません。

    施設長が今から確認しておきたい3つのこと

    1. 自施設が「対象になるか」を見極める

    計画作成担当者の配置緩和は、1ユニットの事業所に絞られた案です。2ユニット以上の場合、この案が実現しても状況は変わりません。

    一方、3ユニットの夜勤2人体制の緩和は、建物の構造次第で使える可能性があります。自施設のユニットがどう配置されているか(同一階か、階をまたいでいるか、隣接しているか)を確認しておきましょう。

    2. 見守り機器の導入を、要件が決まる前に検討する

    夜勤体制の緩和には、見守り機器等の活用が要件になる見込みです。導入には費用がかかり、運用が安定するまでにも時間がかかります。

    介護テクノロジーの導入には補助金があります。要件が固まってから動くと、補助金の申請時期を逃す可能性もあります。

    3. 緩和を「人を減らす」ためだけに使わない

    夜勤を3人から2人にすれば、人件費は下がります。ただ、残った2人の負担は確実に増えます。

    資料にある調査でも、夜勤をできる職員が限られていることが最大の課題として挙がっています。その限られた職員が「ますますきつくなった」と感じて辞めてしまえば、緩和を使う前より状況は悪化します。

    「配置を緩める」ことと「現場が回る」ことは別の話です

    今回の2つの案は、どちらも人材確保の難しさを前提にしたものです。国も「ケアの質の確保を前提としつつ」「利用者の安全確保を前提としたうえで」と、繰り返し断っています。

    基準が緩和されても、それは「少ない人数で回してよい」という許可にすぎません。実際に回るかどうかは、別の問題です。

    グループホームは、1ユニット9人以下の小さな単位で、顔の見える関係の中でケアを行う場所です。その良さは、職員が入居者一人ひとりを知っていることで成り立っています。配置を緩めた結果、職員が入れ替わり続ける職場になってしまえば、その良さそのものが失われます。

    緩和を使うかどうかを考えるときは、「何人減らせるか」ではなく「今いる職員が働き続けられるか」を基準にする。採用で穴を埋め続けるより、そのほうが確実だと考えます。

    今後、分科会で具体的な方向性が示されたら、情熱介護でも改めてお伝えします。

    この記事の出典

    ※資料4には、令和7年度・令和8年度の老人保健健康増進等事業の調査結果、介護給付費等実態統計、介護保険総合データベースの集計等が掲載されています。

    ※本記事は2026年10月時点の審議会資料をもとにしています。資料に示された内容は対応案であり、今後の議論により変わる可能性があります。実際の運用にあたっては、指定権者(市町村・都道府県)にご確認ください。

    関連記事

    【無料】制度改正の要点と、現場で使える対応策を、月2回お届けします。

    売り込みのメールは送りません。施設運営に役立つ情報だけをお届けします。

    メールで受け取る
    深瀬久博
    この記事を書いた人
    深瀬 久博(情熱介護 編集長)
    重度認知症デイケアでの臨床経験を経て、大手有料老人ホーム・サービス付き高齢者向け住宅の管理者を歴任。現在は介護現場の管理職・経営層に向けた研修講師として全国に登壇。
    精神保健福祉士・社会福祉士・介護支援専門員・介護福祉士・認知症ケア専門士・産業ケアマネ(3級)・ストレスチェック実施者

    編集長より

    配置基準が緩くなると聞くと、楽になると感じる方もいれば、不安になる方もいると思います。どちらの受け止め方も、現場を知っているからこそのものだと思います。

    ただ、今回の案で目を引いたのは、緩和の中身よりも、その前提として並んでいたデータのほうでした。夜勤のシフトが組めず、管理者が穴を埋めている事業所が3分の1以上ある。この状態は、基準を緩めても変わりません。

    グループホームの良さは、小さな単位で、職員が入居者一人ひとりを知っていることにあります。その関係は、同じ職員が働き続けることでしか育ちません。

    制度の議論を追いながら、同時に「うちの職員は、来年もここにいるだろうか」と考えてみてください。そちらのほうが、たぶん切実な問いです。